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次第・議事要録 第2委員会における審議状況について

清水会長

 それでは,まだあと二つの委員会が続くので,また後ほど,少し時間があったらちょうだいすることにさせていただいて,それでは第2委員会の方の御報告をいただきたいと思う。樺島主査,よろしくお願いする。

樺島(第2委員会)主査

 それでは,第2委員会の報告を申し上げる。
 第2委員会は,常用漢字以外の漢字の字体の標準をどうするかということと,JISなどに見られる常用漢字以外の漢字,つまり表外字であって常用漢字に準じて簡略化された文字をどうするかということ,そういう問題に取り組んできている。この「論議の概要−2」は,構成としては「論議の概要−1」と同じで,「・」が付いているのは「論議の概要−1」のままのものである。「◎」になっているものが新しく決まったことであるので,新しく決まったことを中心に御報告申し上げる。
 まず,<1 基本理念にかかわること>の2番目,「「いわゆる康熙字典体」を標準字体とすることについて」であるが,20期から「いわゆる康熙字典体」を標準とするという方針があったが,この「表外漢字は「いわゆる康熙字典体」を標準字体とする」という基本方針について改めて検討した結果,今期も引き継ぐことにするということになった。
 それから,資料4に新聞協会からの「表外漢字字体表試案」に関する意見書があるが,先ほど説明していただいたけれども,これの菱形の2番目の所に,「しんにょう」「しめすへん」「しょくへん」については,幅広く許容されることを希望するという意見が出ている。それで,「しんにょう」「しめすへん」「しょくへん」について特に考え,標準としては「」「」「」を標準字体とするが,後ほど説明申し上げるように,新しく作成する資料などを調査した上で,もし支障がなければ,「」「」「」を,これは現在JISなどでこの形になっている表外字に限って一括許容することとしている。
 一括許容というのは,「表外漢字字体表試案」のような形で報告を出すときに,一括してこれになるということを前書きに明記するということである。
 (3)の「表外漢字字体表の性格について」,これは標準字体が「印刷標準字体」となっている。つまり,「印刷」という言葉になっているが,現在はパソコンなどディスプレイ上の文字が多く使われるが,それも含むのかという問題である。このディスプレイなどの文字はドット数に拘束されることから,これをこちらの方で規制するわけには行かないので,そこにあるように,「電子メディアとの関係についてはドット文字そのものを対象とするということではなく,試案にあるように,表外漢字字体表に配慮してほしいという程度の文言を明記する。」とした。表外漢字字体表に配慮して倣ってほしいというか,できるならば,そういうことにしてほしいということである。
 それから,4番の「簡易慣用字体について」の(ア)であるが,これは字体表試案の簡易慣用字体という項目というか,そこに字体を示してあるが,これは残そうということになった。つまり(2)の「しんにゅう」「しめすへん」「しょくへん」を一括許容し,それだけに限るならば,この簡易慣用字体というのは設けなくても,印刷標準字体だけでいいじゃないかということになるが,そういう考え方は採らずに,後の(ウ)の方にかかわるが,簡易慣用字体という考え方は残そうということである。
 (イ)の位置付けは,これは前に申し上げたことなので飛ばして,「(ウ)簡易慣用字体の数について」。これは,2の「しんにゅう」「しめすへん」「しょくへん」の略体を許容するという以外の問題であるが,各種資料に基づいて簡易慣用字体の数をなるべく紋り込んで――これはなるべく広くした方がいいという意見も委員の中からはあるのだが,なるべく紋り込んでいく。そして,今期作成する資料などを調査した結果,本表の前書きに,「しんにゅう」「しめすへん」「しょくへん」などの一括許容が明記された場合には,これは簡易慣用字体から外した形で書くということである。

 <2 手書き字形にかかわること>は,今後の問題として残っている。特に報告することはない。
 それから,<3 字体差・デザイン差の示し方>。デザインの問題については,新聞協会からの資料4にも「噂」とか「羽」などのことが出ている。(2)の一番下の△を付けたところ,これが新しく「論議の概要−1」にあったものに加わったもので,「デザイン差とする範囲の再検討をする」としてある。例えば「噂」のつくりの方の「ハ」と「ソ」の形,それから「・煎」の「ふなづき/つき」,これをデザイン差として扱っていいものかどうかということである。これはこれから考えるという,新しく出てきた問題事項である。
 以上,整理すると,前回から「・」を付けて掲げている問題以外に,「しんにゅう」「しめすへん」「しょくへん」を一括許容という形にしていいかどうかということがあり,これはちょっと調べてみようということになっている,それから現在表外字について簡単な形が行われている文字,JISなどの文字の範囲に限ってであるけれども,その中からできるだけ数を紋って,簡易慣用字体を設ける,それを具体的にどうするかというのが残っている。
 <4その他>であるが,今回また,私のような国語学者から見たら非常に有り難い資料がいろいろ出ている。この「今期の作成資料について」は,第2委員会の副主査である小林委員から説明を申し上げる。「その他」のところは,前からの問題のものである。それでは,新しく作成した資料について解説をお願いする。

小林(第2委員会)主査

 それでは,机上に配布されている「明朝体活字字形一覧」上・下2冊,これについて御説明申し上げる。
 ただ今,樺島主査から御説明申し上げた2枚のプリントの最後のところ,2ぺージ目最後のところの<4 その他>で,「(1)今期の作成資料について」とあるところに,(1)「明朝体活字字形一覧−1820年〜1946年−」とある。これが机上に置かれている2冊の資料である。
 まだこの資料は数日前に委員のところに送られてきたばかりの,出来たてのほやほやで,第2委員会においても,その席上でまだこれを取り上げて検討している段階ではないということで,審議会としてまずこういう資料が出来上がっての初見参ということで御説明申し上げることになる。
 私どもが,表外漢字の印刷用の活字字体について検討を進めていく上において,いわゆる「康熙字典体」という言葉で言い続けてまいったが,それはどういうものであるかということを確認するためには,戦後の資料以外に戦前,明治・大正・昭和を通しての資料で活字字形がどう作られてきたかということを調べ上げなければならないだろうということで,文化庁国語課の方で費用を掛けて作成してくださった。
 まず,前書きのところを見ていただくと,その第2段落のところで,本資料集は佐藤タイポグラフィ研究所の御協力で出来上がったということが書いてある。目次のところで,凡例,解説,それから資料というふうになるわけであるが,その凡例のところを御覧いただいて,資料について理解をしたいと思う。凡例1ぺージ目,1のところを読み上げる。

1 本資料集は,主として以下の目的で作成したもので,国語審議会及び関係者の参考に供するものである。
(1)  現存する活字の総数見本帳を用いて,明治以来の我が国で実際に使われてきた明朝体活字の字形とその異同の範囲を明らかにする。
(2)  上記(1)とかかわって,第21期国語審議会審議経過報告「U 表外漢字字体表試案」に示されている「いわゆる康熙字典体」の字形を具体的に確認する。

 この目的で,この資料が作成されたということである。そして,続く2のところで資料について細かく説明がなされている。その2のところで,これが文政3年,1820年から昭和21年,1946年までの127年間ということになるが,その活字総数見本帳を資料としたという大変貴重なものだということがまず書かれている。
 その127年間において,3のところに(1)から次のぺージにわたって(23)まで,23種の活字見本帳の「印刷刊行年」及び「表題・印刷所名」が年代を追って書き記されている。その2ぺージ目の(14)と(16),これが基本資料となるということで,23種中(16)と(14)のナンバーが付けられているものが基本的にまず軸とするものである。そのことを,2ぺージ目の「4-1-1」のところに記してある。これを軸にして並べて,それに参考として表の最後に掲げてあるが,大漢和辞典,それと表の一番最初である,康熙字典道光版というのを添えてある形で分かりやすく,理解しやすくという工夫をしてくださっている。
 これを見てまいると,14番の1913年,大正2年の築地活版,それから16番の1914年,大正3年の博文館印刷所,これが基本資料になって,基本字種をその二つによって確定したと書いてあるが,重なりがあるので1万1,735字種が基本字種になって,これをいわゆる康熙字典の214部首順に整理していくというふうな形を採ったと説明がある。
 それで,2ぺージの一番下の行であるが,見やすくするために活字の大きさがばらばらではちょっと見にくいというので工夫をしてくださって,すべて角寸法が8ミリメートルになるように拡大ないし縮小する形で作ってくださってある。
 ということで,基本的に私どもはこの1万1,735字種を基にしながら,過去の明治・大正・昭和戦前までのいわゆる康熙字典体というのを,これから第2委員会で見ていくということになるわけである。
 あと,14ぺージのところから,それそれの資料についての解説があるが,各資料についてどういう性質のものであるかというところを説明してあるので,それは各自で御覧いただきたい。

小林(第2委員会)主査

 そして,いよいよ資料そのものであるけれども,まず資料そのもの,色紙の後のところに,部首索引ということで,いわゆる康熙字典の214部首に基づく並べ方をしてあるということで,索引をまず作ってあって,以下部首「一」からずっと並べるという形である。
 個別に見ていくときに,先ほど樺島主査からお話があったように,これからデザイン差の問題も検討課題の一つということになる意味で,サンプルとして290ぺージの一番下のところにある「牙」の字を見ていただきたい。「牙」という字が,それそれの資料においてどういう印刷字形として登場してきているかということをサンプルとして御覧いただければと思う。そのほか,これから様々な字体,例えば,「しんにゅう」等についても検討することになるが,細かいことを,「いわゆる康熙字典体」の字形というものを,これを用いて確認しながら,私どもは仕事をしていくということになる。
 なお,下巻の方を見ていただくと,後ろの方に参考として江戸時代の「五車韻府」の原寸影印も添えてあるし,それから(14)と(16)の資料に基づいて並べていったときに,(14)と(16)にないものについてはこぼれてしまうので,そこで「一覧表にない漢字」というのが639ぺージ以下のところに掲げてあるというように,遺漏のないようにこの資料を作ってくださったということを,まず御報告申し上げる。これから私どもが使うものであるということで,資料の性質をざっとお話し申し上げた。
 それと,樺島主査の方のプリントのあと二つであるが,2ぺージ目の下の方,<4 その他>のところの(1)の(2)に,「凸版印刷漢字出現頻度数調査」というのが載っているが,これは21期の時に凸版と大日本と共同の3社のものを調査した資料が,机上のたくさん積み上げているものの中にあるが,そのうちの凸版の部分だけについて,資料に偏りがないように配慮した新しいものを凸版印刷にお願いして再度作成してもらったものである。この資料,Aの方は今机上にはないが,これもいわゆる字体資料として,この資料を基に検討を進めていくというものである。
 Bについては,「読売新聞漢字出現頻度数調査」というものであるが,これは出来上がっていない。今の予定では9月下旬に出来上がるということである。朝日新聞の方では社の都合で御作成いただけなかったが,読売新聞の方で,新聞における漢字出現頻度数調査をしてくださったのが,間もなく出来上がってくるので,これも第2委員会の資料として使っていくことになる。
 なお,若干の補足であるが,お二人に一山という形で机上に積み上げてある資料のうち,「国語施策沿革資料11と12,漢字字体資料集,諸案集成」というのがある。これは明治・大正・昭和にわたっての行政上等でのいわゆる字体資料であるので,今御説明申し上げた,「明朝体活字字形一覧」上・下2冊と併せて,これがまた活用されるということと,それから昭和・平成における字体問題については,やはり同じ机上に「字体・字形差一覧」という冊子がある。平成9年10月作成の「字体・字形差一覧」,これが現在どういう字体・字形が使われているかという資料であるので,これも再度私どもは活用して研究を進めていくということになるということを申し添えておく。以上である。

清水会長

 大分専門的なことで,なかなか私などにはよく分からないけれども,しかし字形を決めるというのは,JIS規格の次の段階への大変重要な提案でもあるので,慎重に扱っていかなければいけないのではないかと思う。
 どうぞ御質問,また御意見があれば。これからの進め方や,資料についてでも結構である。この資料を使い,「いわゆる康熙字典体」の字形を再度確認するという作業を行うことになるかと思う。これは,資料としては大変な労作だと思う。
 何かないか。はい,どうぞ。

柏倉委員

 私には宝の持ち腐れであるが,大変な宝物であって,大学の図書館だとか,それから国文科なんかもすぐ欲しがるわけであるけれども,国語課としては今後どの程度のところにどういう形で配布なさるおつもりなのであろうか。

清水会長

 この資料についてであるか。

柏倉委員

 ええ,この資料を。

鎌田国語課長

 もともと作っている目的が国語審議会での審議のためということであるので,基本的にはこの審議会内ということにしているが,ただ,研究資料としては貴重だということで,大蔵省印刷局から一応市販するという形にはなっている。したがって,希望する方は市販の形でお求めいただけると思うが,実際には余り売れるような性格のものではないと思う。

柏倉委員

 了解した。いわく言い難いところを斟(しん)酌して,国文科には私の分を差し上げることにしたいと思う。

清水会長

 一応は市販しているという形にもなっているということである。
 どうぞ,何か御質問があったら。これは確かに国語関係,国文関係の先生にはよだれの出るような資料であると思う。
 では,後ほどまたお気付きの点があったら,御質問いただくということにさせていただく。

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