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次第 庶務報告/前回の議事要旨の確認/漢字表の具体的検討について(報告及び協議)

福島会長

 第90回国語審議会総会を開会する。
 本日の最初の議事して,庶務報告をお願いしたい。文化部長どうぞ。

鹿海文化部長

 去る6月18日に文部省,文化庁の人事異動があり,清水文化庁次長が文部省大臣官房長に就任し,同日付けでその後任に内山奈良国立文化財研究所長が就任した。内山次長は文化財保護部長,国語課長等を歴任している。御紹介申し上げる。

内山次長

 何分ともよろしく御指導いただきたい。

福島会長

 国語課長どうぞ。

石田国語課長

 第88回総会の際に,中国における文字改革,その他の国語施策の調査について,予算が確保された旨を御報告申し上げた。その後,これを具体的にどのようにするかということについて,検討したことを御報告申し上げたい。
 現段階では,航空運賃が不明のため,派遣人員も未定であり,派遣者の人選に至っていない。
 派遣時期は日中航空協定に基づく直行便が飛ぶ今秋ということが考えられる。今後,外務省を通じて中国側に調査の趣旨を説明して,申入れを行い,必要な準備を進めていきたい。

福島会長

 次に前回総会の議事要旨の確認をお願いしたい。前もってお送りしてあるので,御覧いただいたと思う。御自分の発言について訂正箇所があったらお知らせ願いたい。(発言なし。)発言がないので確認したものとする。
 本日のこれからの議事の進め方であるが,大体の時間配分を申し上げてみたい。
 漢字表の具体的検討についての主査の報告及びこれに関連しての協議に約1時間,次の字体表に関する問題点等についての説明及び質疑応答並びに協議に約1時間,最後の今後の進め方について,残りの時間ということにしたい。できれば,これに十分時間を割けるように取り運びたいと考えているので,よろしくお願いしたい。
 4月26日に開催された前回総会以後,漢字表委員会が数回開かれ,検討が進められた。今後も検討をお願いする予定である。その概要については,「漢字表委員会における検討の状況について」という資料が事務局からお届けしてあるので,大体は御了承いただいていると思う。それでは岩淵漢字表委員会主査から30分ほどで報告をお願いしたい

岩淵主査

 前回総会後の5月10日に開催した第7回漢字表委員会で,漢字表委員会の中に,具体的作業をするための小委員会を設けた。そして,小委員会で検討した結果を漢字表委員会で審議するという形で進めてきた。これまでに,漢字表委員会を3回,小委員会を4回開いた。そこでの検討の経過を御報告したい。お手もとの「これまでの検討の経過」の中に,一々の漢字の検討に使った資料が一覧できるようにしてある。(1)は国立国語研究所が行った4種の語彙(い)調査である。(2)は森岡委員の「漢字の層別」に使われた明治以来の10種の漢字表である。
 以上の資料に出てくる漢字の総字数は約4,200字であるが,そのうち,使用頻度の高い順に,1,858字を詳細に検討した。全体4,200字中の半分足らずを検討したというところなので,8月中に2日ばかり,朝から小委員会を開いて検討を進める予定である。
 検討に当たっては,使用度数の観点からだけでなく,その漢字がどのような語を表すのに使われるかという観点からも審議した。その結果,話題になった漢字(主として,表外字。)を,人名に関するもの,地名に関するもの等18の問題点別に分類した資料を作成した。これが次の配布資料2「これまでの検討で話題になった漢字の問題点別分類」である。
 なお,話題として取り上げられた表外字221字については,これらを新しい漢字表に採用しなければならないと考えているものではない。問題点も漢字を選定する場合の考え方を明らかにするために分類して示したものにすぎず,今後これらの問題について考えていく必要がある。以下,18の項目について説明する。

1  人名に関するもの――ここに挙げてあるのは,従来の「人名用漢字別表」の中の漢字である。検討した1,858字のうちに,人名用漢字92字のうちの,42字が出てきた。いわば,割に使用度の高い人名用漢字ということができるかと思う。しかし,人名という観点から見ると,人名は時代によって多少違いがあるし,あるいは,話題が違うと出てくる度数などにも非常に関係があるので,人名に関する字を頻(ひん)度数だけでどうこうというわけではない。また,これらの漢字は,人名だけに使われているのであったら,人名という観点から見ていけばいいわけであるが,実はそれだけではなくて,例えば「藤(ふじ)」の字は,植物名として使われる場合もあるし,「葛藤(かっとう)」という言葉を構成する要素として使われる場合もあるのである。(「藤」のほか,「杉(すぎ)」,「鹿(しか)」(馬鹿(ばか)),「吾(われ)」(代名詞),「智(ち)」(才智(さいち))等の説明があった。)
 こういうわけで,人名用漢字も,単に人名に使われるというだけで片付かないで,普通の言葉を書き表すのにどの程度使われるかという観点から見てみる必要もあるわけである。
 なお,1の一番下の行の「人名だけに使われるもの」とあるのは,主として人名に使われるという程度の意味である。
2  地名に関するもの――これもなかなか問題があると思う。今までは固有名詞は別に考えるということで,地名に関するものは,国語審議会では取り上げられていなかったが,今期の総会でも都道府県名ぐらいは必要ではないかという意見も出たように思う。都道府県名に関するものとしては,今まで検討したものの中では,そこに挙げてある9字ばかりが出てきた。「その他」とあるのは,地名を表すと考えられるものを幾つか並べてみたものである。
 それから,この中に出てはいないが,「曾(そ)」の字も「木曾」,「曾根」,「曾我」というように姓とか地名とかに使われることが多いので,この中に加えておいていいものではないかとも思われる。

岩淵主査

3  地勢・地形に関するもの――これもかなり問題になるのではないかということで,この観点から見てみると,そこに挙げてあるような字が出てきた。
4  動植物名――当用漢字表の使用上の注意事項によれば,動植物名はなるべく仮名で書くことになっているが,動植物名を書き表す漢字は,当用漢字表内字にも幾つか出てきたし,表外字では1,858字検討した中に30字出てきた。しかし,これらの中には,動植物名として使われるということよりも,場合によっては,人名を表すということで使われることが多いものがある。例えば,「熊(くま)」は動物名として使われることよりも,人名,地名として使われる回数が格段に多いという結果が出ている。
 なお,植物名を書き表すものの中に,もう少し加えられるものがあるが,それらは,むしろ,植物名としてよりも,ほかで使われることが多いということで,他の分類に回してあるので,御注意いただきたい。
5  日常の実生活に関するもの――ここにはいろいろ雑多なものが入っている。我々の実際の生活に関係のある言葉を書き表す漢字を集めてみた。後に挙げてある「皿(さら)」などは,ここに入れておいてよいと思う。それから,「錠」は,「鍵」との関連で,表内字の例として挙げてみた。
 (ここで,配布資料2に使われている記号について説明があった。
 ・――「人名用漢字別表」にある漢字
 ・――「当用漢字補正資料」にある漢字
 ・漢字の右下の数字――25階段のどこに属しているかを示した数字。数字の小さいものは頻度数の高いもののグループに属する。)
6  尺貫法に関するもの――これは,表外字にはなく,表内字である。「坪」「升」「斗」などが,当用漢字の中に入っているのは,尺貫法が改められた現在,大きな問題だと思うが,一応拾い上げてみた。
7  身体の部分名に関するもの――ここに挙げてあるような字である。「脇(わき)」は,頻度数が割に高いが,裁縫用語として使われることが非常に多いので,15「特定の分野に多く使われるもの」の中にも入れてある。また,「両脇」というように,人体の部分名として使われると考えられるものと,その転義として「玄関脇」というように使われるものとの度数もかなり多いようである。
8  動詞・形容詞に関するもの――ここに挙げてある中で,多少問題になるのは,「嫌(けん)」である。これは,「嫌悪(けんお)」「機嫌(きげん)」とかいうように,「ケン」という音で使われ,また,「嫌(きら)う」という動詞でももちろん,「嫌(いや)」という読み方でも使われるものである。それから,この動詞の例の中に付け加えてよいと思われるものに「坐(ざ)」がある。これは,「坐(すわ)る」という動詞を表す例として見ることができる。表内字についても,このようなものはたくさんあるようであるが,少し問題になりそうな3字だけを比較するための例として出してみた。
 動詞の中で,語幹が一音節のものは,往々にして,仮名にすると読みにくいことが多いので,こういうものには,どんなものがあるかということで,挙げてある。この下に形容詞に関するものがあげてある。
9  代名詞に関するもの――この中では,「僕(ぼく)」の使われる度数が大変多く,当用漢字補正資料などにも加えられている。また,これは代名詞だけではなくて,「公僕」というような語を書き表すものとしても使われる。
10  連体詞・副詞・接続詞に関するもの――この中には,先ほど申し上げた「曾」も「曾(かつ)て」とも使われるので,加えておいていいかと思う。
 副詞として使われる字は,当用漢字表に中にも幾つかあって,そこに挙げてる。例えば,「暫」は,「暫(しばら)く」という言葉を書き表すものとして,使われる字であろうと思う。それから「但(たん)」も,もちろん「但し」という言葉を表す文字ということである。
11  形容名詞や助詞に関するもの――これには,「頃(ころ)」,「筈(はず)」,「於(お)」が出てきた。「頃」は,単独で「何々する頃」というように使われるほか,「手頃」,「年頃」というような言葉を構成する要素としても使われて,かなり頻度数は高いようである。
12  異字同訓になるもの――この中で,まず使い分けができると思われるものとしては,そこに挙げたような例がある。一方,使い分けがしにくいのではないかというものも数々ある。もちろん使い分けのしくにい字は,当用漢字表外字だけにあるのではなく,表内字にもないわけではない。
 それから,そのほか表内字と表外字とで使い分けるのが問題になるということもある。例えば,「はば」という言葉を書き表すのには,表内字の「幅」よりも,一般には表外字の「巾(きん)」の方が使われる度数が多いというようなことである。ただし,「巾」は「布巾(ふきん)」「雑巾(ぞうきん)」などと使われることも多いし,また,裁縫用語の「はば」を書き表すものとして使われることも多いようである。
13  当用漢字表で統合したと考えられるもの――「当用漢字表で統合したと考えられるもの」という表現が,果たして,当たるかどうか分からないが,恐らく,当用漢字表を作成したときに,音が同じで意味が似た字,あるいは,意味的に関連の深い字は,どちちか一方だけを取って,他方を捨てるということできたのであろうと考えられる。当用漢字表で一応捨てられた字が,かなり度数の高いところで出てくる。

岩淵主査

14  特定の語に使われることの多いもの――ここでは,例えば,「鹿」は,ほかの使い方もあるが,「馬鹿」として使われる度数が多いし,また「旦(たん)」は,「一旦」とか「元旦」とか使われる場合もあるが,「旦那(だんな)」として使われる度数が多いというようなものを挙げてある。そのほか,ほとんど特殊な言葉の場合だけにしか使われないであろうと思われる字を挙げてある。「披(ひ)」――「披露(ひろう)」,「勿(もち)」――「勿論」,「雰(ふん)」――「雰囲気」,「醤(しょう)」――「醤油(しょうゆ)」等である。こういう例は,表外字だけに限られるわけではなく,表内字にも例があるので,二つ三つ挙げてある。
15  特定の分野に多く使われるもの――「身頃」の「頃」という言葉は,ほとんど裁縫用語としてだけ使われるものだと思う。「袖(そで)」なども,一般の言葉としても使わないわけではないが,裁縫関係での使い方が非常に多い。表内字の「棋」は,「将棋」,あるいは,「日本棋院」という言葉を書き表す場合しか使われない字であろうと思う。
16  西洋語に当てたもの――「頁(ページ)」と「罐(カン)」とは,元来西洋系の外来語に対して漢字を当てたものと考えられる。
17  漢字の構成要素となるもの――例えば,「岡」は,「コウ」という音を表し,「鋼」の旁(つくり)として使われる。「云(うん)」は略字「伝」の構成要素として使われるものかと思う。
18  その他――これは,いろいろな分類の中に入れにくいものがあるので,ここに挙げてみた。「阿(あ)」は,「阿呆(あほう)」という言葉を書き表すのにもかなり使われているが,専ら,人名地名を書き表すのに使われている。「胡(こ)」は「胡椒(こしょう)」「胡麻(ごま)」「胡粉(ごふん)」あるいは「胡乱(うろん)」などと使われている。「曹(そう)」は,「曹長」「一曹」「軍曹」「御曹子」「法曹」とか使われる。それから「斐(ひ)」の頻度数が割に高いのは,「甲斐甲斐(かいがい)しい」(恐らく当て字であろう。)という使い方があるからだと思われる。そのほかの表字外としてはそこに挙げてあるようなものがある。表内字としては「お婆(ばあ)さん」の「婆」がある。これがあるのに,「お爺(じい)さん」の「爺(や)」がないのは,片手落ちだというようなことが前にいわれたことがあるが,これは古くは「産婆」という言葉もあったので,取り上げられたのかもしれない。そのほか「爵」とか「唐」(「唐」は,国名として使った場合もあるが,舶来とか外国のものとかいう意味で使う場合もある。)も出してみた。
 最後に参考資料として,昭和29年の当用漢字補正資料の追加したいとした漢字で,1,858字の中に出てきたものを挙げてある。「灯」を加えた29字中19字が出てきた。また削除したいとした漢字28字の中では,10字が1,858字の中に出てきた。例えば「附」(「付」で間に合うというので,省かれたのかもしれない。)「箇」(「個」で間に合うとして省かれたのかもしれない。)などである。

 以上,一つ一つの漢字を検討して,審議を進めていく間に,いろいろと問題になったものを一応分類して,それぞれに字を当てはめてみた。これから漢字を選定する場合には,これらの問題点について考えていく必要があると思われる。

福島会長

 ただいまの漢字表委員会の報告及び説明について,質問及び意見があったらどうぞ。(木内委員挙手。)木内委員どうぞ。

木内委員

 この資料に挙げてある表外字は221字となっているが,ここに示されている漢字の字数を全部加えると300字余になる。こうなるのは,重複して出ているものと表内字とがあるためなのか。つまり重複している字と表内字とを差し引くと221字になるということか。

岩淵委員

 そのとおりである。

木内委員

 今,表内字といった中には,人名用漢字は入っていないのか。

岩淵委員

 そのとおりである。(渡辺委員挙手。)

福島会長

 渡辺委員どうぞ。

渡辺委員

 問題点として,18項目挙げてあるが,これは一つの体系になっているのか。つまり,ある基準があって,こういう漢字を分類するときには,当然こういう体系で分類しなければならないというものなのか。

岩淵委員

 この分類は体系的にはなっていないと思う。それぞれの漢字を審議している間に,問題になったものを並べ立てたという程度である。ただいろいろな方面から漢字をながめてみるという意味で,むしろ次元の違う幾つかの分類が並べてあるといった方がいいと思う。

渡辺委員

 使用度数の多い221字だけを対象にして分類をすると,全体の体系のうち,特に肝心なところで問題を落としていないか懸念され,採用の視点が狭くなる心配があると思うがどうか。

岩淵主査

 特別に221字が問題になったが,比較の材料として表内字も多少入れてある。全体的にこういう観点で漢字を見てみる必要があるというものである。

渡辺委員

 そうすると,その他の表内字もこの分類のどこかに当てはまると考えているのか。

岩淵委員

 ほかには問題はなくて,これだけが問題であるというわけにはいかないと思う。内容上から見たり,品詞別に見たり,漢字の構成要素から見たりというようなことが,いろいろ混じってはいるが,これだけですべての漢字が分類し尽くせるとは考えていない。例えば,漢字一字で音読で使われる「栓(せん)抜き」の「栓」のようなものは,特別に考えてみるという観点もあるかと思う。

福島会長

 今後も引き続いて,漢字表委員会には検討を願うわけであるので,特に注文なり意見なりがあったら,発言願いたい。(木内委員挙手。)どうぞ。

木内委員

 これは,非常にいい研究だと思うが,資料に使われている調査には18年から24年も前のものがあり,いささか古いと思う。そのころは世間が新しい国語施策に追随し,賛成していた時代である。今同じ調査をやったら,非常に違ってくると思うか。

岩淵委員

 そういう点から話し合ったことはないので,分からないが,個人的にはそう違わないと思う。特に頻度数の高いところは違わないと思う。(小谷委員挙手。)

福島会長

 小谷委員,どうぞ。

小谷委員

 例えば「挨拶」(あいさつ),「馬鹿」(ばか)のような言葉が,どの程度普通に漢字書きされているか,あるいは仮名書きとして定着しているかを示す資料をないのか。

岩淵委員

 「現代雑誌九十種の用語用字」調査には,仮名書きの多い言葉については,仮名書きと漢字書きの度数が両方出てくるので,これを使えば比較できる。なお,現在国語研究所で印刷中の「新聞の語彙調査」もそういう資料として使えるものである。

福島会長

 漢字表委員会では,引き続き検討を進める予定であるので,今後もう少しまとまった段階で協議することになると思うので,ここで字体表の問題点等に移りたいと思う。
 前回総会では,字体表の問題について,遠藤主査から審議の過程の説明を伺って,次に国立国語研究所の林日本国語教育部長から,現行の当用漢字字体表制定の経緯等について説明を伺った。しかし,質疑応答などを願う時間がなかった。そこで,本日は,改めて遠藤主査から字体表の問題点等について報告及び説明をいただくことにし,特に字体表に関する具体的な問題点についてのアンケートに関して全委員の意見を伺ってみたい考えもあるようなので,このことについて説明をいただいて,次に林日本語教育部長から当用漢字字体表制定の経緯等について再度の説明を伺った上で,質疑応答に入りたいと思う。それでは遠藤主査どうぞ。

遠藤主査

 問題点整理委員会では,できるだけ全委員の字体に関する意見を取りまとめて整理し,それをいずれできるであろう字体表委員会に渡すことが仕事だと考えている。それで,総会だけではなかなか意見がまとまらないし,時間もないので,アンケート形式を採用させていただき,第1回目は既に行って,字体について全く自由に述べていただいた9通の意見を中心として整理して,前回総会に資料「字体表の問題に関する意見の問題点別分類」「字体・字体表の問題点(案)」として提出した。しかし9通の意見しかいただいていないので,できればもっと多くの委員の意見をいただきたいと思う。それで,ただ自由に答えろといっても答えにくい点もあるかと思い,「字体・字体表の問題点(案)」にある10ヶ条15項目を基にして,もう少し細かくした具体的なアンケート案を7月30日に開く予定の問題点整理委員会で作りたいと思うが,いかがであろうか。
 そして,7月の末から8月の初めに,そのアンケートを発送して,8月中にできるだけ多くの回答をいだたいてから,整理して,9月の総会に報告したいと考えているが,どうであろうか。
 本日は時間的な都合もあるので,「1字体表は必要か」「2字体審議の基本的な方向」というところを二つ三つ説明し上げ,大体こういう傾向でアンケートを作るが,細かい点については7月30日に開催予定の問題点整理委員会にお任せいただきたいということになるかと思う。
 「字体表は必要か」――字体表あるいは字体表に準じるものは,明治41年に最初のものが出てから8回,数え方によっては9回作られている。現在の当用漢字字体表は,昭和24年にできたものである。こういう点を考慮して,字体表の必要性をどう考えるかということを第1番目の質問としたい。
 なお,質問の順序は,別の重要性によるものではなく,便宜的にそうしてあるだけであるので,念のため申し添えておく。
 「字体審議の基本的な方向」――新しい字体表をもし作るとして,現在の当用漢字字体表をどう扱うのかという問題が必然的に出てくる。@現在の当用漢字字体表はそのままでよい,A改正すべきである,B基本的に考え直して,新字体表を作るべきである,というような項目を作って質問したいと思う。前回のアンケートの9通の意見の中でも,現在の当用漢字字体表そのままでよいという意見はなく,改定した方がよいという意見は2通あった。この二つの意見は,改定を希望してはいるが,必ずしも同じではなく,改定の方向に微妙な差異がある。一つは,もっと簡略化した方がいいという意見であるし,もう一つは,改定するしかないであろうが,もう少し系統的体系的に考えた方がいいのではないかという意見である。それから,全面的に検討したらどうかという意見が,4通出ているが,これまた微妙な違いがあり,全面的検討の方向が必ずしも一致しているわけではない。
 @からBまでの項目のほかに,更にもう一つ重要な項目が考えられる。それは,第1回目のアンケートの回答には,なかったことではあるが,もし新しい字体表を作るとして,新しい字体表の現行の当用漢字字体表のように「字体の標準を定める」という方向でとっていいのかどうかということである。
 「3字体を考える範囲」――9通の意見の中には,新漢字表に掲げる漢字の範囲でいいという意見,新漢字表外の漢字にも及ぼして,体系化するという意見,全くそういうことを別にして,別のもっと広い範囲で,考えるという意見などがあるので,これを基にした三つの項目を設けて質問したらいいのではないかと考えている。
 以上述べたような方向で,7月30日の問題点整理委員会でアンケートを作成して配布することを今日の総会で御了承いただければ,これを9月に整理して,字体表の検討についての基本的立場というようなものをできれば明らかにしたいと考えている。

福島会長

 問題点整理委員会でアンケートの案を作成して,全委員に配布し,回答をお願いすることについて,特に意見がなければ,さように取り運ばせていただきたい。(意見なし。)

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