国語施策・日本語教育

HOME > 国語施策・日本語教育 > 国語施策情報 > 第11期国語審議会 > 第81回総会 > 次第

次第 審議経過報告及び今後審議すべき問題点

福島会長

 次に審議経過の報告および今後審議すべき問題点であるが,事務当局から説明がある。

清水文化庁次長

 その前に国語審議会のしくみについて簡単に述べる。「国語審議会令」(資料2)をお配りしてあるが,法律上の設置根拠は,文部省設置法の第43条で,そこに国語審議会を置くということが書いてある。そして,この設置法の規定を受けて国語審議会令ができている。国語審議会の所掌事務としては,その第1条にあるように,文部大臣または文化庁長官の諮問に応じて,「国語の改善に関する事項」,「国語の教育の進行に関する事項」,「ローマ字に関する事項」について調査,審議し,また審議会自らこれらに関し,必要と認められる事項を文部大臣,関係各大臣または文化庁長官に建議をすることである。それから,組織は,第2条に委員50名以内で組織するということがあり,これにより今回50人の委員をお願いしている。次に,必要に応じて臨時委員を置くことができるとか,あるいは,専門調査員を置くことができるということが第2条にある。なお,第4条では,委員の任期は2年ということになっている。それから第5条が先ほどお願いしたように,会長・副会長の互選,また会長・副会長の仕事が述べてある。議事は,第7条にあるように,委員の過半数の出席が必要であり,議決定数は,第2項に,過半数をもって決するとある。それから,審議会の庶務的な事項は第8条にあるように,文化庁文化部で処理している。なお,文化部の中の国語課がこれを担当している。
 なお,審議会の沿革であるが,これも簡単に申し上げると,国語問題の調査は,明治年代にさかのぼる古い歴史を持っている。昭和9年に勅令で官制による国語審議会が設置され,戦後しばらくはその勅令による審議会であったが,昭和24年に法律による文部省設置法に基づく国語審議会令という政令によるものに改組された。先ほど大臣のごあいさつにもあったように,戦後審議会から答申5,建議11という多くの答申・建議をいただいており,それに基づいて国語施策が実施されている。
 なお,もとは,文部省に置くということになっていたが,文化庁の設置に伴い,文化庁に置くことになった。
 それから昭和41年の諮問のことであるが,資料の3と4を御覧いただきたい。現行の国語の書き表し方のよるべき基準としては,昭和21年以来,国語審議会の答申および建議に基づいて公布されている一連の内閣告示・訓令がある。多少細かくいうと,昭和21年に公布の「当用漢字表」および「現代かなづかい」,昭和23年の「当用漢字音訓表」,「当用漢字別表」,昭和24年の「当用漢字字体表」,昭和26年の「人名用漢字別表」,昭和34年の「送りがなのつけ方」などがある。これらの基準は,実施後いろいろの議論を生み,戦後の国語施策を再検討すべき機運になってきた。そこで,資料3にあるように,昭和41年6月に時の文部大臣から国語審議会に「国語施策の改善の具体策について」諮問をした。具体的に検討すべき問題として,別表を含め当用漢字表,当用漢字音訓表,当用漢字字体表,送りがなのつけ方の問題,また現代かなづかい,その他を問題点として掲げてある。なお,資料の4には,昭和41年6月諮問時の文部大臣のあいさつと,文部事務次官の説明がある。この文部大臣のあいさつの中で,「今後のご審議にあたりましては,当然のことながら国語の表記は,漢字かなまじり文によることを前提とし,」と,あることをこの際とくに申し上げておきたいと思う。こういう諮問が出たあと,国語審議会は,第8期から第10期まで,すなわち昭和41年6月から本年の6月の末まで,まず当用漢字音訓表および送りがなのつけ方を取り上げ,主としてこれについて御検討いただいた。当用漢字音訓表は漢字部会で,また送りがなのつけ方はかな部会で,それぞれ具体的な検討が行われた。
 この両部会のほか,この二つの部会の谷間になるような問題や基本的な問題を検討するために一般問題小委員会を設けて,国語施策の公示の方法の問題,また教育との関連,国語の教育の振興等の問題を取り上げて検討した。昭和41年以来精力的に審議を重ね,昭和45年の5月には部会の試案を公表して社会の各方面の意見を求めるなど,慎重な配慮をし,本年6月26日に「当用漢字改定音訓表」および「改定送り仮名の付け方」の答申となった。この答申では,これまでの国語施策の制限的な色彩を改め,現在の国語を書き表す場合の目安,あるいは,よりどころというようなことを根本方針としている。さらに国語施策の実施方法としては,第8期の小委員会で検討した結果,これまでの経緯や一般社会への周知徹底などを考慮すれば,内閣告示・訓令の形式によることが適当と考えられるが,この場合,一般国民に対して法令的な拘束力を持つかのような表現は厳に避けるべきであるという旨の御報告があり,総会はこれを了承した。また第10期の最終総会でもこのことを確認した。したがって,わたしどもとしては答申は,目下内閣告示・訓令として公布するような関係機関と相談し,準備を進めている段階である。なお,第10期の最終総会では,答申のほか,国語が平明で,的確で,美しく,豊かであることを望んで「国語の教育の振興について」の建議があった。
 以上第10期の審議経過等を申し上げたが,さらに今後審議すべき問題点として残っているとわたしどもが思うものは,「当用漢字表」,「当用漢字字体表」,「現代かなづかい」である。いずれも重要なものであり,できるだけすみやかに御答申をいただきたいと考えているが,これまでの審議の経過や,あるいはまた一般の関心・期待を考え合わせると,「当用漢字表」の改定をまず最初にやっていただいたらどうかと考えている。ついては,今期はまず当用漢字表の検討をお願いし,続いて適当な時期に「当用漢字字体表」の検討を始めていただいたらどうかと考えている。「当用漢字表」の検討に関連して「当用漢字音訓表」および「送りがなのつけ方」の問題にまた及ぶことも考えられるが,これについても併せて御検討願えたら幸いである。

トップページへ

ページトップへ