国語施策・日本語教育

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次第 審議会の運営について

前田会長

 最初に,前回(第60回)総会の議事要旨を確認いただきたい。(金田国語課長,前回の議事要旨を朗読,確認。)

中田委員

 わたしは,今期の文部大臣の諮問について,根本的に問題を掘り下げていくと,各委員の共通了解事項が必要になってくる。そしてこれを深く追求していけば,結果として新国語問題要領の作成といった方向をとらざるを得ないのではないかと思う。それに先の国語問題要領(昭和25年6月)は,占領下の作成であり,社会一般では,新しい国語白書の作成を望んでいるのではないかということで,この提案をするものである。
〔中田委員から提案「新国語問題要領(国語白書)の作成について」が配布され,朗読。〕

木内委員

 昭和25年の「国語問題要領」というのを簡単に説明してほしい。

金田課長

 一口に言うと,国語審議会が国語問題を検討する際の審議の方向づけを定めたものである。それに関連して,国語審議会の性格や任務,国語の現状の分析や,その歴史的展望を取りまとめたものである。(なお,参考のために,「国語問題要領」の「第5国語問題審議の基準」を朗読。)

中田委員

 わたしがこれを提案するのは,いま一部を朗読された,「国語問題要領」に,わが国で広く使われている文字として,漢字とひらがな,かたかな,ローマ字の四つが対等に論じられているが,これは,なにか不自然のような気がする。新しい白書ではこの点を反省し,かつ,当用漢字表や同音訓表,送りがななどに対する考え方なども加え,将来,どう進んでいかなければならないかということを盛り込んでいく,そうすれば,これが教育の指導要領にもなるし,われわれの共通理解事項にもなる。あわせて諮問に対する答申にもなるだろうと思うからである。

大野委員

 教育課程審議会では,成案をいちおうまとめる段階にきていると聞いている。ところで,文字というものは,印刷と教育の2点から考えるのが,国語国字問題にとって重要であると思うが,そのうち,この教育という面から考えると,教育課程審議会との関連が問題になってくる。ところが,この教育課程委員会では,当用漢字別表とか,学年配当といった問題を審議しようとすると,それは国語審議会の問題で,教育課程審議会では,ふれてはならないものとされているらしい。こんど教育課程審議会で改定されたものが,今後,何年間か使われることになろうが,この際,せっかくわれわれが,こうして問題があるとして,諮問のされているものを審議していくのであるから,なんとか教育課程審議会のものと結びつけて考えていけるように,その処置を講じる必要があるのではないか。中田委員がそういうことと関連して文部大臣の諮問に応じ,白書で述べようとされるなら,それが教育課程審議会にも反映するようにしてほしい。

木内委員

 わたしは前回,いくつかの部会を並行して設けるよりも,漢字の問題を優先して審議したいという大野委員の提案に,根本問題と合わせて論じるなら,それに賛成であると言った。しかしいま考えると,諮問の趣旨にもみられたように,社会,教育上に再検討すべき大きな問題があって,また,その責任の所在も明らかにされていないということである。そこで,こういう問題を解明するための小委員会をまず設けて,簡略な報告書を作ってみてはどうか。その結果,問題のあるものについて,部会を設けるようにしていってはどうかと思う。

渡辺委員

 大野委員のいわれるように,わたしはこの国語審議会の審議を,将来は教育課程審議会のそういう面にも反映させていくべきであると思うが,現在の時点では,むりにそうする必要はなく,しいて結びつけようとするのは時間的にも制約を受け,審議に慎重性を欠くきらいがあると思う。

志田委員

 現在の教育課程が改定になっても,今後,国語審議会で新しいことを決め,それを政府が取り上げるとなると,当然,学校教育にも織り込まれていくことになるから,ここで問題にする必要はない。それよりも現在の当用漢字別表では,読み書きともにできると決めてあるものの,全体の当用漢字表がどうなるのか,はっきりしないので,この先,当用漢字表が範囲,基準のどちらになるにしろ,現段階で,その関係を明確にしておいてほしい。

西原委員

 いずれ新しく国語白書といったものを作成する必要があろうが,その時期が問題である。白書を先に作って,審議がそれに束縛されることもよくないし,矛盾が出てきてもいけない。次に教育課程審議会との関連であるが,昭和33年に,現在の教育課程が定められて以来,国語審議会では,せいぜい調査報告程度のものしか出しておらず,根本的改善を要するものはなかったので,教育課程に影響を及ぼすこともなかった。ところが,今回は,諮問が出され,審議会の性格が変わったとみることもでき,大野委員のいわれるような心配が起こるわけである。今後,連絡をどうするかは大きな問題であるが,だから早急に国語審議会の審議を急げというわけにはいかない。幸い,この中に教育課程審議会の委員もおられることであるから,互いに参考にすることもできるし,さらに積極的に協力し合う方法を考えてやっていきたい。

中田委員

 諮問に対応する部会を三つぐらい設け,運営委員会も設ける。そして3部会の審議がそうとうに進んだ際に,わたしの希望する国語白書を根本的に考えつつ,手直しする方法でやっていきたい。そろそろ意見も出尽くしているので,運営について,なにか決議をしてほしい。

前田会長

 中田委員のいわれる問題は,要するに,根本的表現は別として,各委員ともすでに理解しておられると思う。それに「国語問題要領」の「5国語問題審議の基準」と今期の有田文部大臣のあいさつとは関連があるが,特に,大臣あいさつは木内委員の発言とも関連があるように思われる。この2点は,すでに各委員がもっている共通の土台であるように,わたしにはうかがえた。次に大野委員の指摘された教育課程審議会との関連については,渡辺,西原両委員から,否定するのではないけれども,大局的に今後の国語審議会はいかなる態度をとるべきかを申されたと思う。わたしも委員の一員としてこの問題に意見を述べると,前提となる中田,木内両委員の考えは先般の大臣あいさつとも関連があり,そのたてまえで審議を進めるなら,国語審議会は共通の理解のもとにやっていけると思える。それに関係機関との問題は情報の交換によって処理できるのではないかと思うし,諮問の最高責任機関は同一でもあるので事務当局が必要に応じて報告,連絡していくというのが実際に即したやり方であろう。前回から出席して感じたことであるが,ローマ字が国字であるかどうか,専門家に聞く必要もあるが,わが国の国語は,漢字とかなとで書き表わされているものとわたしは常識的に考えるわけで,それを前提に審議を進め,そして先ほど申したたてまえをふまえていくことが,いちばん常識的な進め方ではないかと思う。また。部会というものは最終決定をする機関ではない。部会は総会から付託された事項について審議し,その結果を総会の審議にゆだねる性質のものであってよいのではないか。同時に総会であるとか,複数の部会ができる場合には,それを調整していく機関があって,協議を合理的に,かつ,能率的に進めていくのがよいと,わたしは常識的に考えるわけである。もし,いま申したことをご理解願えるなら,この審議を軌道にのせるために,私案を刷り物にして用意してあるので配布してもよいか。(賛成)
(「国語審議会の今後の運営について」(案)を配布。)

細川委員

 もう少し,具体的なものかと思った。もうそろそろ部会をいくつつくるとかのはっきりした案を示してもらいたい。少しずつ出さないで,これこれの案があるとどんどん出してはどうか。なお部会委員が10名程度というのは少なすぎるのではないか。

安達審議官

 会長の御意向の趣旨に基づき,この案を提出した。部会は漢字部会とかな部会の2部会である。また,全員がどれかの部会に参加するというのではなく,総会から付託された問題点を整理していただくという意味で,その道の専門家にお願いしてはということから10名程度になっている。

前田会長

 わたしは,きわめて常識的な考え方から,まず部会は漢字とかなの2部会を設け,その後は必要に応じて,他の部会を設けていけばよいと考えている。特に異議がなければ承認していただいたものとみてよいか。(拍手)

渡辺委員

 けっきょく,中田提案はどうなったのか。昭和25年の「国語問題要領」を,だいたいそのままふまえていこうということになったのか。

前田会長

「国語問題要領」を,そのまま踏まえていこうという趣旨ではないが,中田委員のいわれる共通了解事項というのは,その「国語問題要領」の「5国語問題審議の基準」と,それに木内委員の議論とも関連を持つ有田文部大臣のあいさつに,そのことがいわれている。したがって各委員の相互理解は文章にはしないけれども,お互いにもっておられるというたてまえで審議を進めようということである。むろん,その文章を作る必要があれば,そのおりに委員会なりを設けて作成してもよい。

西原委員

 専門調査員の問題があるが,なにか考えておられるか。

安達審議官

 部会にはいってから,専門的事項を審議する課程で,その必要に応じ,お願いしていったほうが,具体的でよいのではないかと思っている。

細川委員

 部会には専門家だけということらしいが,専門家といえば,国語学者や漢学者だけではあるまい。法律家や小説家など,みんな専門家であり,すべて学識経験者である。

安達審議官

 総会で審議した線にそって問題をまとめ,技術的,専門的事項を審議するということから,その道の専門家のほかに,新聞や報道関係者に参加いただいたほうがよいのではないか。今期の部会は従来の部会と性質を異にしている。

前田会長

 総会が部会に必要な問題の掘り下げと研究をお願いするとしても,部会の結果を総会でそのまま受け入れる気持ちはない。あらためて総会で慎重に検討するようにしたい。

浦上委員

 総会で基本的事項を審議し,部会は専門的事項を審議するということであるが,このことばの意味がよくわからない。たとえば当用漢字表について漢字をふやすか,へらすかということが基本的事項ということなのか。

安達審議官

 基本的事項というのは当用漢字表ならその性格,取り扱い方などである。かりに字数をふやすなり,へらすなりするという考え方であれば,そういうことも総会で議論していただき,最終的な方向が決まれば,部会はその方向で意見を調整,整理し,再び総会に提出するというように,総会と部会をゆききするようにしてはということである。

前田会長

 次に,さしあたって部会に所属する委員を選考するための選考委員を,古賀副会長,木内,西原,細川,横田,渡辺の各委員,計6名のかたにお願いしたい。

西原委員

 部会に所属する委員を選考するまえに,各委員の希望を聞く必要はないか。

前田会長

 その気持ちはわかるが,なにぶん人数が多いうえに部会の委員数にも制限があり,また欠席委員もおられるので,それはむずかしい。やはり選考委員会を開かしてほしい、
(別室で選考委員会が協議の間,15分間総会を休憩。)

前田会長

 総会を再開する。選考結果を古賀副会長からご報告いただく。

古賀副会長

 選考委員会で協議の結果,下記の20名を部会に所属すべき委員と決定した。なお漢字とかなのどちらの部会に所属するかは,20名のかたがたの意見も聞いて後ほど決めることとする。


〔部会所属委員〕
愛川,阿部,石割,岩淵,植松,浦上,遠藤,大野,小野,金沢,熊沢,佐々木(八),志田,柴田,中田,西島,西原,久松,平林,渡辺 各委員 (計20名)

前田会長

 続いて運営委員会の委員を選考したい。せんえつではあるが,わたしに一任していただけるか。(拍手)では,下記の委員にお願いしたい。


〔運営委員〕
前田会長,古賀副会長,木内,佐々木(茂),丹羽,細川,森戸,横田 各委員,ほかに,部会長2名(計10名)

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