国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 第2委員会における論議の概要について1

清水会長

 次に,第2委員会の主査の水谷委員から御説明を伺わせていただくことにする。

水谷(第2委員会)主査

 第2委員会の仕事としては,答申を出すことの道のりをこの1年間の間に歩まなければならない。スケジュールによると,再来年の春には完全に原案ができていなければならないし,実質的には,恐らく来年の12月までに何らかの形で内容を固めなければならないだろうと思っている。そのためには,かなり厳しい形で資料の収集,検討を繰り返し,内容のまとめという作業を進めなければならない。しかも,答申ということになると,専門的な,行政的な視点からのカも要求される。私は,その点では非常に弱いものだから,皆さんのまとめをしていく役割の中で,是非もう一人副主査の方をお願いして,チームワークよく進むような運びをしたいと思って,小林委員は行政の御経験もお持ちなので,副主査に小林委員をお願いして委員会の中で認めていただいた。
 そういう形で出発した委員会は,先ほどの庶務報告にもあったが,10月28日と11月26日の2回開かせていただいた。
 今日の御報告は,その委員会の論議の概要について,まず私の方から御説明を申し上げ,その後,その中で問題になった当面しなければならない厳しい仕事について,筋道を立てて問題点を把握していきたい。その一つの柱として,過去の国語施策の沿革資料というか,何をやってきたかということをきちんととらえておきたいという観点から,これも中間報告的であるが,それを小林委員にお話しいただく。それから,この問題が起こってきた原点の一つであるJISの漢字そのものについて,今まで分かってきたことの情報についての報告を事務局の氏原調査官にしてもらう。この三つの部分に分けて御報告をしたいと思っている。
 まず最初に,概要についてであるが,資料3を御覧いただきたいと思う。
 一番最初のところに,「検討範囲について」とある。実は議論の始まりがこういう形で開始されたものだから,冒頭に来ているが,お話の順序としては,2番目からさせていただく方が分かりやすいのではないかと思うので,2番目の中身から始めることにしたい。

水谷(第2委員会)主査

 2に「検討課題・方針について」とあるが,この第2委員会の中では与えられた目的に即して何を課題として考えるべきか,あるいは方針についての基本的な考え方はどうあるべきかということについての理念の問題を中心にして,出された御意見をそこへ整理して載せたものである。
 実は,実際の委員会の中では先生方が非常に熱心にお話しくださって,その中身がここに全部採録できればよかったのであるが,とてもスペースが足りないので,こういう御意見だということを提示する形で,そこに1行,2行という形で列挙してある。もしかしたら御発言の意図とずれているものもあるかもしれないが,こういうような課題があったんだということをお分かりいただくことが先であるから,その役割は果たせるかと思っている。
 これは大切なことであるので,ちょっと読ませていただく。御覧いただくとお分かりになると思うが,まだ固まっていない。問題点は何なのか,前期20期の中で問題が存在していることについては意見が一致した。しかし,この21期はそれを解決するためにどういう方策を用意し,それを分析していくナイフは,あるいはフォークはどうあるべきかということにつながる意見の列挙である。

 現実の混乱状況を交通整理しつつ,各方面で守ってもらうための,字体問題に関する根本的な考え方・基本理念を提示する。
 JISの規格で略字体が入ったのは,ワープロが24ドットを採用していたからで,今はずっとワープロの性能が良くなっており略字体にする必要はない。
 混乱しているのは表内字は「ネ」,表外字は「示」というように,漢字の偏の方である。
 部品(漢字の部分字形)として許容できるものは,手書きの形(2点シンニュウに対して1点シンニュウなど)にしたらどうかと思う。ただ簡略化しすぎるのは問題である。
 過去の漢字政策は手書き文字に対する配慮が中心であったが,ワープロの場合は手書きをする必要がないので,必ずしも略字体でなくてもよいことになる。読んで識別できればよいと考えるなら,そういう方針でやることもできる。
 読んで識別できればよいという考えには反対。将来的に見ても,機械処理で漢字の読み取りを行う場合などを考えると,読み取りやすい略字体を用いる方が望ましい。
 文字は本質的に書くものであるという考え方に立って,まず手書き文字の正しい形を決めて,そこからどの程度までなら離れても認められるかという方針で検討したい。
 現在ワープロに入っている略字体は通用体として位置付け,機械処理などの場合は通用体を使えばよい。
 ワープロで康熙字典体と通用体を並置してユーザーが使いたい方を使えばよいと思う。JISの漢字についてこのような形で,整理できるとよいのではないか。
 新しい略字体は基本的に作り出すべきではないと考えている。
 代表字体は一字種一つという形で決められるとよい。内閣告示とすることも考えたい。
 異体字の扱いを検討すべきである。
 手書きでいろいろ書けても,機械から出てくるものは一つにするということもできる。むしろ,ワープロの方は康熙字典体に少し戻すべきではないか。
 新聞での字体の混乱が家庭でも問題になることがあるので,統一基準を出す必要がある。
 統一基準を出す場合,その適用の範囲(分野)をどのように考えるかが大切である。

 ということであって,決して一貫した考え方でまとまってはいない。この中から,審議会としてどのような考え方で,この線を打ち出すのだという理屈をきちんとまとめていくことが,これからの当面の仕事になるかと思っている。今日のこの機会でも,それに関するお教えがたくさんいただけたら有り難いと思っている。
 そして,問題の中身,基本的な考え方を進めて,次に何を対象とするか,何を題材として議論をしていくか,検討していくかということが,1の「検討範囲について」の中身であるが,それに関連して出てきたのが「実際に使われている漢字すべて(4万とか,5万とか)を見渡す必要がある」。それに対して,「JISの第1水準・第2水準までの範囲を目安として議論していけばよい。 (第3・第4水準の扱いは別に考える。)」というかなり対立した形の意見が出てきている。それぞれ裏にある考え方はあると思うが,範囲についてはそういうことがある。具体的には,この後も申し上げるが,実際にはとらえられるところから筋道を通しながらとらえていくという形で出発しかけている。

水谷(第2委員会)主査

 下の方へ行って,3の「検討の進め方について」であるが,これも読ませていただく。

 通産省,法務省といった官庁や新聞社などとの協調体制を作っていく必要がある。

 これは答申を出していくということが前提になっているから,審議会から一つの方向を出す場合には,特に関係省庁や新聞社等,言葉,文字の使い方にかかわる人たちの幅の広い支持を得ながら進めなければならないということで,大切な観点だと思う。

 現実の文字の使用状況を押さえるために,検討範囲の漢字の字体・字形が,沿革資料やJIS規格票・新聞・印刷関係などでどうなっているかの資料を作成し,具体的な作業を通して問題の検討を進めていく必要がある。
 資料配布(JIS第1・第2水準の選定基準,JIS第3・第4水準の制定の趣旨など)やヒアリング(白川静氏など)を積極的に行って,検討を進めていく必要がある。
 各分野で漢字使用の現状(字体問題を中心)がどうなっているかの様子を聞く必要あり。

 二つ目の○と三つ目の○は,現在使われている漢字の実態というものをきちんとつかんでいこうということにつながっていくわけである。このことに関連して,本年度の世論調査はー先ほど庶務説明であったが,第2委員会としては御遠慮した。昨年度,第2委員会の字体の問題にかかわる調査が少し行われているが,あれをもし今度出す答申に役立つ形で据えるとすれば,ちょっと語弊があるかもしれないが,あのような一般的なレベルでの調査でやってしまうと,かえって邪魔になることさえあり得るのではないか。慎重に準備をした上で,きちんとした役に立つ調査をやるべきではないかと私個人は思っている。

水谷(第2委員会)主査

 次のぺージヘ行って,4,5,6,7は,どのように進めるかにかかわる小さな柱である。

4 康熙字典の位置付けについて

 康熙字典は今でも権威を持っているが,あの中には使われない漢字もたくさんある。漢字の時代的な変化を踏まえて議論をしていく必要がある。
 康熙字典というか,康熙字典体の位置付けが難しいように感じる。

 こういう意見が出てきたのは,最初の2の項目にも書いたように,康熙字典体に即すべきだという意見に対して,康熙字典そのものについての考え方もきちんとしておくべきだということで出てきた意見である。


5 固有名詞の扱いについて

 国語審議会は今まで固有名詞のことに立ち入らないできたが,今期はどうするか。
 議論の中では,固有名詞のことに,触れないわけには行かないのではないか。
 JIS漢字を見ても,地名・人名で使われる漢字をどう扱うかの問題が大きい。

 この問題は,よく議論の対象になる「おう外」の場合もそうであるが,「」の字は,一般的な言葉として使われる場合はどうかという観点で調べてみると,ほとんどの場合が固有名詞として使われている。そういう固有名詞としての漢字の使い方をどう考えるかということは,恐らく第2委員会の中だけでは判断し切れない,あるいは審議会全体の責任においてお考えいただかないと決断できない事柄ではないかと思っている。


6 国際社会との対応について

 今期の答申に際しては,どの程度,国際的な視野に立つかを検討する必要がある。具体的には,ユニコードの位置付けや国際的な漢字字体の統一の問題などがある。

 これも非常に大きな問題で,決して無視することはできない。しかし,それを扱うとすれば,どのように処理できるのか,片付けていく見通しが立つのかということが極めて不安な課題である。しかし,直視しなければならない課題であることは確かだと思う。


7 学校教育との関係について  

 学校教育へ配慮する必要がある。(古典との関係,漢字学習の負担,「渡り」の指導など)

 この「渡り」 という言葉は,小林委員がよくお使いになる概念で,漢字を習得したり使ったりするときに,例えば,「応」と「應」のように異体字関係にある,二つの字体がどのようにつながっていくかということについての一つの理屈を表す言葉である。学校教育の中での漢字の扱いの問題にもやはり配慮しなければいけないだろうということである。
 こういったような御意見が2回の委員会を通して出ていた。やっと動き始めたというか,足を前へ出して,また,もしかすると後ろへ下げるようなことが起こるかもしれないが,そのような形で歩み始めたところである。
 それでは,この後,次の沿革資料についての説明を小林委員にお願いしたいと思う。

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