国語施策・日本語教育

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次第 外来語表記委員会の審議状況について(報告)

坂本会長

 格別の御発言がないようであれば,今申し上げたようなことを前提に,御承認いただいたということにして,本日の議題に入らせていただきたいと思う。
 前回の総会以後,外来語表記委員会は3回開かれ,引き続き自由討議の形で,外来語の表記の問題を巡って,いろいろ御熱心に御検討をいただいたようである。
 実は,先日11月30日に運営委員会を開催して御相談したことであるが,本日は林主査から審議状況の御報告を伺い,その後,協議に入りたいと考えている。今後の外来語表記委員会の審議の進め方などについても,お話しいただけると思う。
 それでは,林主査,よろしくお願いする。

林(大)主査

 9月以降の外来語表記委員会の審議状況について,御報告を申し上げる。
 ただいまお話があったように,3回にわたって自由討議を行ってきた。全く自由討議のままであり,決を採るというようなことは全くせず,問題点の整理,枠組みの設定というようなことを試みてきた。その際,所属外の委員からお寄せいただいた御意見,11名の方からの御意見があったが,一々細かくお書きになっておられるのをそれぞれ拝見させていただき,委員会の席上で検討の材料にさせていただいた。
 その3回の自由討議の結果について,ただいまお手元の資料にまとめてあるので,それに沿ってこれから御説明をいたそうと思う。題は「外来語表記委員会での討議の概要(その2)」とあるが,「その2」というのは,7月の総会で同じ題で御報告をいたしたものを「その1」として,今回のが「その2」である。
 ここでは,1から7まで7項目に整理してあるが,1から6までは7月の御報告のとおりである。私の理解ではちょっと順序が違っており,例えば,5は「外来語の表記についての取決めをすることについて」,6は「氾濫の問題について」ということであるが,これらは私どもが表記委員会で外来語の表記の問題を討議する前提となるようなものである。
 1は,外来語とは何か,外来語と外国語というものをどういうふうに考えるかという問題。それから,それにつけて地名・人名の表記の問題が2である。それから,3よりはむしろ4の方が先かとも思うが,外来語の表記には,現在,慣用がゆれているものがあるが,それについてはどう考えるかという問題。そして4番目が外来語の表記の実は本体になるところではないかと思うが,どのような表記原則を立てるかということの方針について,皆様方の御意見を伺ったわけである。
 以上,6項目であるが,その順は,7月以来,また自由討議の際にも,この順序でこの番号でお話を進めてきたので,今日もこの順序で1番から6番へと進めたいと思っている。さらに,7番はその他ということで,これも考えておかなければならない問題としてここに付記してある。
 まず1であるが,「外来語とは何か,どのようなものを取り上げるか」ということについて,また改めて討議をしたわけである。
 (1)は,外来語の定義や,外来語と外国語という二つの言葉の区別については,いろいろな考え方がある。しかし,我々が当面考察の対象とするのは現代語中心の小型国語辞典──7万とか8万とかを入れている小型国語辞典,それに片仮名で外来語として採録されている,そういったような語と考えてもいいのではないかという御意見が出ている。
 小型国語辞典にどれくらい載っているかというと,印刷資料がお目にかけてあると思うが,約6,000語ということである。問題点を検討するための素材として,これを一応上限としておいて,これより詳しくたくさんの語を取り扱うということは必要がなかろうということがある。6,000語は多いので,もっと対象を絞る方がよいという御意見も出ている。
 (2),片仮名で書く場合を対象とし,アルファベットやローマ字つづりで書かれている語の取扱いの問題については,外来語の表記ということでは対象外とするという方向が出ている。皆さんのお考えは大体そうではないかということになっている。これは,片仮名で書くものを我々は問題にしよう。アルファベットで書くものというのは,近ごろの「JR」とか,株式会社を「KK」と書いたり,「3DK」と言ったり,古いところで言えば「ビタミンA」とか「ビタミンC」とかいうのも入ると思うが,そういったものである。それからローマ字つづりで日本語を書くときに,外来語というのか,外国語というのか,例えば電車の停車場の名前に「たまプラーザ」というのがあって,ローマ字書きのところには「プラーザ」が原つづりで書いてある。それから,「何とかセンター」というのがあるが,ローマ字書きにすると,そこが原つづりで出てくる。「何スクール」というのもそんなふうになって出てくるということがあるが,そういう問題については,一応ここでは対象外にしておこうという方向が出ている。しかし,それは問題だということの御指摘はあるわけである。
 (3),和製外来語(和製洋語)というものも対象に含める。例えば「オフィスレディー」というのは日本語だそうで,アメリカやイギリスでは使われていない言葉のようである。また,例えば,「リヤカー」とか「ハヤシライス」というのもそういうことになる。日本語としてできた外来語を種にした語である。これも,海を渡ってきたわけではないが,ここでの問題になるという方向が出ている。略語形も,例えば「マルティプルチョイス」を「マルチョイ」と言ったり,「マスコミュニケーション」を「マスコミ」と言ったりするような略語もその仲間に入るだろうと思う。これも対象に含めるという方向が出ている。
 それから,2は「地名・人名の表記の取扱いについて」。
 (1),地名・人名の表記についても取り上げる必要があるという意見が多く出されている。これは取り上げるという方向で考えていいのではないかと思われる。
 (2),取り上げるとして,取り上げる手順についてはいろいろな御意見があり,例えば次のようなものがある。ここにはア,イ,ウ,エと4項目挙げてある。

林(大)主査

 アは,一般の外来語と一緒に,あるいは並行して取り上げる。区別しないで,あるいは並行して取り上げる,こういう御意見。別に小委員会を作ってはどうかという御意見もあったわけである。これは一緒に,同時にということになろうか。
 イの方は,まず一般の外来語について取り上げて,地名,人名は後回しにしようというお考えもある。
 ウは,一般の外来語についてまず取り上げるが,その際,地名・人名については全く考慮の外に置くというのではなくて,ある程度考慮しながら進める。どうしても地名・人名の問題が絡んでくることがあるだろうから,それは後回しにすると必ずしも決めないでもよかろうという御意見だと思う。
 エは,一般の外来語について検討して,そこで音節表──片仮名で書くとして,仮名をどういうふうに用いるかという一覧表である。それを作っておけば,地名・人名の場合にもそれを当てはめることができるのではないかという御意見である。
 音節表というのは何かというと,現代仮名遣いのときに仮名の表が一番最初に載っているが,ああいったようなことになるわけで,音韻と音節との対照をさせるということになると思う。これは29年の外来語の表記についても,そういうことがなされているわけで,この点については後で第4の項目でも触れることになると思う。
 (3),地名と人名について,地名・人名は後にするか,一緒にするかということを申したが,一般の外来語と別にしたときに,地名と人名を別にするかどうするかということであって,地名を先に取り上げる方がいいという御意見が多く出ている。しかし,両者を同時に取り上げていくこともできるのではないかという御意見もある。いろいろ御意見が出ているわけである。
 (4),地名・人名について,それぞれどのようなものを考察の対象とするかということについては,例えば地名については人口何万以上の都市などというような,ある線を限るというような具体的な御意見も出ているが,これについてはまだ十分お話合いができていない。
 次に(5),漢字国(中国・韓国等)としてあるが,従来その国で漢字が使われていて,日本でもその国の地名・人名を漢字で書いていた,そういう国の地名・人名について,その国の原音,その国の発音によって片仮名で書くということになったときのことを何らかの形で取り上げる必要があるという御意見が出ている。簡単に言うと,「チョン・ドゥホアン」と言ったり,「ノ・テウ」と言ったりするような,あれは原音そのままではないだろうが,原音によって片仮名で書いており,我々も放送でそれを聞いている。そういうことについても,何らかの形で取り上げる必要があるとする御意見が出ていると同時に,それは取り上げなくてよいという御意見がある。取り上げる場合でも,後回し,または別の機会にするのがよいという御意見も出ている。
 また中国の場合と韓国の場合とは別に扱う方がいいという御意見も出ている。これは国際的な関係があって,中国人の感じ方と韓国の人たちの感じ方とが大分違うらしいということがある。中国の人は漢字で書いておいてくれればそれでいいので,それを中国流に読もうと日本流に読もうと余り大して問題にしないようであるが,韓国の場合には,韓国読みにして,片仮名にしてほしいという気分であるようで,今も報道関係では「キム・デジュン」とか「ノ・テウ」とかいうふうに言って放送しておられるわけである。中国などでは,必ずしも「ケ小平」を「ドン・シャオピン」とか何とか言わなくてもいいようであるが,そういうふうに多少事情が違うことがあるんじゃないか,別に扱った方がいいんじゃないかという御意見も出たわけである。
 以上,地名・人名については,どういうふうに取り扱おうかということを決めたわけではなく,こういうふうに,いろいろな御意見が出ているということである。
 次に,3の「外来語の表記における慣用のゆれについて」。
 (1),慣用が固定してしまっているもの,ほかに書きようがない,ほかに言いようがないというものは,それを尊重する。改める必要がないという方向でいいのではないか。これは問題にすることもないくらいであろうかと思う。
 慣用というのは,例えば,「ワイシャツ」というのは,「ホワイトシャツ」だから,「ホワイトシャツ」としなければならない,そんなようなことを考える必要はないので,これは決まっているではないか。それから,私,技術のことは分からないが,土木工学か何か,そっちの方で何か測る機械,物差しのことか,「スクエア」を「スコヤー」と言っており,それは学術的にも定着している。それをわざわざ原音と違うからといって直す必要もなかろう。そういうものがたくさんある。「コーヒー」もそうだし,「ブラジャー」もそうだし,「フライパン」とか「デッキ」というものもあって,それを一々考える必要はなかろうということである。
 問題としては,例えば,「ビタミン」は慣用が固定しているかどうか。私は固定していると考えていいと思っているが,「ヴィタミン」にしなければならないかどうか。もし「ヴ」を採用するとしたときに,これをどうするか。「テレホンカード」というものがあるが,「ホン」で通っているのではないかというようなことであるが,固定していれば改める必要はない。
 (2)は,慣用が固定しないで,ゆれているものの扱い方。ゆれているというのは,「バイオリン」と「ヴァイオリン」,「キャンデー」も「キャンデー」と言ったり,「キャンディー」と言ったりしてはいないか。また難しくなると,「ビールス」と「ウイルス」といったような問題がある。また,「ヴィールス」もある。それから「データ」と言う人と「データー」と言う人とがあるが,これもゆれているんじゃないか。それから「リポート」と「レポート」というようなことがある。
 そういうものについてどうするかと言うと,ア,イ,ウ,エ,オというような御意見がいろいろ出ており,やはりこれは余りゆれていない方がいい,統一を目指す方がいい。これは「目指す」ということであって,表記のよりどころとして,目安として一つを採用するという御意見と思う。
 イは,統一することが今回の審議の目的ではない。けれども,複数の語例を示す場合には,「バイオリン」もあれば,「ヴァイオリン」もあるというふうに,どちらかを第1,どちらかを第2のように順位をつけておくことがいいのではないかという御意見である。これは,かつて送り仮名の付け方を決めたときに,本則と例外,それから許容という三つの決め方をしているが,そういうことが参考になるということであろうと思う。

林(大)主査

 ウは,ゆれている場合に,どちらかを採るとすれば,なるべく原音に近く表記する方を第1にしておこうという考え。
 エは,どちらかといえば国民一般に行われやすいように,なるべく平易な方を採ろうという方向,扱い方があるという御意見である。
 だから,ウとエは,ある意味では矛盾するが,ある意味では同じレベルで考えられるということかと私は思う。
 オは,発音や語形にゆれのあるもの,「バイオリン」のようなものは,それに応じた表記をどちらも認めておくという立場をとる。これは第1,第2のようにしないで,どちらでもいいということにする立場である。こういう御指摘もあったわけである。
 さて,次の紙の(3)であるが,これは分野による慣用の違い。分野による慣用の違いがあって,例えば放送や新聞などの場合と学会での慣用とが違っている場合がないわけではない。音楽の方は「ヴ」をしきりに尊重されるが,報道界の方では一応29年の報告に従って「バ」の方を使っておられるといったような,慣用の違いがあるものがある。学問分野は別としても,それぞれに認めておくという意見,それから可能な限り,やはり統一への協力が望まれるという御意見が出ている。
 以上が表記のゆれに関する御意見である。
 4は,「外来語の表記について,どのような表記原則を立てるか」であるが,(1),外来語は片仮名で書くことを原則とするかどうか,こういう問題が初めから出してあったのだが,これは前提として,現在の国語の文章の表記が,漢字と平仮名とを交ぜた漢字平仮名交じり文であるが,その中で,どういうふうに外来語を表記するかという問題である。そのときにもちろん外来語も,「護謨」(ゴム)とか「瓦斯」とかいうふうに漢字で書くんだということも言えば言えないわけではない。また,平仮名で書くということも考えられないわけではない。
 殊に,いろいろな名前を付けるときなどになると,最近,私の気付いた例では,心理学会の各学会の連合体の連絡雑誌,連絡報が「さいころじすと」というふうに平仮名で題目が付けてあった。そういうような場合もないわけではない。それから,先ほど「プラーザ」とか「センター」とか申したが,ローマ字で,原語のつづりで書くことだってないわけではないが,我々としては,やはり外来語は漢字平仮名交じり文の中では,片仮名で書くことを原則にするという考え方が出てくる。ただ,「原則とする」という言葉を使っていいという御意見と同時に,そんなことは言わなくてもよいという御意見も出ているわけである。
 そして,現在,漢字仮名交じり文の中で外来語を片仮名で書くという習慣が一般的になっていると認識されるわけで,その現実の上に立って,片仮名で書く場合のことを我々は問題として取り上げて,考えていけばいいのではないかという御意見もあるわけである。
 (2),新しい仮名の考案についてであるが,これは必要がないという意見が多く出されている。これは,例えばLの発音を表すために,ラリルレロという片仮名に丸を付けたらどうだという考え方があるわけである。従来,個人的にはこういうことをした人もないわけではないが,一般的ではない。これを採用するかということである。
 それから,TとかDとかいうものの発音を表す特別の符号を,いつでも「トゥ」とか「ドゥ」とか「ティ」とか「ディ」とかいうふうに書かないでいいように,もし少し簡単に書けるような字を案出してはどうかという意見──これは具体的にはおっしゃった方はなく,私が申したのだが,そういう新案については,必要がないという御意見の方が多いように承った。
 (3),つなぎの符号。ここには「・」になっているが,必ずしも「・」とは限らず,つなぎの符号についてはどうか。こういうものも,我々の表記の問題としては考えておく必要があるだろうということであるが,外来語の表記の中で取り上げるべきだという意見のほかに,それは慣用を尊重すればいい,ケースバイケースでよい。外来語の表記だけの問題ではないから,別に考えるべきだ等の御意見が出されている。
 これはやはり片仮名で書くと長くなる。長くなるところで,言葉の切れ方と,そしてまた一つの語であるという印象をはっきりさせるためには,何らかの手当てが必要であるということから,つなぎの符号の御意見が出ているわけである。
 例えば,ここにある「ケース バイ ケース」も,一つの語として外来語にするとすると,これは1字か半角空けてあるが,ここへ何か印を入れておけば,これが一つのものだという印象が出る,こういうものである。例えば,「エス オー エス」というときに,「エス」と「オー」と「エス」との間に何かを入れるかどうか。それから,長くなると,「スタートライン」の中に何か入れるかどうか。もっと長くなって,「コンピューターシミュレーション」という言葉になると,これは中に何か記号があった方が,全体として読み取りやすいとか,分かりやすくなるとかいうことがあるかもしれないという問題である。これは委員会の自由討議ではただいま申したような御意見が出ているということである。
 (4),音韻と表記の関係については,音韻の区別が可能なものは区別する方がよいという意見が出ている。現代の日本人にとって,区別できる音韻は区別した方がよかろうと。そこで問題は,ラリルレロの「R」と「L」の区別が日本人として可能かどうかという問題とか,「TH」と「S」の発音がどうであるかということに関連するわけである。
 ここでは例として「シェ」と「セ」,「ジェ」と「ゼ」。「シェパード」と言うか,「セパード」と言うか,「ジェット機」と言うか,「ゼット機」と言うか,これはちょっと混乱が起こるが,「リージェントスタイル」と言うか,「リーゼントスタイル」と言うかといったような問題,これが音韻の区別として可能かどうか。それから,「ファ」「フィ」「フ」「フェ」「フォ」と「ハ」「ヒ」「フ」「ヘ」「ホ」,これも音韻の区別が可能になってきているのではないかということがある。それから,「ティ」と「チ」,「ディ」と「ジ」といったようなものも,音韻の区別が可能になっているんじゃないか。それで区別する方がよいという意見が出ている。それでヴァ行については,バ行と区別する方がよいという意見と,バ行で代用させる方がよいという意見,両方のお考えがある。この辺が一つ大問題になるかと思うわけだが,こういう御意見である。音韻の区別が可能かどうか,それをどう考えるかという問題だと思う。
 (5),外来語の表記というのも全くの表音主義ではなく,語意識の上からの書き分けがあってもいいのではないか。その意味で,「ヂ」,「ヅ」などの復活についても検討すべきだという御意見も出ている。これは現代仮名遣いの決め方と関連してくる。
 以上は具体的な問題であるが,(6),国語審議会として,外来語の表記について表記原則を立てていくとか,結論を出すについて案をまとめる形式についても御意見が出ている。

林(大)主査

 一つは,これは昭和29年の報告と同様な形において,まず音韻(仮名)表,それから原則,語例集といったような組合せで案をまとめるという見通しをお述べになった御意見がある。
 それから,音韻と仮名表記との対応を決めるという基本的な作業だけをすればいい。結局,アの(1)の音韻表を決めるということに中心を置けばいいのであって,個々の語の書き表し方を決めるところまで立ち入らないでもよいのではないかという御意見もあるわけである。
 ただ,慣用をどうするかとか,例外的な規定をどう考えるかということになってくると,個々の語の書き表し方もあるいは問題になるのではないかというのがウである。
 以上が,表記原則に関する御意見。
 5は,「外来語の表記についての取決めをすることについて」。これは,先ほど申したように,非常に基本的なというか,前提的な問題である。
 (1),我々は大臣から外来語の表記について御諮問を受けたわけだが,そこで外来語の表記について,やはり送り仮名とか仮名遣いとかと同様に,ある程度の目安を立てる,取決めをすることは必要だという御意見が多く出されており,何も決める必要はない,自由に書いていればいいんで,外来語はほうっておけばいいという積極的な御意見はなかったといってもよろしいかと思う。
 (2),取決めをすることは必要だという御意見の中でも,取決めの規範性については,やはり目安,よりどころという従来の「常用漢字表」,あるいは「現代仮名遣い」の考え方,それでよいのだという御意見が多いようである。
 (3),それから,取決めをしたとして,この取決めをどういう分野で使用してもらえるかという,対象分野の問題である。それはやはり「常用漢字表」や「現代仮名遣い」と同様に,法令,公用文書,新聞,雑誌,放送などの一般分野とするという御意見が多く出されている。
 6は,「外来語,外国語のいわゆる氾濫の問題について」である。
 (1),ここではもちろん先ほどの「JR」とか「NTT」とか「OL」といったようなものも含めて考えることになると思うが,必要以上に使うことは望ましいことではないというぐらいの記述はあってもよい。それから,無思慮に外国語を使用することには国語審議会として苦言を呈してもいい,こういう何らかの言及があってもいい。諮問は表記の問題であるが,氾濫の問題についても何らかの言及があってよいとする御意見が出ている。
 一方では,(2)のとおり,これは良識にまつべき問題であって,国語審議会としては取り上げる必要はない。好みの問題について是非の意思表示を国語審議会がするというのはよろしくない,というような,この問題は審議の対象外であるという御意見も出ているわけである。
 (3),表記委員会としては,この問題は表記委員会ではなくて,総会の問題とすることが適切であろうと皆さんお考えのように伺っている。これは総会でどのようにお考えになるかを待とうということである。
 7は,「その他」で,附帯的な問題であるが,ここにも重要な問題はあるわけで,取決めをするとか,ある種の考え方を述べるということになった場合に,それが学校教育にどういうふうに関係していくであろうか,学校教育との関連,それから外国語教育との関連がある。例えば原音主義,なるべく外国語の発音に近いようにといったときに,それを片仮名で書いていることが,あるいは外国語教育に対してどのような影響を与えるであろうか。そういう点を一応考慮する必要があるかもしれない,こういう問題がある。
 それから,国際化との関連。外国人が日本語に対して非常に関心を高めているが,そのときに,例えば日本語教育,日本語学習者の問題として,日本人がたくさん使っている片仮名外来語というものをどういうふうに考えていったらいいかという問題が,一つは日本語教育の技術的な問題として出てくる。こういうことも問題としては考えられるが,これらについてはまだ十分に表記委員会ではお話合いをしていない。
 以上7項目にわたって,表記委員会が今日まで進めてきた状況を御報告した。
 なお,この総会でいろいろまた御意見を承ることができると思うが,今後は,まず12月15日に表記委員会を開き,具体的な語例を眺めながら,問題点の所在を具体的に探っていくという作業を試みる予定である。それについて,外来語の表記を検討する枠組みを決めていかなければならないので,若干の項目についてはまたアンケートの形で全委員の御意見を伺いたいと思っている。多分1月に,アンケートをさせていただくことになろうかと思う。そして,第5回の総会が来年3月ごろに予定されているので,その際には,その間の表記委員会の審議状況とともに,アンケートの結果についても御報告をさせていただくことになろうと思う。
 それから,具体的な問題を取り上げて細かく考えていくためには,作業グループとしての小委員会の設置ということが初めから考えられていたわけであるが,まだそこまで具体的に取り運ぶわけにはまいらないと思うので,小委員会の設置は明年の4月以降と一応考えておくことにしている。
 以上で一通りの御報告とさせていただきたいと思う。

坂本会長

 お時間の都合で御退席になる方もおいでになるようであるが,寺島委員,格別,御質問等はないか。

寺島委員

 アンケートにもお答えしているので,特に質問はない。

坂本会長

 それでは,林主査の御説明に対して,まず,御質問をいただきたいと思う。

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