国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 その他

坂本会長

 どうもありがとうございました。
 おかげさまで,無事報告を終えることができた。一昨年の9月に発足したのがついこの間のことのように思うが,過ぎてみると早いもので,これで第19期国語審議会としての任務を終えるわけである。
 皆様におかれても,いろいろと御感想がおありだと思う。きょうはまだ時間が残っているので,この際,御発言をいただきたいと思う。次期以降の審議についての御要望のようなことでも結構である。それは記録にとどめて,後日の参考にしていただけると思うので,ひとつ積極的に御発言いただけたらと思う。よろしくお願いする。

林(大)主査

 一言ここで,ごあいさつをさせていただきたいと思う。
 この数年間,問題点整理委員会の仕事をさせていただいたが,私は誠にふつつかで, こういう取りまとめをするには自ら非常に不適当だと思っていたわけだけれども,委員会の皆様方の御熱心な御参加により,どうやら今日お目に掛けるようなものにまとめさせていただいた。それについては,総会の皆様方のいろいろな御意見も十分に取り入れたつもりであるけれども,今日御了解をいただいて,誠に有り難く思っている。
 また,会長,副会長からは適切な御指示があって,特に副会長は委員会の席に毎回おいでいただいて,お導きをいただいたわけである。
 それから,これをまとめるについては,文化庁の当局の大変な御尽力があり,大変有り難かったわけである。
 ここに一言ごあいさつをさせていただきたいと思う。
 どうもありがとうございました。

坂本会長

 そのことは私が言うべきだったのだが。(笑)
 せっかくの機会であるから,この次の審議会でどういうことをテーマとしたらということも含めて,ひとつ忌憚(たん)なく御自由におっしゃっていただけたらと思う。いかがか。
 山川委員はどうか,放送番組のベテランとして何か。

山川委員

 私がNHKに入った時に,アナウンサーの養成所というのがあって,3か月,偉い先生方のお話をいろいろと伺ったのであるが,その時に土岐善麿という人が見え「おまえたち,変なことを言ったら承知しないぞ。」みたいなかなり怖い感じで,私たちは震え上がって,国語というものは難しくて,権威があって,大変なものだなと思い,ぴりぴりしたのだが,それから38年たって,まさか自分が国語審議会の委員に指名されるとは夢にも思わなかった。
 38年前から比べると,随分優しい審議会になったという感じがして,心優しい人々のお集まりで,私は出席するたびに心が和んだものであるが,その内容にふさわしい答申におまとめいただいた先生方に,本当に御苦労さまでしたと申し上げるとともに,次回はもう少し平易な言葉で表現するような答申案というものが出てもいいんじゃないかと思う。国語というのは,怖いとか,難しいとか,大変だとか思わないで,楽しく,日本の国語というのはすばらしいな,いいなとみんなが思うようになるよう,私は教育の方々にもお願いしたいし,私たちも放送でそうしなければいけないと思っている。
 こういう文書一つにしても,新聞紙上で見たり,テレビで発表されたときに,国語審議会ではこういうことをやっているんだな,面白いなというふうな,分かりやすく自分たちのこととして伝わる,そういう答申であってほしいと思う。

坂本会長

 ありがとうございました。

鈴木文部政務次官

 差し出がましいようだが,主査から文化庁のサポートに対してお褒めをいただき,また,今の山川委員のお話を伺って,皆様に一言お願いがある。
 文化庁は国語問題の担当として一生懸命やっていると思うが,いかんせん役所というものは役所の伝統と体質の限界があって,例えば今山川委員からお話があった「平易な言葉」などというものは,およそ霞が関には似つかないテーマであり,むしろ民間の先生方から厳しく日常感覚で御注文をいただくことが,私は役所にとって一番大事なことだと思っている。
 役所も全力を挙げて取り組むつもりであるけれども,今後ともびしびし御指導いただければとお願い申し上げる。

坂本会長

 ありがとうございました。ほかにどなたか御発言はないか。まだ時間もあるので,せっかくの機会であるから,ひとつ……。俵委員などはいかがか。

俵委員

 この2年間参加させていただいて,私自身,本当にいい勉強になった。いい意味で言葉にうるさい方々がお集まりになっていて,その議論を聞くだけでも毎回大変わくわくするものがあった。
 私は一番若い委員ということで,入ってしまってから,大変なものをお引き受けしてしまったんだなということに気が付いた。国語審議会委員ということで,座談会とか,対談とか,様々なところに引っ張り出され,「今,法律の言葉でこんなことが問題になっているのだけれども。」とか,「小説の世界ではこういうことが問題になっているのだけれども。」というような,そういう機会がたくさんあって,そのたびに自分は勉強になったなという感じである。
 今,改めてこの苦労の結晶と言うか,報告を読んで,何か未来に向かって開かれているという感じがした。情報化社会のことやワープロのことや外国人が日本語を学ぶことなどは,今までにはなかった問題だと思うけれども,これからどんどん大きな問題になってくる。そういう未来に向かっての答申だなという感じがした。
 ただ,私も古典の教師をしていたので,改めて読み返してみたときに,過去の遺産にもう少し触れて,何か伝えていくという感じを自分なりに強調した発言ができたらよかったかしらというふうな思いも,自分の中の課題として残ったような感じがする。

坂本会長

 ほかにいかがか。せっかくの機会なので,どうぞ御遠慮なく活発に御発言いただけたらと思う。
 放送側からは山川委員が,また,役所側を代表して政務次官が御発言になったけれども,それはそれとして,これだけ新聞関係の方がおいでになるのに,何もおっしゃらないという手はないんじゃないかと思うが,いかがか。辰濃委員,いかがか。

辰濃委員

 今回,こういうように,ちょっと立ち止まって諸問題を振り返ってみたということは大変意味の深いことである。私どもも,もやもやしたものがたくさんあったわけなので。
 例えば交ぜ書きの問題一つにしても,毎日毎日記事を書いていながら,腹立たしく思う,いらいらする,これは何とかならないかと思っているわけである。また片仮名言葉の問題でも,自分たちで使いながら,これは何とかしなくてはならないと思っている。だから,ここで問題点として,交ぜ書きとか片仮名言葉にはかなり問題があるんだということを明確にしたということは,大変意味の深いものがあった。次回からは,これを力のあるものにしていったらいかがだろうか。
 例えば,交ぜ書きを減らすためには,振り仮名もあるし,易しい言い換えもあるけれども,やはり常用漢字を増やさなくてはならぬ。常用漢字プラス準常用漢字でも何でもいいが,そういうものを持っていかないと,どうしようもないんじゃないかという気がする。
 片仮名言葉の問題は,私,前回もここで申し上げたと思うけれども,この「報告」にも「官公庁においては新奇な片仮名語うんぬん」とあるけれども,新奇であろうと新奇でなかろうと,片仮名言葉は原則として使わない,日本の美しい言葉がたくさんあるわけだから,日本の言葉に言い換える。特に公文書の場合は,新聞ももちろん反省しなくてはならないけれども,これは非常に厳しくやっていかなくてはならない。そのためには公文書をチェックしていく機関があればいいと思う。
 とにかく,今の白書を見ていると,腹立たしくなることがたくさんある。白書の問題は片仮名言葉だけではないが,これはどうにかしなくてはいけない。次回の審議会で集中的に,もう少し力あるものにしていったらいいんじゃないか。
 それから,ここにも盛られている方言の問題だが,方言の問題というのは,私たちがこれからの美しい国語を考える上で大変重要な問題であって,方言の辞典のことや,各地域で日常の暮らしで使われている言葉をきちんと保存すること――もう既に日常使われているわけだから,保存する必要もないけれども,こういう時代だと,新聞,テレビが浸透していくに従って,それに反比例して,美しい言葉や言い回しが失われていくので,これは何とかしなくてはいけないと思っている。
 次回でまたたくさんの問題が出てきて大変だと思うけれども,そんな雑駁(ぱく)な感想を持った。

竹田委員

 特に,この報告書の第2の「現代の国語をめぐる諸問題」ということについて,感想を述べさせていただく。
 国語の問題というのは,言語環境の問題が非常に大きいと思う。私,大学の教師をしているけれども,次回以降,国語教育――国語教育というのは,何も児童・生徒に対する国語教育だけではなくて,先生,特に教員養成大学における国語教育という問題について,なお一層御考慮いただけたらと思う。
 御承知のとおり,国際語としての日本語と言うか,日本語教育という面では,新しい視野で,新しい分野が切り開かれつつあると思うけれども,日本人に対する国語教育という点で,原点にさかのぼると言うか,突き詰めて考えていってはいかがかと思う。
 特に,教員養成大学において,国語科の教員養成だけではなくて,数学であろうが,社会科であろうが,理科であろうが――何も先生になる人みんながNHKのアナウンサーのようなきれいな標準語を話すということではなくて,先生になる人たちに国語に対する認識を深めていただく。そういう大学における教育をどこかできちんとやっていただくことを考えて,そして児童・生徒に対する目に見えない影響力というものを養っていくような,そうい心掛けが必要ではないかと考えて,一言,感想にすぎないけれども,言わせていただいた。

坂本会長

 これは文化庁,文部省の問題にまでかかわる大変重要な御指摘かと思う。
 ほかに何か御発言はないか。

石井委員

 自戒を込めて恥を申し上げるけれども,これは記録にとどめられると本当は困るので,うちの新聞なのだが,某新聞というふうに御理解願いたいと思う。数日前に,琢磨ちゃん誘拐事件が起きた。犯人は捕まったけれども,その時の社会面の書き出しに,お母さんが帰ってきた琢磨ちゃんを抱きしめて,琢磨におなか一杯おっぱいをやりたいという発言をし,某新聞の大阪の記事はきちっと「おっぱいをやりたい」となっていた。それが東京ヘ来ると,それを再編集して書き直すというリライトの作業があったと思うのだが,その時に,その表現は「琢磨におっぱいをあげたい」というふうになってしまったのである。
 私,テレビを見ていたら,広江さんというお母さんは,きちっと美しい日本語で「おっぱいをおなか一杯やりたい。」とおっしゃっていたんで,見事な日本語だなと思って感心していたのだが,それが新聞の活字ではそうなってしまったというので,私はすぐに厳重に我が編集局に注意した。
 この問題,つまり,「金魚にえさをあげる」というような表現の問題は,すでに若い記者,若い人たちの中では許容範囲なのだろうか――この場合は,事実を間違ったんだから,いけないけれども,ここまでひたひたと波が来ているんだな,次の国語審議会では,美しい,正しい日本語というのは難しいわけだけれども,美しい表現,正しい,きちんとした表現がテーマになればなという感想を持った。

坂本会長

 この問題は,敬語のときにもいろいろ御議論をいただいたかと記憶しているけれども,そういう点,我々はつい自分の子供に「あげる」と言ってしまうことがしばしばあるんで,考えていかなければならない問題の一つだというふうに,今の御指摘で私自身も反省するところがある。
 せっかくの機会で,まだ多少時間もあるので,御発言があったら,御遠慮なくおっしゃっていただきたいと思う。

三次委員

 きょう提出されました用紙も,審議会が始まったころはB判だったけれども,A判になった。そういったところにも世の中の変化というのを感じた次第である。
 私はメーカー系であるので,情報化ということで,ワープロの問題,その他に特に関心があったが,それについてはこの中でいろいろ議論された結果がまとめられているので,特に付け加える点もないのだが,私の気持ちとしては,情報化への対応という中に,機械の標準化であるとか,機械の装置とか,そういうものが含まれてくると,以前の人手を中心とした時代に比べると,フレキシブルではないので,何か一様に固く決まってしまうという傾向がある。そういった点で,文部省の方針でも,実際には「目安」「よりどころ」という柔らかい感じで述べられているのだが,それを機械の方へどういうふうにしたら持ってこられるか,その辺の接点がこれからの一つの課題ではないかと思っている。
 こうなると,既に提案されているけれども,そういう問題に関しては,標準化の問題,JIS化の問題等,関係範囲も広いので,是非文部省が率先して他省庁への働き掛けを含めて進めていっていただきたい,そんな感想を持っている。この機会に一言申し上げさせていただいた。

坂本会長

 私自身も自分で多少ワープロをやるので,ワープロの問題はないがしろにできないなという感じを最近持っている一人である,その辺は文化庁の方でも積極的に取り組んでいただきたいと思うわけである。
 ほかに御発言はないか……。いかがであろうか。もし今ここで格段の御発言をいただけなくても,まだ後でレセプションなどもあるようだから,自由に会話をするということでよろしいか……。
 政務次官が国会その他の御関係がおありなので,退席なさるということである。

鈴木政務次官

 3時から衆議院の本会議があるので,誠に御無礼であるが,お先にお許しをいただく。
 本日は本当にありがとうございました。


〔鈴木文部政務次官退席〕

坂本会長

 政務次官は御退席になったけれども,まだ時間もあるので,ほかに何か御意見があったら,お聞かせいただきたいと思う。

林(大)主査

 委員会の席でもおしゃべりばかりしていて,申し訳なかったのだが,一言付け加えさせていただきたいと思う。
 国語審議会の各期ごとに,まず国語審議会でやることは何であるか,何をやらなければならないかということを議論してから,会議に入ってほしいものだと思っていたけれども,今度のこの期から,何をやるべきか,どういう問題があるかということが議論されるようになったので,これは誠にいいことであったと思っている。それは,ちょうど昭和二十何年かに「国語問題要領」俗に「国語白書」と言うものができて以来のことであって,こういう見渡しをするということは非常に大切なことであると考えていた次第であるが,どうやらこれが一つの実現を見たわけである。
 昔の「国語問題要領」ができたが,その前後は,国語の問題はどうしても規則作りということに重点があって,何でも標準化することと規則を立てることに重心があって,私なども審議会の仕事をいろいろさせていただいたときに,そういうことをやってきたわけで,それでは何かお役に立つことができたかもしれないとは思っているのであるけれども,今度のいろいろな御意見を伺っていて,必ずしも規則にだけ,標準化にだけ頼るわけにいかないような問題についての御発言が度々出ていたように思う。
 それは大変大事なことであって,私も先ほど竹田委員からお話が出たように,国語教育の問題が実行の面では非常に大事なことになるとは思っているのだけれども,国語教育にだけ責任をかぶせておくわけにいかないので,やはり社会全体がそういうふうに向かなければいけないことが多いように思う。
 国語は「平明,的確で,美しく,豊かな」というような標語はできるわけだけれども,その内容をどうするかという問題は,規則では立てられない問題だと思う。お話が出た方言の問題とか,敬語の問題とかいうようなことも,規則ではいかない面が随分あるように思うので,そういう理想を実現していくためにはどのようにしていったらいいかということが,今後の問題ではなかろうか。国語審議会の席上で,そういう議論が行われることも大事であるけれども,それがどのように世間に対して実効性を持っていくかということもひとつ議論の中で十分考えていただかなければならないのではないかと思う。
 宣伝をするということについては,行政の面でも,いろいろ努力はしておられるわけだけれども,どのようにしていったらいいのかということは,私にはよく分からない。こういうことを申すのは,今後の審議会で,その辺を十分議論していただきたいものだと思うわけである。
 私は,俵委員じゃないけれども,一番古い人間の方で,これで姿を消すようになりたいものだと思っているので,どうか諸先生方によろしくお願いいたしたいと思う。
 もちろん,規則で立てておいていいものもあるわけだけれども,規則だけでないのはどうしていったらいいかということをどうかよろしくお願いしたいと思う次第である。
 最後までおしゃべりをして,どうも失礼した。

坂本会長

 いろいろ貴重な御意見をいただき,ありがとうございました。
 それでは,この辺で第19期国語審議会の審議は滞りなく終了したということにさせていただきたいと思う。
 これまでの委員各位の御協力に感謝する。
 本日の総会はこれをもって閉会する。

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