国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 第2委員会における検討事項等について

坂本会長

 御質問等がおありだとは思うが,後ほどまとめて伺うこととして,引き続き,第2委員会からの御報告を水谷主査からお願いしたいと思う。

水谷(第2)主査

 第2委員会はやはり2回会合を開いた。4月12日と5月10日である。
 検討事項については,お手元の資料3-1に「第2委員会における検討事項(案)」というのがあるが,それに従って討議をしたので,その資料3-1に基づいて御報告申し上げる。
 Iの「情報化への対応に関すること」の1「情報機器の発達とこれからの国語施策の在り方」に関連しては,19期の報告では「国語能力の在り方」と「能力」という言葉が入っており,そういう限定があったのだが,今は,このプリントにあるように,(3)「交ぜ書きの問題」,(4)「縦書き・横書きと書体の問題」といった新しい項目立てをしたこともあって,情報化時代に対応する国語施策の在り方というより広い観点でとらえていくことになった。
 一つ一つ順を追っていくが,(1)の「情報機器の発達が日本人の書記能力,文章表現力,思考力に及ぼす影響」の項に関連しては,まず調査結果に基づいて考えていく必要がある,調査が大切だという指摘があった。特に,子供たちの漢字能力や思考力とどうかかわるのか,それが気になるというような意見もあったし,ワープロの使用によって,文章力,あるいは文章そのものがどう変わってくるのか,明らかにする必要があるというような意見が出ていた。
 (2)の「ワープロ等の使用者の用途に応じた多様なソフトの開発など」については,やはり19期の報告のときから話題になっていたソフト,字種とか,字数とか,新旧字体,新旧仮名遣い,送り仮名の付け方,振り仮名などの問題以外に,キーボードをたたくと,何でも漢字になってしまう,そういう今の仮名漢字変換の在り方なども,望ましい表記という観点から,いいのだろうかというようなことが話題になった。
 (3)の「交ぜ書きの問題」は,19期の報告では「表記に関すること」という項目の中で取り上げられていたのだが,ワープロの仮名漢字変換によって漢字がどんどん出てくることで交ぜ書きが少なくなってきているという状況があったりして,そういう状況との絡みから,「情報機器の発達とこれからの国語施策の在り方」の中で取り上げることにしたものである。
 (4)「縦書き・横書きと書体の問題」であるが,情報機器の普及も原因の一つとなって,横書きの文書がますます増えているという現実がある。そうなると,従来の横長活字から横書き用の縦長活字に書体を変えていくということも,読みやすさという観点から必要ではないか,また仮名も縦書きの中で発達してきたもので,横書きの中で使われると識別しにくいという問題があるのではないか,横書き用の仮名の書体ということも考えるべきではないか,などといった意見が出ていた。そういうことがあって,新しく(4)の項目を立てたものである。
 2の「ワープロ等における漢字の字体の問題」については,字体の問題はJIS漢字や情報機器との関係などもあって,専門的な知識が必要だということがある。そのような観点から,後で御意見を伺いたいと思うのだが,先ほど国語課長の方からもちょっと説明があったように,第2委員会の中にワーキング・グループを作って検討したいと考えている。専門家のメンバーとしては,石綿委員に座長をお願いし,輿水委員,林巨樹委員,三次委員の4名の方にお願いしたいと考えている。また,必要に応じてメンバー以外の専門家の方にも加わっていただくこともあり得ると思っている。
 (1)の「混乱の現状について(どのような混乱が,どのような分野で生じているか)」については,本日提出されている資料3-2の「ワープロ等における字体の問題について」の中に,JIS漢字の経緯を簡単にまとめてあるので,お読みいただきたいと思うが,また学校現場などでもワープロによる教材作成が多くなっていて,字体が統一されることを望むという意見も委員会の中では出ていた。
 (2)の「表外字の字体の標準について(現在どのように考えられているか)」の問題についても,前の問題と同じように,先ほど御覧くださいと申し上げた資料と関連するのだが,漢和辞典における表外字の扱いとJIS漢字における表外字の扱いとの対立をどう考えていくかということが,恐らく中心的な課題になるであろうと思っている。まだ突っ込んだ話合いの段階へは進んでいないが,恐らくそうなるであろうと思っている。
 (3)の「字体の問題についての考え方の提示」であるが,表外字の字体について国語審議会としての考え方を提示する。ここでは表外字の字体の標準を国語審議会が示すことが妥当であるかどうかということから,検討していくことになるのではないかと思っている。なお,字体について考えるならば,日本の場合だけではなく,中国,韓国,台湾など漢字圏のことを踏まえて検討すべきであるという意見も会議の中では出ていた。
 以上が情報化にかかわる内容である。

水谷(第2)主査

 Uの「国際社会への対応に関すること」は1,2,3と三つの項に分かれている。
 まず,「国際化と日本人の言語意識」に関連して,基本的な問題として,国際化という時代の流れの中で,日本人の言語意識がどう変わってきたかについて明らかにしていく必要があるだろう,日本人が日本語に対して持っている言語観や外国語に対して感じている意識などを分析して,提示していくことになるのではないかと思っている。これも恐らく調査などに裏付けされていないと説得力を持たない可能性があるので,調査の必要性はこちらでも求められるだろうと思っている。
 (1)は「国際化時代の言語政策」。従来のような国語施策という視点だけでは,こうした国際化時代の言語問題を把握しきれないのではないかということから,より広い視点として「言語政策」という語を用いようという提案があったものである。また,ローマ字表記の場合の姓名の順序,どういう順序で名前と姓を並べるかということについても検討することにしたいと考えている。
 (2)の「日本人の言語運用能力の在り方」についてあるが,日本人が国際社会の中で活動する場合,言語運用能力の弱さを指摘されることが多く,自分の考えを正確に伝達できる表現能力や,相手の考えを的確に把握して対応していく能力に欠けると言われている。国際社会の中で必要とされるこうした能力をどうとらえるのか,またどう考えるのかを検討していきたいと考えている。
 2の「日本語の国際的な広がりへの対応」だが,ここでは具体的な現状把握から考えていく必要があるだろうと思われる。日本語学習者の増大は,実は海外だけではなくて身近な国内の問題でもある。小学校,中学校における外国人子弟の急増などもその一つの表れだが,国の内外を問わず,非常に広い視野で問題をとらえて検討していかなければならないであろうと思っている。
 (1)「国際語としての日本語の在り方」についてであるが,日本語の使い手が日本人だけではなくなるという国際化の時代の中で,日本語はどのような在り方を目指すべきなのか。また,その前提として,国際語というのは一体どのようなものなのかなどということについても,広い視点から考えていく必要があるだろうと思われる。
 (2)の「国際化に伴う日本語の変化」だが,日本語の使い手が日本人だけではなくなることから起こる変化,社会そのものが国際化していくことによって引き起こされる変化,この二つの変化の現象がある。二つの軸を中心に検討していくことになるかと思うのだが,前者の日本語を使うのは日本人だけではなくなったということは,後者の社会的な変化の要素の一つではあるが,日本語の変化を考えていくときの要素としては,大変大きい具体的な問題なので,独立して検討する必要があるのではないかと考えている。
 (3)「日本語の国際的な広がりを支援するための方策」については,会議の中では結構議論があった。確かに,広がりを支援するということに関して慎重に議論を進めていく必要があるだろうと思っている。いずれにしても,日本語の国際的な広がりを支援するための方策について,日本語教育の問題を中心としながら具体的に検討していく必要がある。また,情報機器を利用した日本語教育の推進についても意見があった。
 (4)は「日本語による外国人との意思疎通の在り方」だが,日本語で外国人と話すことが今後ますます増えてくると思われる。そうした場合に,コミュニケーション・ギャップを起こさずに円滑なコミュニケーションを図ることが求められるだろうと思うが,文化的な側面も視野に入れて検討していく必要があるだろう。
 最後に,3の「外来語の増加や日本語の中での外国語の過度の使用の問題」は,見出しと申すか,柱立ての表現についても,やはり反省を求めるような提言があった。
 例えば,「過度」というような評価を含んだ語を用いるのはどうだろうかという意見もあったが,外国語の使用が避けられない社会状況にあることも考えると,過度の使用が問題であるという考えも成り立つので,そのまま残してある。19期の報告の中でも使っていたということがあって,今は残しているが,更に「過度」という言葉の使い方の適切性については議論されるべきであろうと考えている。また,今の状況が本当に過度であるかどうかを議論するべきではないかという意見もあった。
 (1)の「外来語・外国語の使用の現状,使用の意識について」は,アンケート調査などで現状をなるべく正確に把握して,それに基づいた討論がなされるべきであろうと考えている。
 (2)の「外来語・外国語の問題を国語施策の上でどのようにとらえるか」は,(1)の現状分析に基づいて,国語審議会として提案していくことは,何かを考えていく必要があるだろうと思う。きょう最後の資料として出されているフランスの状況なども参考としながら,広い視点から検討していきたいと考えている。
 以上が,第2委員会からの御報告である。

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