2023年6月23日
飛鳥の風土と営みの魅力
飛鳥資料館第14回写真コンテスト「飛鳥のくらし」
奈良文化財研究所飛鳥資料館 研究員 竹内祥一朗
飛鳥の歴史と文化を紹介する飛鳥資料館では、毎年写真コンテストを開催してきました。このコンテストでは、応募者が写した飛鳥の魅力を、飛鳥資料館での展示を通して来館者に発信することをねらいとしています。作品の審査では「飛鳥の新たな魅力の発見」とともに「飛鳥の歴史と文化の表現」を重視しており、奈良文化財研究所ならではの写真展として人気を博しています。
写真コンテストは、2011年に「奥飛鳥の文化的景観」が国の重要文化的景観に選定されたことを契機に開始されました。「文化的景観」とは、地域の歴史と風土に根差しながら営まれてきた、「くらしの風景」を重視する文化財です。第14回目となる今回は、改めて「飛鳥のくらし」をテーマに広く作品を募集し、展示します。
飛鳥資料館第14回写真コンテスト「飛鳥のくらし」ポスター
「日本の原風景」と讃えられる飛鳥の風土は、古代の遺跡だけでなく、周辺に広がるどこか懐かしいくらしの風景も一体となって成り立っています。ここでは飛鳥のくらしの風景の魅力を少しだけ紹介します。
明日香村の棚田での稲架掛けの風景
上の写真は2022年10月末に撮影しました。刈り取った稲を日光と風で乾燥させるため、稲架に掛けている場面です。稲架掛けの風景は飛鳥の山間部の棚田でよく見られます。棚田では斜面に水平面を設けるため、等高線に沿って小さい水田が積み重ねられます。こうした小区画の水田では機械よりも手作業による収穫が効率的です。また、棚田がある部分は谷地形で、用水が得やすく湿潤です。傾斜地の谷地形が棚田として利用され、小区画の水田が稲架掛けを生んでいるのです。
棚田の周辺にも目を移してみましょう。棚田と山林の間の緩やかな斜面には民家が立地しています。ここは山からの水を得やすく、さらに谷地形の棚田と比べて土砂災害のリスクが低い場所です。後背の山林は棚田に注ぐ水源を蓄える森であり、木材や山の幸をもたらす場でもあります。手前に竹林、奥に雑木林が見えますが、棚田の稲架に用いられる竹と雑木はここから採取したものです。このように、何気ないくらしの風景でも、その土地その土地のくらしの作法にしたがって、いろいろな要素が絡み合いながら、くらしと風景を形作っているのです。
奥飛鳥の集落
明日香村細川の古墳と水田
明日香村上居の柿畑
明日香村栢森の綱掛神事
このほかにも、飛鳥のくらしの魅力は季節や地域によっても多彩です。大和棟の民家、遺跡と共存する田園風景、丘陵に広がる果樹園、古式ゆかしい民俗行事など、その魅力はとても語り尽くせません。この続きは、飛鳥資料館写真コンテストにお越しいただき、作品の鑑賞を通して知られざる飛鳥のくらしの魅力に触れてみてください。
奈良文化財研究所 飛鳥資料館 第14回写真コンテスト「飛鳥のくらし」
(住所)〒634-0102
奈良県高市郡明日香村奥山601
- 問合せ
- TEL:0744-54-3561
- 交通
- 近鉄橿原神宮前駅・飛鳥駅から 明日香周遊バス(赤かめ)「明日香奥山・飛鳥資料館西」下車
- 又は近鉄・JR桜井駅から 奈良交通(明日香奥山・飛鳥資料館西行)バスで「飛鳥資料館」下車
70歳以上の方は年齢のわかるものが必要です。