国語施策・日本語教育

HOME > 国語施策・日本語教育 > 国語施策情報 > 第11期国語審議会 > 第81回総会 > 次第

次第 今後の運営について

福島会長

 それではこれから議事にはいる。第1に「今後の運営について」であるが,従来から国語審議会は,運営委員会を設けて審議会の運営について協議し,運営の円滑を図ってきたようである。今期にも引き続いて運営委員会を組織し,会長を助けていただくという必要があるので,従来どおり運営委員会を設けたいと考える。御異議がないようなので,運営委員会を引き続いて設けることにいたしたい。そこで運営委員会の委員をどうするかということになる。これまた先例によると,会長一任ということになっているそうである。とくに御異議がなければ前例どおりに取り計らいたいと思うがいかがか。

木内委員

 今まで運営委員会の一員であった関係上言うが,とかく運営委員会と全体とが離れるというようなことが感じられてまずかったと思う。運営委員会が必要だとは思うが,その運営ぶりについては改善の余地があると思う。新しい委員もたくさんおられるので,運営委員会はどんなものかその説明を当局からしていただき,それから発信しないとまずいという感じを持っている。

福島会長

 それでは,従来の経過も含め,事務当局から運営委員会の性格などを説明してもらう。

石田国語課長

 先ほど会長から御説明があったように,この審議会は全委員が50人という,審議会としては非常に大きい審議会であるので,その運営の円滑化を図るため,会長を補佐し,審議会の運営について,たとえば総会で出た御意見を整理したり,あるいは今後どういうようにしていくかということなどを御相談いただくために運営委員会を第1期以来,各期とも設けている。別に運営委員会で決定するのではなく,審議会の運営の仕方について総会ではかるための原案をまず御相談するというようなことを任務としている機関である。こういう性格であるから,従来,運営委員会は,会長・副会長のほか,総会の御承認を得て,会長が指名した委員10名前後で構成しており,前期は確か11人であったと思う。

福島会長

 運営委員会の運営方法,その他について御意見を承りたい。(発言なし。)

福島会長

 それではさしあたり,運営委員を指名して,運営委員会を組織し,運営委員会の良識に持つということになるのだと思う。委員の指名は先ほど申し上げたが,会長一任ということにお願いできるとありがたい。(賛成。)それでははなはだせん越であるが,委員の指名をする。岩淵,植松,岡村,木内,木庭,小林,真田,安居の各委員にお願いしたい。これに会長および副会長が加わる。
 次に今後の審議の進め方であるが,先ほど当局から要望があったとおり,「当用漢字表」および「当用漢字字体表」について御注文があったので,御注文どおり「当用漢字表」および「当用漢字字体表」の審議を進めることにすることが適当かと思う。これに関連する問題も当然いっしょに取り上げるということになると思う。第1回の総会であるので,この次の総会でじゅうぶん御検討をいただくことになると思う。ただ,本日まだ多少時間が残っているので,これからの審議の進め方,問題の取り上げ方について時間の許す限りじゅうぶんな御意見をいただきたい。

時実委員

 今度諮問にはいくつかの事項があるが,一つは「当用漢字表」,それから「当用漢字字体表」である。これはこの前から問題になっていたと思うが,当用漢字表に必ずつきまとうのはいわゆる教育漢字ではないかと思う。今度の委員の中に3名の教育関係のかたがお加わりだが,これは当然,教育漢字のことを御配慮になってのことではないかと思う。今後の審議と,教育漢字とは非常に深い関係がある。そのへんのところを自由討議で,ぜひひとつ問題点として取り上げていただけたら幸いである。

清水文化庁次長

 各委員からいろいろご意見をいただく前に,先ほど申し上げたとおり,検討すべき問題点の「当用漢字表」には「別表を含む。」ということを申し上げたつもりであるので,その点も御考慮の上ひとつじゅうぶん御意見をいただきたい。

福島会長

 ただ今の御意見に関連し,またそれ以外の問題点についてもこの際御意見をいただきたい。

小谷委員

 今すぐ取り上げられない問題と思うので,申し上げるのはどうかと思うが,検討すべき問題点3の「現代かなづかい」の範囲についてお伺いする。たとえば日本国語の語いの中には現在かなり多くの近年になってはいったいわゆる外来語がある。これはとくにかたかなで書き表されると思うが,この表記のしかたも,「現代かなづかい」という中にはいるのか,それは別問題となっているのか。

福島会長

 当局から御説明願えるか。

安達文化庁長官

 「現代かなづかいの内容上の問題点について検討する必要がある。」というところであるが,当用漢字や送りがなとはいくらか違い,その「方針」ではなく,「内容上の問題点」について検討してただきたいということが一つ。それから外来語の表記は非常に大事なことは御指摘のとおりだが,それは4番目にある「その他上記に関連する事項」として処理していただくことが,適当ではないかとわたしは考える。

福島会長

 ほかに御意見をいただきたい。

植松委員

 「わかち書き」とか「句読点」の問題とかいうのはいずれ取り上げるような考えが事務当局にあるかどうか。

福島会長

 事務当局からお答えいただきたい。

安達文化庁長官

 これまでにも,日本語の書き表し方について正書法を取り上げるべきだとういう意見があった。正書法ということになると,一つ一つの語について漢字で書くか,かなで書くか,また,漢字とかなをどういうふうに交えて書くかということを決めるというように非常にむずかしい問題になるので,その必要は感ずるが,なかなかそこまではいかないというようなことでこれまで過ごしてきたのではないかと思う。「わかち書き」とか「句読点」もやはり正書法との関連なども考えなければならない問題にもなるのではないかと思う。将来の課題ではあろうかと思うが,現在の段階ではそこまでいけるかどうかという感じを持っている。しかし必要があれば,今後なお検討したい。

植松委員

 御検討願いたい。

福島会長

 よろしくお願いする。

長岡委員

 国語のアクセントのことであるが,わたし個人としては,日本語ではアクセントは問題にしなくてもいいのではないかと思っている。国語課ではどんなふうに考えているか伺いたい。

福島会長

 国語のアクセントをいかようにお考えかということについて,お答えいただきたい。

鹿海文化部長

 天沼専門員からお答えする。

天沼専門員

 アクセントのことは,国語課としてはまだ全然手をつけていない。戦争前には,国語の教科書の教師用の指導書にアクセントについて詳しく触れてあったが,戦後はなくなっている。現在はアクセントのことは,たとえば,標準アクセントとか,関西アクセント,あるいは九州アクセントとか,そういうふうにいろいろな研究者の研究結果を適宜必要上常識的に利用させていただいているが,国語審議会としても,国語課としてもとくに国語のアクセントの標準を立てるということはこれまでも考えなかったし,現在もそこまではいっていない。

長岡委員

 日本語ではアクセントは問題にしなくてもいいというわたしの立場から見ると,労力と経費を使っているところがある。むだなことではないかと思う。御飯を食べるときに使う「はし」,渡る「橋」,ものの「端」をアクセントで区別するというが,「はしを持ってこい。」といった場合には,飯を食う「はし」を持ってくるに決まっている。言葉というものは,単独でなく前後の関係で分かるのである。わたし自身は,三つの「はし」をアクセントで言い分けることができない。この点現在の教育はどういうふうになっているのか,今後国語審議会では,アクセントの問題をどう取り扱うかということを一つの問題として提案をしておく。

福島会長

 これに関連した御意見,あるいはほかの御意見をどうぞ。

宇野委員

 ちょっと見当はずれなことを言うかもしれないが,お願いがある。それは,昭和41年のこの事務次官の説明に「当用漢字の適用範囲,固有名詞,専門用語等のいわゆる表外字の取り扱い,あるいは学校教育の関連等の問題がございます。」とある。固有名詞と専門用語と学校教育のことはそれでわかるが,そのほか,たとえば新聞の表記,あるいは特に問題は法令である。新聞はいうまでもなく,民間のものであるから別に当用漢字表にとらわれる必要はないわけで,新聞社が自主的にそうしているとわたしは了解しているが,法令は,当然内閣訓令・内閣告示に拘束されることになる。わたしが非常に気になっているのは,今,刑法の改正の草案の審議が10何年,20何年に近く続けられているが,これが当用漢字表に拘束されていることを,わたしは第5期の委員をいたしたときに,法務省のそのほうのかたがたから伺っている。法律関係では,現時の当用漢字表にはないので非常に困っているという字が何字か忘れたけれでも,たしか十数字であったと思うが,あるというお話であった。今回当用漢字表の字数の問題で,わたしは当然ふやさなければならないと思っているが,ふやすばかりでなく,あるいは削る字があるかもしれない。そうすると,それを早くやらないとせっかく20年近く苦労して改正法案ができたときには,もうそれは改定され,当用漢字表とはちぐはぐになっているという状態が起こることは容易に予想される。であるから,これは刑法の草案ほうの進みぐあいもあるが,国語審議会としても当用漢字表の目安というかその選定は非常に急いでやっていただきたい。もっとも,もし当用漢字表が目安とかよりどころとかいうことで必ずしもそれに拘束されないだということが非常にはっきりとしていれば,その問題は解決するわけである。で,わたしとしては,つまりその方法でやっていただきたいので,極端な言い方をするならば,当用漢字表は改定しなくていいというのがわたしの考えである。つまり,それはよりどころであり目安であるから,それに含まれていなくても必要な字はどんどん使えばいい。それは訓令であろうと法律であろうと必要な字はどんどん使うというのがわたしとしてはいちばんの理想である。しかし,それでは皆さん方が御納得にならないし,ことに教育関係のかたから御異存が出ると思うので,当用漢字表を適当に現代に合うように,現在普通の社会で必要としている字は,ある程度ふやすというようなことをするのが適当だろうとわたしは思っている。たまたまそういうことにちょっと関心を持っているので申し上げ,かたがた大至急やっていただくようにわたしとしてはお願いをする。

植松委員

 刑法改正の条文の用字についてご意見を承り,たいへんごもっともだと思うが,これに関しては,ここに内閣法制局の真田次長が委員として御出席である。皆さんのご参考にもなると思うので,法令の用字あるいは用語についてなにか国語審議会の委員に参考になるようなことがあったら,法制局での注文を整理なさるおりの方針についてお話しいただければ幸いだと思う。

福島会長

 真田委員からお話願えるか。

真田委員

 わたしたちのほうで平素法令の起案・審議をしている立場から,国語の用字・用語についてかなり苦労をしている面もあるので,そういうようなことからまず御紹介し,最後に一言わたしのほうからの希望を申し上げたいと思う。毎日いろいろの形で内閣告示なり内閣訓令なりで用字とか送りがなのつけ方とかいろいろ出てくると,わたしのほうで拘束を受けるので,法令を立案する場合,あるいは審議する場合に,条文の整理その他を通じて当然用字についても検討するのであるが,その際なるべく内閣告示に従うという原則でやっている。従来の法令を御覧になるとおわかりと思うが,なかなかむずかしいことばがいろいろ出てくる。漢字にしても,どうしてこんなにむずかしい字を探し出して持ってこなければいけないのかと,われわれのほうで首をかしげるような原案が出てくることも往々にしてある。そういう文章をとにかくわかりやすく書き直すこと,それが大原則である。これはいうまでもなく,法令はわれわれのものではなく,国民のものであって,国民に読めないような文字を書いたのでは,実は法令としての意義が極端なことを言えば半減するだけでなく,なくなってしまうということもいえるわけである。とくにそれが罰則に関係があるというようなことになると,むずかしく言えば,罪刑法定主義のたてまえからいっても,読めない法律を書いたのではなんにもならないというような気持ちでいる。
 むずかしい字が出てくるのに二つあって,一つは法律の世界で独自に漢字を使って新しい語を作る場合がある。それから,平素日本語そのものがそういうことばとして使われていてむずかしい字があてはめてある。それにまたいろいろあるけれども,日本人が平素用いていることば自体がむずかしい。また,そのあてはめてある漢字もむずかしいというようなものだとか,あるいは学術用語なり,あるいは極端なことを言うと,いちばんはっきりしているのは,たとえば,法令の条文に化学物質などの名が出てくることがある。「りん」が出てきたり,「いおう」が出てきたり,「酸」が出てきたり,これらにはむずかしい漢字があるわけであって,これはすぐに言いかえるというわけにもいかない。「りん」を言いかえてもしようがなく,「りん」は「りん」であるから,いたしかたなくわれわれのほうでは「燐(りん)」を使う。使うが,その際に,やはりそれに相当する漢字が当用漢字などに掲げてないと,わたしたちは,実は二の足を踏むわけである。で,ひところはそういう場合には,やむをえずかなで「りん」と書いた時代があった。しかし,これもまた考えてみると,かなで「りん」と書いてそれは化学物質の「燐」のことであるということを,前後の続きぐあいから,冷ややかに落ち着いて読めばわかることであるが,これは「燐」という漢字をかなで書いた仮の姿だということを表すために,そこにわざわざ傍点を打つというようなことをしたこともある。しかし,これは,見た目にもきたない,また,「燐」の字を知らない人に「りん」と書いて,これは漢字の「燐」であるということを注意しなさいといってみても,おかしな話であるから,最近ではしかたなく漢字で書いてふりがなをつけている。

真田委員

 もう一つは,先ほど述べた法律の世界で作ったことば,たとえば,刑法にいろいろ恐喝(かつ)罪だとか猥褻(せつ)罪だとか,これはちょっと日本語自体にも関連するが,あるいは民法で滌(てき)除というむずかしいことばもあるが,そういった法律の世界でことばを作って,それにむずかしい漢字があてはめてあるようなものは,その制度を変える際に言いかえてしまうというような考えてやっている。とくにいまの言いかえのほうでは,基本的な法律,たとえば刑法とか民法とかで作っている制度をそのほかの新しい法律で引用するような場合には,いきなり言いかえたのでは,法律上の関連性がわからなくなるので,そういうこともできない。このような場合には,しかたがないので,やはり漢字を用いてふりがなをつけるという方法をとっている。平素漢字について,法令の審査,条文整理の目から見ていろいろくふうしている点を申し上げれば,ざっと以上のようなことである。
 それから,同じく公用文といっても,法令は,普通の通達,その他の公用文と違っている。普通の公用文は,いったん書けば,あとは記録的な文書として残り,それでもいいというような形であるが,法令は将来にわたって常に適用されて生きて使わなければならない文書である。わたしたちのほうでいちばん困るのは,法令の改正の場合にどうするかということである。国語審議会から答申や建議が出されれば,そうれが内閣告示としてわれわれのほうにそれなりの拘束力が及んでくるので,それに合わせた漢字を用いて法律を作る。ところが何年かたって,その修正があると,あるいはかなづかいの改定があると,また新しい内閣告示が出る,その内閣告示の拘束を受けるわれわれが,その時点で法律を改正する場合には,その改定されたものを用いる。用いると,先ほど申したように,法令は相当期間生きているので,一つの条文の中に,部分部分によって改正の時点を異にするのに応じて違った用い方をしなければならないということも起きる。これはまた,非常にわれわれのほうで頭の痛いところであって,どういうふうにしたらそこがうまく書けるだろうかということで苦労しているが,名案がまだないというのが実情である。そういうことであるので,相当改正の機会の多い法律を御覧になるとすぐおわかりになると思うが,同じことばが漢字で書いてあったり,かなで書いてあったりする。非常に困ることだと思うが,現状では,これに対する名案がない。そういうことなので,当用漢字にしろ,送りがなにしろ,ここで答申や建議をお出しになる場合には,相当先までのことを見込んで慎重におやり願いたい。と申すのは,ここで答申や建議が出ると,だいたいそれは内閣告示の形でそのまま公示されるというのが従来の例であるから,今までのようなわれわれの苦労がまた繰り返されるということになり,これははだ困るので,どうか非常に長い先の見通しを立てておやり願いたいということである。

福島会長

 ほかに御意見を。

遠藤委員

 昭和41年に文部大臣から諮問があって,その条項がきょう読み上げていただいたようにいくつかあるわけである。その中でお話を承っていると,「当用漢字表(別表を含む。)」とあり,この別表というのは教育漢字であるが,この二つを中心にしてこの第11期ではやってほしいというふうな御意向のようにわたし聞いたけれども,ほかのものを除いてそういうふうに御希望になった理由,あるいは経過,そういうものを伺っておきたい。

福島会長

 いかがか,当局のほうでは。

木内委員

 当局の答弁を代弁するわけではないが,わたしも6年関係してきたからかなり当局の気持ちもわかると思う。実は,当局はわれわれを指導するものではなく,国語審議会が自分でこれをやるべしと決めてやっているのである。ただ,きょう集まったときのように,顔も知らない初めてお目にかかるかたもあるので,当局がこれをやってくれというにすぎない。だから審議会としては,どんどん自ら改定すればいいのだと,こう思うので,そんなつもりでやればいいと思う。それで,これはむしろ運営委員会のときに申し上げるべきだと思うが,今度,今の当用漢字表を取り上げるのは,これは自然の勢いで当然だと思う。あと残っている大問題は現代かなづかいであるが,これはあと回しにする。当然だと思うが,今は当用漢字表が最もいわゆる制限的性格を持ったものである。それを一応の目安とか,あるいはよりどころ──この場合には一応の目安ということばがいいであろうが──にするについては真っ先に,いったい目安をだれのために,なんのために,だれに与えるのかということを最初に審議する。部会は,前は漢字,かなと二つあったが,今度は当然,部会は一つしかできないだろうと思う。しかし,その部会の構成等もいろいろやり方がたくさんあると思う。これもついでに申し上げれば,部会ができても,今までもそうであったが,その部会の委員に指名されていなくてもだれでも随時出席して,決には加わらなくても意見は述べられるといったような運営がいいと思う。そういう部会ができるとしたら,最初に,今申した,なんのために,だれのために一応の目安を与えるのかということをまず審議し,それを部会が,こういう考え方もあり,ああいう考え方もあるということでいいから,つまりこれがいいのだとはっきり決めないでいいから,いろいろな考え方を総会に出して総会で結論を得ていく。それも途中で変えてもけっこうであるが,そういうやりかたをすれば非常に審議がはかどるだろう。これは,今までの審議が非常に時間がかかった経過,これはやむを得ずそうなったと思うが,これらを見てそう思うということを,今ここで御参考に申し上げたいという気持ちがした。
 それからもう一つ,最初の中村文部大臣の諮問というのはずいぶん古いが,これにこれこれのことが書いてある。その順序で取り上げていき,済んだらそれでおしまいだというものではないのであって,要するに国語施策というものをどうしたら改善できるかというばく然たる問題提起であるわけだから,関連事項は何を審議してもいいわけだと思う。きょうも外国語・外来語の話も出たし,アクセントの話も出たし,その他いろいろあったが,このようなことをも,随時取り上げていかなければ当用漢字表をどう直すということも本物にはならないとわたしは考える。そういうところはきわめて自由な,さっきの大臣のおことばに,「なごやかに気楽に,しかし真剣に自由に……」というお話があったが,ほんとうに気楽に,四角ばらないでやるべきだと思う。

福島会長

 事務当局のご説明があればもちろんけっこうであり,わたしからも申し上げておきたかったわけであるが,国語審議会が,自分自身で今後の進行方法,あるいは問題点の取り上げかたを決めていくということが基本であろうと思う。もちろん文部省当局の御意見も伺いながらということにはなると思うが。

清水文化庁次長

 木内委員から当局に代わってのお話もあったが,先ほどお願いいたしたように,ずっと前期からの議事要録をまた読み直してみると,お話のように,当用漢字表(別表を含む。)をまず検討すべきではないかということがこれまでもかなり御意見として出ていることは確かである。だが,その先に,音訓表の問題,あるいはまた送りがなの問題をやろうという各部会の御意向で,第8期以後,御審議いただいたわけである。さらにまた,先ほど来お話があったように,あちこちで別表を含めての漢字表の改定の御期待なり御関心があるということを踏まえて,まずこれをやっていただいたらどうかと思うが,岩淵委員が漢字部会の部会長であったので,そのへん非常にお詳しいと思うので,ひとつ補足なり,また新しい観点からなり,お話し願いたいと思う。

岩淵委員

 漢字部会のお世話をしていた関係で,漢字に関する審議の経過をちょっとお話しておきたいと思う。漢字部会ができて,何を取り上げるかということを議論した。その結果,当然当用漢字表から取り上げるべきであるという意見があった。しかし,この漢字表をどのような角度で,どのように取り上げるかということは,やはり相当時間をかけて慎重にしなければいけないという考え方があった。そこで,さしあたって音訓表が非常に窮屈で不自然で困る点もあるから,取り上げようではないかということで音訓表を取り上げたわけである。最初の見通しとしては,たぶん2年か3年ぐらいででき上がるだろうというふうなことであった。ところが,木内委員もおっしゃったように,たいへん長い時間がかかってしまって,これはわたしのふてぎわもあると思うけれども,やはり,いろいろな根本的に考えなければならない問題がいくつかあった。それは,きょうここに資料があるので御覧いただければすぐわかることであるが,当用漢字表とどう着するというか,これと関連することが非常に多く出てきたからである。たとえば,先ほど真田委員からお話があったが,この当用漢字表の原則からいうと,ふりがなは使わないというので,今まで,たてまえとしてはふりがなを使わないですむような書き方をしたのであるが,実際にはふりがなは相当使われている。したがって,ふりがなは原則として使わないということがこのまま残っていることは,やはり問題があるだろうと思われる。それから,その「使用上の注意事項」に,「この表の漢字で書きあらわせないことばは,別のことばにかえるか,または,かな書きにする。」とあるので,法令ではいろいろと御苦心があったと思うが,これもこういう方針でいいかどうかということがかなり根本的な問題である。そういうことで,ぜひ当用漢字表,それから字体表を取り上げるべきだという考え方が漢字部会で非常に強かった。漢字部会のある委員は,漢字表を取り上げないならば,自分は音訓表の審議をすることに不賛成だというふうなお話もあって,一時は漢字部会の中の小委員会を作って,そこで当用漢字表の検討をするというようなこともした。
 それからもう一つ,この漢字表について問題になることは,御承知の補正資料である。これは第2期の国語審議会での報告である。新聞などは,補正資料に従って当用漢字表の中の28文字を入れかえて使っている。ところが,教育のほうでは使っていない。そういうことで,教育と新聞とで使用する漢字には,補正資料を使うか使わないかという点で違いがある。この補正資料をどうするか,これも急いで考えなければならない問題だろうと思われる。それから,いわゆる教育漢字であるが,教育上からもほかの点からもいろいろな問題があるので,これについての考え方も大いに論議した上で決めなければならないだろうと思われる。そういうことで第10期までの漢字部会の考え方としては,さしあたって音訓表を取り上げたが,その基本である当用漢字表そのものについての考え方を急いで審議しなければならないということを非常に痛切に感じていたし,そういう要求があったことを申し上げておきたい。だから,これは何も文化庁のほうからそういう希望があったからではなく,漢字部会の委員それ自身にそういう要求があったことを申し上げておきたい。

遠藤委員

 今のお話で分かったが,検討すべき問題点には,「選定に関する方針およびその取捨選択」と書いてあるが,先ほど宇野委員からお話があったように,当用漢字表の制限的なわくをはずして,漢字の使い方を自由にするなら,当用漢字表は現在のままでもいいのではないかという考えのかたもずいぶんいらっしゃると思う。だから,字種の選定を検討する前に,当用漢字表を取り上げるかどうかということを議しなければならないと思う。それから緊急の問題としては,先ほど小谷委員からお話があったけれでも,昭和21年の「当用漢字表」の「使用上の注意事項」には,「外来語は,かな書きにする。」ということが書いてある。しかし,中国の地名,人名はかなではなくてもいいということになっている。ところが,中国語をかな書きにするとは書いてない。だから新しい中国語を使う場合には,漢字で書いていいとも考えられる。はたして,これでいいのかどうか,早く決めておくべきである。つまり外来語であるが,中国語は,いったいかたかなで書くのか漢字で書くのかこれは決まっていない。

福島会長

 なるべく早く運営委員会を開いて,今後の審議会の審議の進め方,問題点の取り上げ方を検討していただきたいと思っている。その結果を次回の総会に報告して審議を進めることになると思う。なお御意見を伺いたいが,定刻もだいぶ過ぎているので,本日の総会はこのへんまでにいたしたいと思う。重ねて申し上げると,本日の御意見を参考にして,運営委員会で今後の審議の進め方を検討したうえで,総会に報告して御承認を得たうえで出発するということになる。
 運営委員会はなるべく早く,年内にでも開催することとし,総会は明年1月中に,下旬ぐらいを目安にしたいと思うが,運営委員会で相談する。時間がなくなったので,御了承をいただけるならば,これで本日の総会を終わることにしたい。

トップページへ

ページトップへ