国語施策・日本語教育

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次第 人名用漢字について(自由討議)

福島会長

 次の議題である,人名用漢字の問題に移りたい。国語審議会として人名用漢字問題について,態度をどう固めるかということは,新漢字表の決定とともに今期の終わりまで決めなければならないと思う。例えば,国語審議会として人名用漢字についてのコメントを述べるということで,終わらせ,今後は法務省にまかせるか,それとも国語審議会としてもっと本格的に意見をまとめるかといったようなことが考えられよう。前回以来いろいろ伺った御意見を,問題点整理委員会でもう一度整理していただいた上で,できれば次回総会あたりから,委員会の報告を得て,審議会の態度を固めるということになると思う。なお,人名用漢字問題その他について御意見をお聞かせいただきたい。

鈴木委員

 前回と前々回の論議では,人名用漢字の制限をはずした方がいいのではないかという意見の委員が何人もおられ,それに対して経済の点及び新聞の漢字のテレタイプの問題とかいろいろな点でそうもいかないという意見があった。簡単に言えば,制限に賛成あり,反対ありだと思う。
 ところで,現在,新聞には,中国の主に政治家の名前であるが,見たこともないような非常に難しい漢字が出てくる。劉少奇とか林彪とか毛沢東くらいならいいが,全然読めないものもある。日中復交が盛んになれば,ますます中国人の名前が新聞に出る。その場合に,人名用漢字は制限が必要だという考えに立つならば,日本人よりも中国人の名前を仮名で書くように今のうちに決めておかないと,現在の漢字テレタイプでは収容できないほどの膨大な漢字が,新聞という公器にどんどん出てくることになるのではないか。しかも度々申し上げているように,仮名も振っていないわけである。したがって,コミュニケーションの点からも,中国の人名は,今後仮名で書くことにした方がいろいろな意味でいいのではないか。中国人の名前が漢字だから制限をはずして使用するというのであったら,まず日本人の名前の制限をはずすべきであって,他国の難しい名前をどんどん新聞が取り上げることは,ちょっと承認できない。これは一体どういう原則で,どういう目的をもって行われているかを,新聞及び印刷関係の方々から具体的に伺いたい。

木内委員

 「新漢字表」の性格が制限ではなくて目安になった以上は,人名用漢字について何か述べないわけにはいかない。「新漢字表」の発表とともにそれらをどう扱うかということを正確に述べることは第一原則だと思う。そのときに「人名用漢字別表」「人名用漢字追加表」の漢字を「新漢字表」に組み込むことも考えられないことはないが,これは必要もないし,「新漢字表」の趣旨に反するので,絶対にいけないと思う。
 したがって,「人名用漢字別表」「人名用漢字追加表」はそのまま残るが字数を加えるべきかどうかという問題がある。しかし,字数を加えるよりは,これも制限ではなくて一種の目安だということを述べておけば,それでもう十分である。「人名用漢字別表」等にない字の名前をつけてはいけないというものではないわけで,○だの△だのという記号であって,文字でないものは戸籍係で受け付けないということでいいと思う。(この言葉がいいかどうかは別として。)つまり,正しい日本の文字と認められるものの使用なら自由であっていいということを断れば,それですべて解決すると思われる。「新漢字表」を発表する際,その前文の中に,関連事項として人名用漢字についての国語審議会の見解を示せばいいだろうというのが私のまとまった意見である。

福島会長

 いずれ委員会で整理していただいた上で,今期中の総会において,この問題の態度を決めるようにしたいと思う。
 先ほど鈴木委員から御質問のあった中国の人名問題であるが,御承知の方がおられたら,御回答いただきたい。

楓委員

 正確なことは知らないが,非常に労力を払って,例えば「」という字は,わざわざ「耳」を小さくして活字をつくる。そのために締切りが遅れたりする。有名な人であると,あらかじめ活字をつくってあるので,最初の段階で「げた」をはかせたものに一々はめ込む。中国の人名に関して今後仮名書きにするという方針を,新聞社の経営者あるいは放送その他関係方面で決めていただければ,こういう面倒なことはなくなる。しかし現在は仕方なしにその字を作らせているために,多くの経費がかかっていると聞いている。

福島会長

 更にこの問題は調べておきたい。

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