国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 審議事項の説明

坂本会長

 次に,文化庁長官に審議事項について御説明をお願いする。

内田文化庁長官

 ただいま文部大臣から諮問事項が示されたが,「新しい時代に応じた国語施策の在り方について」というものである。理由についても御説明申し上げたが,さらに,もう少し詳しく御説明を申し上げて,皆様方の御理解をお願いいたしたいと思っているところである。
 その前に,国語審議会のこれまでの経過について簡単に振り返ってみたいと思う。
 戦後,昭和21年以来,国語審議会の答申又は建議に基づいて実施に移された一連の国語施策については,その後,種々再検討を加えて改善を図る必要が生じてきたので,昭和41年6月に文部大臣から国語審議会に対して「国語施策の改善の具体策について」という諮問を申し上げた。以来25年にわたって,この諮問に基づく御審議をお願いしてきたところであり,諮問した事項については,すべて御答申をいただいたということになっている。
 前期,第19期国語審議会は平成3年9月に発足して,この審議会に対し,現代の国語をめぐる様々な問題を見渡し,今後適切な対応が望まれる問題にはどういうものがあるかということについて,御審議,御提言をいただくことにした。
 第19期の国語審議会では,熱心な御討議,御審議をしていただき,その話題も非常に広範にわたっていたが,昨年6月に中間的な審議経過報告を公表するなど慎重な手続を踏んでいただき,本年6月に「現代の国語をめぐる諸問題について」という報告をおまとめいただいた。
 この前期の審議会の報告「現代の国語をめぐる諸問題について」は,今後国語施策は国語の問題全般を取り上げるべきであるとして,具体的な検討課題は,言葉遣いに関すること,情報化への対応に関すること,国際社会への対応に関すること,国語の教育・研究に関すること,表記に関すること等を合わせて,5類16項目に整理して御報告をいただいたわけである。この報告については,文化庁では,各省庁,全国の都道府県,市町村,大学,マスコミ等に広く配布した。
 一方,本年10月中旬から11月上旬にかけて,福岡,大阪,仙台,東京の4か所で,マスコミなどでは「一日国語審議会」と報道されたりしたが,国語施策懇談会を開催し,各地域の有識者から様々な御意見をお聞きし,検討項目として提起された事項については,いずれも高い関心のあることがうかがわれた次第である。お手元の本日の資料にも要約を配布しているところである。
 以上,これまでの国語審議会における審議の概要,概略をざっと申し上げたわけであるが,今度の諮問事項について,これからもう少し御説明を加えたいと思う。
 先ほど申し上げたように,今回の諮問事項は「新しい時代に応じた国語施策の在り方について」ということで,先ほど申した報告書を受けた形で,総合的,包括的に整理したものである。
 大臣からも話があったように,昭和9年に国語審議会が発足して,60年近くたっている。今回の諮問は第3回目で,27年ぶりということである。御検討いただく内容としては,これから申し上げるようなことがあると考えられるが,これは一つのヒントであって,自由な御意見を賜りたいと思う。
 まず第1番目には,「言葉遣いに関すること」である。情報化,国際化,価値観の多様化などが急速に進展する中で,いわゆる言葉の「乱れ」や「ゆれ」の問題がしばしば論じられている。また,新語,流行語,外来語などの洪水や世代間の言葉の差がもたらされている。これらについては,ある意味では積極的な面を取り上げて,これを認めるという考えもあるし,一方,言葉の基本である伝達機能や人間関係の阻害という面を重視される方もある。
 こうした状況を踏まえて,目的と場合に応じた適切な言葉遣いの在り方,いわゆる言葉の「乱れ」や「ゆれ」の問題,発音やアクセントの問題,今日の現実に即した敬語の在り方,共通語と方言の問題などについて,国あるいは国語審議会がどの程度踏み込むべきかというようなことも含めて,広い視野に立って御検討いただきたい。これが第1の事項である。

内田文化庁長官

 第2番目としては,「情報化への対応に関すること」である。御承知のように,ワープロ等の情報機器が最近著しく発達してきた。これに伴って,文字の使用をめぐる社会状況は大きく変化しつつあると考えられる。このような状況において,ワープロなどの情報機器の発達に伴う国語や人々の国語能力の在り方,ワープロなどにおける漢字の字体の整理・統一の問題などについて,関係方面の意見も十分くみ入れながら御検討いただくことは,大変時宜にかなったことであろうと思う。これが第2番目の事項である。
 第3番目には,「国際社会への対応に関すること」である。御承知のように,近年,世界の日本語学習者数が急速に増加するとともに,多くの外国人の方々が日本の社会に入ってきている。日本語が日本人だけのものでなくなっている状況を踏まえ,世界の中の日本語という観点に立って,日本語の将来を見通しながら,日本語の国際的な広がりへの対応の在り方,外国人に対する日本語教育の推進方策,外来語,外国語の使用の問題などについて御検討いただく,これが第3番目の事項である。
 第4番目としては,「国語の教育・研究に関すること」である。言葉遣いの問題をはじめ国語に関する様々な問題の基礎は国語教育にあることは言うまでもない。そこで,生涯学習の観点を踏まえた国語教育の在り方,特に話すことや聞くことの教育の在り方,国語研究の振興方策などについて御検討いただければと思う次第である。これが第4番目の事項である。
 第5番目は「表記に関すること」である。前期の審議会以来,取り上げるべき問題の領域は,今申したように大きく広がっているが,同時に,表記の問題は相変わらず重要であるということである。漢字の一部を仮名書きにするいわゆる交ぜ書きの問題など,表記に関する諸問題についても,まだ多くの問題が残されていると思うので,これらについて御検討いただきたい。これが5番目である。
 今申し上げた事項については広範多岐にわたる問題を含んでおり,これらについて御審議をいただくわけであるが,当面は,すなわち本20期国語審議会においては,社会の各方面で要請されている問題から取り上げていただきたいと考える次第である。
 例えば,「言葉遣いに関すること」について見ると,さきの報告が公表された際にも,社会の各方面の反響は非常に大きいものがあった。また「情報化への対応に関すること」「国際社会への対応に関すること」の二つの事項は,現代の社会において,早急に検討することが強く要求されている事項である。当面,この三つの課題を柱として御検討いただくのも,一つの行き方ではないかと考えている次第である。
 もちろん,言葉遣いの問題は教育にも深くかかわる問題であるし,情報化の問題は表記のことに深くかかわるところがあるので,教育や表記に関する問題も視野に入れていただくことがよろしいのではないかというふうに考えている次第である。
 報告あるいは答申の内容については,取り上げる事項によっては,施策上の指導理念や方策の御提示をいただくものもあるし,またある種の「目安」「よりどころ」といったものをお示しいただく場合もあろうかと思う。様々な形の御報告,御答申になるものと考えている。
 審議していただく期間としては,今申したように,何分審議のテーマが非常に多いので,ある程度長い期間が当然必要になると考えているが,現審議会の委員の任期は2年間であるので,テーマによっては次期以降の審議会で引き続き検討していただくこともあろうかと思う。その間に,審議経過として,又は成案としてお取りまとめいただいたものについては,逐次御報告,御答申をいただくようにお願いしたいと思う。
 なお,審議の方法として,幾つかの小委員会を設け,じっくり御検討いただくことも一つの案ではないかと考える次第である。
 大変御多忙中のところ恐縮であるが,諮問の趣旨を御理解いただき,自由かつ活発な御議論,御審議をいただいた上,順次適切な報告,答申をおまとめいただければ大変幸いである。事務局としても,全力を挙げて御協力申し上げる次第である。
 以上,簡単に諮問事項についての補足的な御説明を申し上げた。
 よろしくお願いする。

坂本会長

 ありがとうございました。

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