国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 資料について1

坂本会長

 以上,第1,第2両委員会からの御報告を伺ったわけだが,質疑に人る前に,本日はいろいろな資料が出ているので,ただいまの御報告の中でも若干触れていただいているけれども,ここで委員の先生や事務局から資料についての説明をお願いしたいと思う。
 資料4の国語施策懇談会については,御提出いただいた渡辺委員からの御説明をお願いしたいと思う。

渡辺委員

 最初の総会の折に少し余計なことを発言したおかげで,きょうの報告となったようであるが,いずれにしても,それぞれの地区で,現在の国語というものをどういうふうに考えているのかということについての懇談会が開かれたが,その発言を4地区分まとめたもので,それぞれの地区で共通している部分,異なっている部分もあるわけだが,このような形にすると現在の状況における問題点,将来に向けてどうあったらいいのかというような考え方,問題がよく分かるのではないかと思う。この項目の整理については,文化庁の方でも検討していただき,共同で作成したような形になっているが,私の方から説明をさせていただく。
 まず,Iの「言葉遣い」の問題であるが,いろいろの問題が出ており,言葉遣いの基準に関する問題,話し言葉に関する問題,美しく豊かな言葉を使用する問題,そこにあるような内容が発言されたわけである。この分析は,その中でキーワードと思われる単語を拾い上げて,ここに項目が出ているような形で文化庁にまとめていただいたものである。
 横軸を見ていくと,福岡,大阪,東京,仙台の4地区の欄になっており,例えばIの「言葉遣いの基準」については,「国語審議会が示すべきだ」という指摘をしているところは,地区の欄に○が付いているように,福岡,大阪,仙台であるというふうに読んでいただければいいのではないかと思う。
 そのように読んでいただくと,例えば2地区が同じ指摘をしたり,3地区が同じ指摘をしたり,あるいは1地区だけというような問題もあるが,私が見た状況では,どの地区も平均して同じような問題を出しているのではないかと思う。それから,4地区あるいは3地区共通して出ている問題が,現在の言葉遣いの問題に関して,必ずしも最適な,一番重要な項目ということではないように思うわけである。また,1地区だけで取り上げている問題でも,それが基本的な問題である場合もあるわけである。
 2ぺージ目に行くと,「情報化への対応」というところがある。例えば「ワープロ等と国語能力」のところで,福岡地区が「ワープロ・コンピュータ導入と国語教育のバランス」を指摘しているが,学校教育において,国語教育ということだけではなくて,教育全体の中からワープロとかコンピュータの導入ということを考えていかなければならないという大きな問題がある。既に予算化されて学校教育の中に導入されている部分もあるわけで,1地区が指摘した中でも,こうした非常に重要な事項があるので,それぞれの分科会で検討していただけると非常に有り難いと思う。
 3枚目に行くと,V「国際社会への対応」の問題,W「国語の教育・研究に関すること」というように出ており,5ぺージは「表記に関すること」である。それぞれのところを御覧いただいても,非常に大事なことがたくさんあるので,できれば具体化していただくということが大事ではないかと思う。
 以上,私が分析した結果の感想である。

坂本会長

 それでは,国語課長どうぞ。

韮澤国語課長

 それでは,その他の資料について簡単に御説明申し上げる。
 最初に,資料2-2は,「美しく豊かな言葉の普及のための施策の現状について」という資料である。
 これは,文化庁等の施策を簡単にまとめたものであるが,文化庁では,一つは「ことば」シリーズの配布ということをやっている。これは昭和48年度から行っていて,解説編,問答編のそれぞれを毎年6万5,000部ずつ無償配布しているものである。また,これとは別に市販用だけで,現在まで約180万部が発行されているものである。
 それから,ビデオテープについても,同じ趣旨で毎年2本ほど作っている。
 次に,「国語問題研究協議会」は,全国の小・中・高校の国語の先生などを対象に,いろいろな研究協議を行っているものである。
 それから,先ほどから話題に出ている「国語施策懇談会」は昨年度から行っている。全国4か所でその地域の有識者の方にお集まりいただくもので,今年度は,本年秋に札幌,東京,名古屋,広島の4か所で行う予定である。日程等固まり次第,御報告申し上げたいと思う。
 なお,下にちょっと書いてある静岡県教育委員会による「正しい日本語研究協議会」というのは,今,静岡県では県当局が言葉遣いの問題に非常に御熱心で,言わば国語審議会の県版をお作りいただいて,いろんな事業を行っているというものである。
 そのほか,国語研究所では,「日本大語誌」の編集,方言地図の作成といったような事柄を行っている。
 次に,資料2-3「言葉の乱れ等についての国民の意識の現状」というものがある。これは,総理府が行った世論調査,NHKのいろいろな調査の中から,総括的な部分を抜粋したものである。
 まず,「今の国語は乱れていると思うか」ということについては,総理府の調査によると,平成4年では75%近くの方が「乱れていると思う」で,昭和52年のときは69.2%であるから,約5%増えているという状況である。
 それから,下のNHKの調査でもほぼ同様のことが出ており,例えば昭和54年は「非常に乱れている」と「多少乱れている」を合わせて71.8%あるのに対して,平成元年では合わせると89.3%というような状況になっているわけである。
 次の2ぺージ目であるが,日本語の乱れについて,A〜DのA〜Dの各組の二つの意味のうち,どちらが率直なお気持ちかということである。

韮澤国語課長

 Aは,「ことばの乱れはいつの時代にもあるから,気にする必要はない」が34%であるのに対して,乱れは好ましくないので,正しい日本語を使うべきであるというのが62%という状況である。
 Bであるけれども,「ことばの乱れをなくすために,国はもっと積極的に活動すべきだ」というのが33%に対して,「ことばが多少乱れたとしても,国がそのための特別な対策をとる必要はない」が60%ほどある。
 なお,右の方の図を見ていただくと,男女年齢別に分けたものであるが,特に16歳から30歳ぐらいまでの若い世代については「特別な対策をたてる必要はない」というのが非常に多く,年齢が上がるに従って,大体50代ぐらいで逆転するということになっている。
 Cであるが,「ことばの乱れに関して,マスコミの責任は大きい」というのが83%ほどある。
 次に,Dの「例えば「にほん」と「にっぽん」のように同じことばに二つ以上の言い方がある場合について」では,「好ましくない」というのが24%,「ニつ以上あってもよい」が74%である。
 これを右の図で年齢別に見ると,若い世代では「ニつ以上あってもよい」というのが非常に多く,年を取ると,それが若干低下してくるという状況がある。
 それから,下の方であるが,あなたにとって標準的な日本語とは何かということである。多いのは,1の「アナウンサーのことば」,4の「新聞のことば」,さらに「教科書のことば」といった辺りである。
 次のページでは,「国語の将来のために国や社会に何を望むか」ということである。多いのは,上の方から,「学校での国語の教育をより充実させる」「家庭や社会での言葉の教育を充実させる」「言葉のつかい方について標準を示し,普及・啓発に努める」といった辺りである。
 その下では,国語の何が乱れているかということであるけれども,多いのが「話し方」「敬語のつかい方」「あいさつの言葉」といった辺りである。
 以上が資料2-3である。
 次に,資料2-4である。これは「言葉遣いの問題としてよく指摘される例」として,19期以来,いろいろ御議論の中に出てきているものを整理したものである。
 まず,敬語の語法的な問題としては,「謙謙語を尊敬語として使う」ということで,例えば,「そこでお待ちしてください」「先生が申されました」「次はどなたが出てまいりますでしょうか」「○○さん,おりましたら御連絡ください」という言い方,あるいは二重敬語の問題で,「3時に御出発される予定です」とか,「お客様はお帰りになられました」とか,「先生がおっしゃられたように」という言い方,それ以外にも,「犬にごはんをあげる」とか,「お求めやすいお値段」とか,「とんでもございません」といった言い方が話題になっている。
 そのほかに,言葉遣いの乱れの例として挙げられるものは,いわゆる「ら抜き言葉」,語尾を伸ばす言い方,いわゆる若者言葉というものが挙がっている。
 それから,発音・アクセントのゆれの問題としては,いわゆるクマクマかというアクセントのゆれ,更にガ行鼻濁音の有無,英語風に言う発音,こういったものが挙がっている。
 資料2-5の「言葉遣いの標準の現状について」については,後ほど調査官から御説明申し上げる。
 次に,第2委員会関係である。資料3-2の「ワープロ等における字体の問題について」という1枚の資料があるが,これはJISの問題についての経緯を簡単にまとめたものである。
 昭和53年に第1次規格が出たが,ここで漢字を中心とする文字符号の標準化を行った。その内容としては,いろいろな文字を標準化して,その中に第1水準の漢字2,965字,第2水準3,384字があったわけである。
 そして,問題は次の第2次規格,1983年に出たものである。これは「常用漢字表」等の施行に伴い改正されたもので,ここで漢字4文字が追加されたほかに,このときに「常用漢字表」の字体に準じて,第1水準内の表外字の字体を,いわゆる正字の字体から――「おう」といった字であれば,これを略字の「鴎」に改めたということがある。これが混乱が出てきたところであって,この類のものは,違いの非常にわずかなものも含めると百数十字ある。そして第2水準の中にも一部及んでいる。現行のワープロの中には略字しか出ないものも多くなっているという状況があるわけである。
 それから,第3次規格であるが,これは人名用漢字の追加によって,2文字を追加したというものであって,現在使われているのはこの規格である。
 なお,その下に「補助漢字」というのがあるが,これは第3次規格に含まれていない補助的な字について定めたものであって,これに含まれる漢字は5,801字,この中には,「おう」のような、3次規格に入っていない正字28字があるという状況である。
 次は,資料3-3の「情報化・国際化についての国民の意識の現状」という資料である。これも総理府の調査とNHKの調査から抜粋したものである。
 まず,情報化関係で申し上げると,「ワープロを使うと何が変わるか」というのが左側にある。これでは,多いものとしては「漢字を書く能力が低下」「字がきれいか気にしなくてすむ」「文章を書くのが苦にならない」といったものがある。
 その右であるが,ワープロを使っている人に,「よろしくおねがいいたします」というのを手書きで書く場合は,どういうふうに書くかという質問では,非常に多いのが2の「願」という漢字を一つだけ使うものである。ワープロを使う場合には,下にあるように,それが大分減って,漢字を三つ使う,四つ使うといったものがかなり増えてくるという状況がある。これは,その下の図で見ると,特に「ときどき使う」といった場合の人に漢字を非常に多く使う傾向がある。

韮澤国語課長

 次のぺージであるけれども,国際化の関係では,まず「外国人はどんな日本語を話すのがよいか」という調査である。これは有識者と一般と両方行っており,有識者というのはいわゆる言語の専門家の方であるが,「意思さえ通じれば多少ヘンでもよい」という方が多いわけである。
 それから,図2の日本語の国際化とは何かということについては,「日本語を話す外国人の増加」とか,「外国の中学・高校で日本語のクラスの増加」とか,「外国のテレビ・ラジオで日本語講座が増える」といったものが多いようである。
 図3以下では,日本語は国際語になるかどうかということについて,約46%の方が「そうは思わない」,「そう思う」は19%という状況である。
 なお,右の図5で「国際語とはどんなことばか」ということを聞いており,「国際語になると思う人」は,「国際会議の公用語」とか,「外国人どうしが使うことば」とか,ある程度低い段階で「国際語」をとらえているのに対して,「国際語になると思わない人」は,「現在の英語のようなことば」ということで,非常に高い段階で「国際語」をとらえているという状況がある。
 そのほか,「外国人の使う日本語で日本語は影響を受けるか」というのでは,「受けない」が48%。「これから日本語を変えていく必要があるか」については,「必要はない」が61%。その理由としては,「変えられるが自然の変化でよい」とか「現状の整理でよい」という答えが多いようである。
 それから,一番下で「日本語観・外国語観」を聞いているが,まず「日本語のような情感の豊かなことばは外国語に正確に翻訳できない」というのに対して,「そう思う」という答えが一般の方には非常に多いが,有識者の方には非常に少ないという状況がある。「外国人には,日本語はほかのことばより難しい」ということについても,一般の方は「そう思う」,有識者の方は「そうは思わない」という答えが多い。「英語は論理的だが,日本語は論理的でない」については,「そう思わない」という方が多いようである。
 次のぺージであるが,「日本人は外国でその国のことばを話す努力をすべきだ」というのは,「そう思う」というのが圧倒的に多い。「日本に来た外国人は日本語を話す努力をすべきだ」というのも同様である。なお,「日本語が流ちょうすぎる外国人は信用できない」ということについては,「そうは思わない」という方が非常に多いようである。
 次に,4ぺージである。外来語の問題で,「つかわれすぎていると思うか」については,総理府の調査にあるように,約7割の方が「使われすぎていると思う」という状況である。その下に昭和52年のデータがあるが,このときは65%であったから,5%ぐらい増えているという状況である。
 最後のぺージである,これはNHKのデータである。これについても,同様に,約63%の方が日ごろ外国語が使われすぎていると思っているわけであるが,図21では,「意味がわかれば外来語をいくら使っても構わない」ということについて,「そう思う」という方が若い方にはかなり多いというような状況である。
 その下の第9問であるが,外来語が今非常に使われているかどうかについては,大変多いという方が多いけれども,第10問で,増えることについてどう考えるかという認識を聞いたところでは,「いくらでも増えてよい」とか「多少は増えてよい」という方が6割で,かなり多いというような状況がある。
 次に,資料3-4である。これは日本語教育の現状であって,海外については,平成2年度現在98万人ということで,毎年かなり増えている。
 なお,この数字は未収分があって,実際には200万から300万人ぐらいに上るだろうと考えられる。また、初中教育レベルの学習者が非常に増えてきており,7割近くが初中教育の段階であるという状況である。
 次のぺージの,国内における日本語教育についても,同様,急速に増えており,平成5年現在7万7,000人という状況である。
 最後のぺージは,国内の外国人登録者数であるが、これも毎年増えており,平成5年現在132万人で,人口の1%を超えているという状況である。
 資料3-5は,「日本語教育施策の概要」である。1ぺージ目は文化庁,次のぺージは文部省の学術国際局,3枚目は国際交流基金で,それぞれいろんな施策を行っているが,説明は省略させていただく。
 次に,資料5であるが,「フランス語の使用に関する法案について」の資料をお出ししている。後ろから2枚目に参考訳を付けてあるので,これに基づいて御説明申し上げる。
 この法案は,本年4月に両院に提出されたが,上院で修正可決され,また下院に回され,更に修正されて,現在,上院に再回付されておるという状況であって,多分今月中に通るだろうという状況である。
 なお,ここに翻訳してあるのは,いわゆる提案理由説明の部分である。これについては,その後若干の修正はあるようだが,基本的には変わっていないようである。
 簡単に申し上げると,まず,憲法は,共和国の言語はフランス語であるという原則を貫いておるということである。そして,4段落目であるが,この法案は1975年に出た法律の延長であって,その一環をなすものであるということを言っている。次の段落では,フランス語の使用が義務的であることを明確にして,消費者,勤労者,大衆のためにフランス語の権利を保証するということを言っている。さらに,方言の使用を損なうものではないし,外国語や外国文化に理解を示すこととも両立するということを言っている。
 以下,各条に具体的なことが書いてあるが,4ぺージの下にあるように,第1条から3条まででは,財・商品の提示のため,あるいは広告におけるフランス語の使用を義務付ける,公共の場所等における掲示についても同様であるとしている。
 第4条では,公的主体によってなされる契約書はフランス語で書かなければならないということを言っている。
 第5条では,会議等における最小限の要求。これは,フランス語に少なくとも使用可能な伝達言語としての法的地位を与えるというものである。
 さらに,第6,7,8条においては,勤労者の保護に関して,労働契約等についてはフランス語で書かなければいけないということを明記し,9条では教育の言語はフランス語であるということを言明し,さらに10,11条では,テレビ・ラジオ,宣伝広告におけるフランス語の使用を義務付けるとともに,フランス語の保護と推進に貢献する使命を与えている。
 このほか,公法人等については,外国語の表現,用語を含んだ商標の使用を禁止するとしている。
 第13条から18条では,そのためのいわゆる罰則等を定めている。
 19条では方言の立場を保護し,20条ではその経過措置を定めている。
 以上,簡単であるが,資料の御説明を申し上げた。

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