国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 協議3

氏原国語調査官

 そして,今の三次委員のお答えとも関係すると思うが,多くのパソコンの場合は,シフトJISというコードを採用しているわけで,8ぺージの真ん中辺りにある「開発の方針」の「符号化」の項に,「この新JIS漢字コードは,明確にJIS X 0208の図形文字集合拡張と位置付け,更に,現状の使用環境で直ちに実装可能であり,利用可能であることが前提である。従って,現実的に最も制限の多い符号化方法である通称“シフトJIS"――「最も制限が多い」というのは,空き領域が少ないということである――に配慮し,最低2000文字の第3水準と,それに更に3000文字を追加する第4水準の二つの水準を設ける」とある。したがって,シフトJISの環境の中でも入るように2000字の第3水準――少なくとも2000字についてはほとんどのもので搭載可能なわけだから,第3,第4の両方ということだけではなくて,第3だけが人るといったこともあり得るわけである。
 最後のぺージ,先ほどは読まなかったのであるが,どういうものが漢字集合に入ってくるかというところの7番である。そこに「JIS X 0212及びJIS X 0221に含まれる文字であっても,あえて重複符号化を行う」とある。この「X0212」というのは,先生方も御承知のように,補助漢字のことである。補助漢字に含まれている文字であっても,あえて重複符号化を行うということで,はっきりとは書いていないが,補助漢字に入っていても第3水準,第4水準の中に取り入れて,それにコードを振ってしまおうというわけであるから,実質的には補助漢字をほとんど無視する,と言うと言葉が強過ぎるけれども,そういった性格の集合になる。
 そういう意味では,第3水準,第4水準の計画そのものが,今補助漢字という漢字集合があっても実際にはなかなか使われない。そこで,もっと実効性のある,実際に世の中で使われるような文字をきちっと選定し直して,それを第3水準,第4水準として規格化する。そういうことがこの計画の趣旨だと思われる。

江藤副会長

 今日配布された資料3の2ぺージ目,6番のところをちょっと御覧いただきたいと思う。「国際社会の対応について」というところで,「具体的には,ユニコードの位置付けや国際的な漢字字体の統一の問題などがある」という問題点が指摘されている。
 このユニコードというのは,今井上委員の御質問を契機にしていろいろ御説明があったJISの上にあるもののようで,ISOということも井上委員がおっしゃったけれども,国際標準化機構というのがISOというもので,そこで1993年に文字コードの体系の世界標準規格というのが決定されていて,それがユニコードというものなのである。
 この問題について,私の持っている資料によると,ユニコードの中で漢字に割り当てられている文字数は2万902文字だそうである。しかし,これは漢字国でないアメリカのコンピュータ産業が開発した文字コードなのである。この事実に含まれている問題について,これは文学者の面からで多少偏っているかもしれないが,目木晴彦さんという作家がおられて,まだ発表していないのであるが,『三田文学』の冬の号,来年の1月に刊行される号に掲載予定の論文があって,実はその論文を筆者の許可を得て,未発表の段階ではあるけれども,国語審議会の第2委員会で併せて御検討いただきたいと思い,事務局の方に既にお預けしてある。今その内容については一々申し上げないけれども,非常に重要な問題が含まれていると思われるので,今後第2委員会で御論議いただくときには,ひとつこのような問題も是非お取り上げいただいて,お考えいただければ幸いである。
 さらに,その経過も,すぐに結論が出る問題ではないと思うけれども,どのようになっているのか,ここでお教えをいただければ幸いである。そのことをちょっと御紹介して,お願いをする次第である。
 どうもありがとうございました。

徳川委員

 二つ質問させていただきたいのであるけれども,資料5,9ぺージの拡張計画の最後のところに1から8まで挙がっている。説明では省略されたと思うが,UCSという言葉が入っているけれども,これは何かというのが一つである。
 もう一つは,「参考資料集」の118ぺージで御説明になった独立,対応,同値という概念であるけれども,それなりの説明はここに書いてあるが,どれを対応と考え,どれを同値と考えるのかというのは,どういう根拠でしていらっしゃったのか。一つ一つのことではなく,一般的なお答えで結構であるけれども,教えていただければと思う。

氏原国語調査官

 まず,UCSの方であるが,これは「Universal Multiple-0ctet Coded Character Set」の略称で,国際符号化文字集合のことである。もともとUCSというのは公的な統一文字コードの国際標準規格で,ISO (国際標準化機構)がIEC (国際電気標準会議)と共同で制定した規格である。それを今申し上げたようにユニバーサル何とかでは長いので,単に10646とか,UCSというふうに表現しているということである。
 もう一つの御質問の同値とか対応についてはどういったことで決めたのかということであるが,第1次規格の時に,この規格票の制定に深くかかわったのは前の国立国語研究所の所長の林大先生である。実際にこの字とこの字は同値だから符号を一つにしよう,これとこれは独立だから二つのコードポイントを振ろうといった作業は,明確な方針ー必要ならば,その時の林先生の手書きの資料をお出しすることもできるが,林先生が詳細な検討方針を立てて,それに基づいて,これとこれとは同値,これとこれとは独立といったことを一字一字検討なさったわけである。
 ただ,このときに符号が一つになっている同値関係というものは,「漢字字体関係参考資料集」の119ぺージの解説表6にあるが,「字形の違いがわずかであると認めるものの例」といったものを林先生が判断なさったときの基本は,当用漢字字体表で,異体の統合とか,似たような活字があるものを一つにしたとか,あるいは,例えば「平」という字の点の向きが漢数字の八のようになっているものを片仮名のソのようなものにしたとか,当用漢字字体表での原則があるわけであるが,それがJISで二つの異体字を扱うときの基本的な方針になっているように思われる。もちろん,個人でということではなくて,それは当然委員会の中で了承されているのであるから,その部分を受け持ったのが林先生だということである。

徳川委員

 UCSは,さっき副会長がおっしゃったことと何か関係があるだろうと思って,ちょっと質問したわけである。
 それから,同値,対応の問題であるけれども,さっき地名・人名の話が出てきたが,地名・人名をめぐって,これは同値なんだからというふうに納得すれば随分簡単になったと思うのである。例えば今の「平」という字でもいいのだけれども,それは同値とされても,何平でも,松平でも結構であるが,その人が納得したのかしないのか知らないが,さっきの「槙・槇」などという字は納得しない人がいるから,同値ではない二つの対応の文字が入ったんだろうと考えるのである。だから,日本人が,これはどっちと思うのか,対応と思うのか,あるいは独立と思うのかということに基づいて,いろいろな議論がされているのだろうと思う。1億3000万人いるから,なかなかまとまらないということはよく分かるけれども,また大きい問題が残るなという気持ちである。

清水会長

 まとまらない難しいところを,ここでまとめてしまおうということかもしれないが……。ほかにはいかがか。どうぞ御自由に御発言いただきたい。

中西委員

 間違っているかもしれないけれども,当用漢字というのは,非常に煩瑣(さ)な字形を簡略化して,より文化の普遍性のようなものを求めようという意図があったんじゃないかと思うのであるが,JIS漢字というのは,そうではなくて,手書きから機械になったときに,機械がどれくらい実際の手書きに変わるべき機能を代替できるかという機能の完全さというか,能力の大きさというか,そういったものが一つ目標になっていたのではないかと思う。だから,これを見ていると,私は美しさを感じる。機械がこんなふうにあらゆる字を第1,第2,第3というふうな水準で入れていこうとする。そこに一つの日本の機械に携わっていらっしゃる技術者の美学的な志向みたいなものを感じたりした。
 したがって,ここで,JIS漢字をどのような観点から取り扱うのかという基本が今一番大事なので,それを議論すべきではないかと思う。それをどこでどういうふうにやっていただくのか,第2委員会でやっていただくというのだったら,第2委員会の当用漢字,あるいはこれから制定すべき理想的漢字表というものとJISを私たちは目下こういうふうに考えているというお返事でもいただければ,今日の議論は,そろそろ時間でもあるので,終わるんじゃないかと思う。

水谷(第2委員会)主査

 今の段階では,おっしゃったような主張に対するお答えはできないが,今日井上委員,副会長をはじめとしていろんな方から出たお話は大変参考になった。
 井上委員の視点というのは,どちらかというと大き過ぎる問題の中で,焦点を絞りたいということだったと受け止めた。例えば,ルールというものを設定するとすれば,どのような条件下で絞るかということが大切だなと思って,どちらかというと,今は焦点を定める動きの中にある。しかし,それを定めるためにも,周辺的な問題がよく分かっていなければならない。
 前期の審議会では,句読点の付け方とか符号の問題も実は話題に挙がっていたのだけれども,追求することなく焦点がワープロの漢字という字体のところへ来てしまったけれども,やっぱり大きな問題を避けてはいけない。
 ユニコードの問題も同じであって,大きな国際化,情報化の中でも,ワープロの字体の問題という観点をいつも考え続けなければならないだろう。この仕事を続けていく中では,今日は幸い有り難いことにJISに関する見方も,それを受け止める形でお話ししていただけたので,少なくとも審議会は審議会だというふうに切り離し過ぎて進んでしまうと,現在の日本ですべての人に役立つような形での答申を作り出していくことに背を向けることになると思っているから,その意味ではJISでやっていらっしゃることにも貢献できるような情報を用意していきたい。それから,JISの中にある努力の結果もちゃんと取り込んでいきたい。そういう姿勢でこれから進めていきたいと思う。
 美学,美しさの問題にどこまで突っ込んでいけるかというのは,自信はないけれども,姿勢としては守り続けたいと思う。もっとも,こういうことは事務局に相談をしないで勝手に申し上げてはいけないのかもしれないが,個人的にはそういう気持ちでいる。

清水会長

 第2委員会の主査として,今のお話のような趣旨で進めたいということであるし,ISOの方にも,JISの第3水準,第4水準と増えていくと影響を与えていくのではないかと思う。
 そろそろ時間になってきたけれども,第1委員会の方については,余り御議論をちょうだいする時間がなくて大変申し訳なかったと思うが,前回に引き続いて貴重な御意見を賜ることができた。
 なお,ここで1点御報告申し上げたいのは,第1委員会所属委員の追加指名である。川委員からの御希望があったので,第1委員会にお入りいただくということをひとつ――お手元のファイルの中には入っていないようであるので,追加していただきたいということである。どうぞ御了承いただきたいと思う。
 最後になるが,当面の日程,これからの日取り,進め方,事務局の方から何かお話があったら,伺わせていただきたいと思う。

大島国語課長

 次回の総会の日取りであるけれども,第1委員会,第2委員会の審議の状況も勘案しながら,会長,副会長と御相談をさせていただいて,平成9年3月の中旬を今のところは考えている。日時,場所等は未定であるので,追って事務局の方から開催の通知を差し上げることにしたいと考えている。よろしくお願い申し上げる。

清水会長

 その時には,第1委員会の世論調査の結果も出るわけであろうか。

大島国語課長

 その予定である。

清水会長

 そういうことである。なるべく早い時期にまた御案内させていただくので,よろしくお願い申し上げたいと思う。
 本日の総会はこれで終わらせていただく。

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