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次第 前回の議事要旨の確認/「当用漢字音訓表」及び「送り仮名の付け方」に関する内閣告示・訓令について(報告)

福島会長

 これからおみえになる方もおられるようだが,定足数に達しているので会議を始めたい。
 お手もとに議題を差し上げてあるが,最初の議題は前回の議事要旨の確認である。これは既に差し上げてあるので朗読を省略する。
 お手もとの黒表紙の最後にもとじ込んであるから御参照いただきたい。御異議がなければ御確認をいただいたものとして取り計らいたい。
 特に訂正の必要などがあれば,議事の進行の途中でも終わりでも,御注意をいただければ,そのように計らいたい。
 それでは議事要旨を確認したということで次の議題に移りたいと思う。
 次に「当用漢字音訓表」及び「送り仮名の付け方」に関する内閣告示・内閣訓令についてであるが,既に御承知のように,前期の審議会の答申に基づき,先般内閣告示及び内閣訓令が出されたので,これについて当局から御説明をいただきたい。

鹿海文化部長

 それでは簡単に御報告する。
 今会長からお話があったように,昨年の6月28日に国語審議会から「当用漢字改定音訓表」及び「改定送り仮名の付け方」についての答申があった。そこでこの答申の趣旨の徹底を図るため,北海道から九州に至る8ブロックにおいて,約半年間かけて古賀副会長,岩淵委員,佐々木八郎委員に御足労をお願して,各地で説明会を開いた。
 一方これまでの前例にのっとり,この答申の趣旨を尊重してこれをそのまま訓令・告示という形で国民に周知するための準備をした。内閣官房及び内閣法制局と協議を重ねるとともに,これが訓令として出された場合,政府部内でこれを公用文においてどのように取り扱うかということについても,これと併せて関係各省庁と協議を行った。
 その結果,今後一般公用文と法令をできるだけ一体化するという各省庁の強い希望もあったので,この点を踏まえ,更に法制局と協議をした。このような手続を経て,6月7日の事務次官等会議,6月8日の閣議において内閣告示・内閣訓令が決定された。なお,政府内部における公用文での取扱いについては,答申の趣旨を尊重するということで「事務次官等会議申し合わせ」を行った。このような手続を経て,「当用漢字音訓表」及び「送り仮名の付け方」に関する内閣告示・内閣訓令が6月18日官報に登載されたわけである。この官報はお手もとに差し上げてある。これに伴って,内閣官房長官から各省庁事務次官にあてて,これらの内閣告示・内閣訓令が出されたこと及びこの趣旨を尊重して,今後公用文を取り扱うことが「事務次官等会議申し合わせ」とともに通知された。また,文化庁としては,文化庁次長名で各都道府県教育委員会教育長及び関係方面へ通知を出し,内閣告示の趣旨の徹底を図った。これらの通知の写しも各委員のお手もとに差し上げてある。その文化庁からの通知の中に,「学校教育における『当用漢字音訓表』及び『送り仮名の付け方』の取り扱いについては別途,文部省初等中等教育局長から通知する予定である。」というように書いてあるが,この学校教育での取扱いについてもお手もとに差し上げてあるとおり,文部省初等中等教育局長名で各都道府県教育委員会教育長あてに通知が出されている。この通知では,小学校,中学校における「音訓表」の取扱いについては,なお十分議論を重ねて検討する必要があるので,別に通知するまでは従来どおりとし,高等学校においては,昭和48年度に入学した生徒から新たに加えられた音訓及び付表の語を含めて当用漢字音訓表のすべての音訓が卒業するまでに読めるようになるように配慮するものとするとしている。また,「送り仮名の付け方」については,小学校,中学校,高等学校における送り仮名の指導については,原則として「本則」,「例外」による,なお,中学校,高等学校では許容のあることを説明する程度とする,としている。
 以上,非常に簡単であるが御報告を終わる。

福島会長

 ただ今の内閣告示・内閣訓令の説明について何か御質問があるか。

宇野委員

 私はちょっと教科書に関係しているので,学校教育における送り仮名の付け方の問題については非常に関心を持っている。実際の学校教育特に教科書検定という立場から言えばやむを得ないことのような気もするけれども,答申はあくまでも目安ということであったはずである。しかし,教科書では送り仮名の付け方の「本則」及び「例外」だけを認めて「許容」は認めないという立場を取っている。私は,これは目安という趣旨に反すると思う。一つの教科書の中で,例えば「たちいふるまい」を書く場合に,「立居振舞」と書いたり,「立ち居振る舞い」と書いたりしているということでは具合が悪いと思うが,その教科書で「立居振舞」なり「立ち居振る舞い」なりで全部統一してあればいいのではないか。私はそれが目安の趣旨ではないかと思う。学校教育の教科書で,そのような規制が行われると,今我々が一生懸命に検討している「漢字表」も先般来度々確認しているように「目安」という趣旨を取っているが,この漢字表ができた場合に,教育面において教科書はそれによらなくてはいけないというようなことになるとすれば,我々は何をやっているのかわからなくなる。このことを私は大変遺憾に思う。今回検討している漢字表の扱いについても,学校教育については別途しかるべき機関でお考え願うということになると思うが,私はこの問題についてどういうような方針を取ってもらいたいということを,審議会としては注文すべきだと思う。
 したがって,今の送り仮名の問題にしても,私はそのころ委員ではなかったからどういう意見があったか知らないが,「目安」という趣旨で送り仮名が決められた以上,検定基準で「本則」一本に絞ってしまうということは,はなはだ遺憾である。今から直せるものなら来年度から直していただきたい。直せないものなら仕方がないが,今後の漢字の問題についてはそういうことがないように,私は厳にお願いしたいと思う。

福島会長

 今の御意見に関連して,文部省から何か特にお話しすることはないか。

林主任視学官

 送り仮名については,答申の前文に「学校教育においては,この「送り仮名の付け方」が適切な配慮の下に運用されることが望ましい。」といっているので,学校教育としてどういうことをしなければならないかを学校教育関係者,専門家で構成した協力者会議でいろいろ相談した。一般社会については「目安」であるということはよく承知しているが,学校教育においてはやはり,ある統一が必要であると前々から教育界の要望があったと私どもは考えており,協力者会議でも大体そういうような考えの下に,どれか一つを筋に取ろうではないかということになった。そこで我々としては,一つの筋として「本則」・「例外」を取ることにし,混乱を避けるため,小学校では「許容」には触れず,中学校,高等学校において「許容」があるということを教えることに決めた次第である。
 したがって,これでなければならないということにはしないが,教科書では一通りそれに従うということになったわけである。つまり,中学校,高等学校において「許容」のあることを承知させるようにしたいと思っている。

福島会長

 この問題は本日の議題にも予定されている「学校教育との関連」とも関係するので,場合によってはその際に取り上げていただいても結構だと思う。一応当局の説明等を伺ったことにして,審議会として更に要望すべき点があれば,本日の「学校教育との関連」の事項の討議の間に考えていってはいかがかと思う。
 外に告示・訓令の件について御質問,御意見はないか。今後審議の過程でこれらの問題についての御意見その他が出てきたら,その取扱いを随時考えていくということにしたいと思う。

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