文化庁主催 第5回コンテンツ流通促進シンポジウム“次世代ネットワーク社会の到来は著作権制度を揺るがすのか”

第2部:研究報告

「平成18年度 次世代ネットワーク社会における著作権制度のあり方についての調査研究」

澤伸恭(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社客員研究員)

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 社会の変化への対応方針の4つ目です。先ほど市場で解決できない問題がある場合には、法制度での対応を検討する必要があるということで意見の一致があったと申し上げましたが、政策が関与すべき場合はどのようなものか、またその度合いについては様々な御意見がありました。その結果、市場では解決できない場合と、その場合の許諾権のあり方について、著作権制度は許諾権を基本とした制度だが、社会の変化に対応し、著作物の流通を推進するためには、一定の場合、(現状のあり方も含め)許諾権を尊重しつつもその行使を制限しなければならないこともあり得るという整理がなされました。また、著作物の流通を推進するため、許諾権のあり方の見直しを行うかどうか判断を要する場合については、立場の違いにより様々な意見がありました。

 社会の変化への対応方針の5つ目です。許諾権の見直しを行うかどうか判断を要する場合について、大きく4つの場合の意見を頂戴していますので御紹介したいと思います。
 1つ目は公益性が高い場合に許諾権の見直しを検討すべきとする意見です。これは現状でもあるわけですが、許諾権を見直す場合でも対価が支払われる方法、例えば報酬請求権への変更や、補償金の導入というような方法も検討すべきではないかという意見です。また、社会的必要性、文化的弱者への配慮等の観点から権利制限規定等は重要ではないかという意見をいただいています。
 2つ目は取引コストが特に高い場合に見直しを検討すべきとする意見です。まず、権利者不明の場合は、権利者が分かっているケースと比べてとりわけ取引コストが高くなってしまうため、市場による解決では困難であるということで、許諾権の見直しを検討すべきとする意見がありました。この場合、取引コストを下げるための集中管理等の方策、これは権利者が分かっていて登録するということが前提となっているわけですが、その集中管理等の方策の対象とはなり得ないので、許諾権の見直しを行うかどうか検討すべきという意見もありました。また、複数権利者の場合は、一部の権利者が許諾しないと、著作物が流通しないことになるので、政策的手段の効果が非常に大きいのではないかという意見がありました。また、その政策的手段を講じることで、流通手段等の変化に対応して流通促進が可能となるのではないかという意見がありました。
 3つ目は、技術の変化によりこれまで想定されていなかった場面で権利処理が必要となる場合に見直しを検討すべきとする意見です。これについては、情報流通の円滑化のため著作物利用の自由をむしろ原則とすべきではないかという意見がありました。
 4つ目は、権利者にとって利用を禁止するメリットが小さい場合です。これは、例えばサムネイル的な軽微利用や背景的な写り込み等を想定しているわけですが、このような場合は許諾権がない方がかえって流通がうまくいくのではないかという意見がありました。

 このような社会の変化への対応方針を踏まえて、次世代ネットワーク社会の変化に対応するための具体的な方策について検討しました。まず、市場による解決とそれを支援する法制度の整備については、任意の登録制度と任意の集中管理の仕組みについて検討しています。また、法制度による許諾権の見直しを伴う方策については、裁定制度の強化、報酬請求権への変更等を含む権利制限の導入、法制度による強制的な登録について、検討しています。具体的な方策それぞれについて、検討すべき理由、具体的な方策の例、課題について検討しました。
 出された意見のごく一部を御紹介させていただきたいと思います。
任意の登録制度については、取引コストを下げ、効率的に許諾を得られるようにするために導入を検討すべき。無方式主義を維持しつつ、流通促進等を求める権利者のみが任意で登録する仕組みとすべきという御意見をいただきました。
任意の集中管理の仕組みについては、民間による著作権・著作隣接権の集中管理の仕組みを構築すべきという御意見をいただきました。
裁定制度の強化・権利制限の導入等については、権利者の意思表示がない、所在が分からない等の場合には市場による解決とそれを支援する法制度の整備では対応できないために導入を検討すべきという御意見をいただきました。
法制度による強制的な登録に関しては、調査研究会の中では懐疑的な意見が非常に多かったです。

 最後にまとめです。
 今回の調査研究の中で、次世代ネットワーク社会において想定される社会の変化について検討しましたが、一致した見通しを持つには至りませんでした。想定される社会の変化には、従来の著作権制度では対応困難との考え方が示された一方、十分に対応可能との意見もありました。
 次に、この調査研究の中で著作権制度のあり方に関わる基本的姿勢について整理した上で、社会の変化への対応方針について議論しました。
 そして、この著作権制度のあり方に関わる基本的姿勢、社会の変化への対応方針に基づき、次世代ネットワーク社会の変化に対応するためにどのような方策が必要となるか、またその課題は何かということについて議論を行いました。この議論を通じて提示された方策の提案は、市場による解決とそれを支援する法制度の整備と、法制度による許諾権の見直しを伴う方策の大きく2つに分け、それぞれ具体的な方策の例、その課題とともに整理しました。
このような調査研究を踏まえて、今後のこの成果が著作権制度の検討における議論の材料となれば大変うれしく思います。
 以上、非常に駆け足でしたが、第2部の研究報告とさせていただきたいと思います。第3部では、具体的なテーマに関する議論が専門家の先生の中で交わされると思いますので、そちらに引き継ぎたいと思います。どうもありがとうございました。

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