国語施策・日本語教育

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5 敬語の問題

<<敬語部会>>

〔部会長〕

 金田一京助

〔部会員〕

 安藤正次  牛山栄治  折口信夫  佐野利器  沢登哲一  坪田譲治  照井猪一郎  務台理作

〔部会開催〕

 第1回(昭和25.6.7)〜第18回(昭和27.2.29)

〔提出資料〕

  1.  敬語は有用か無用か【金田一委員】
  2.  敬語法上の問題のありどころ【国語課】
  3.  敬語法上の術語について【国語課】
  4.  代名詞の用法について【国語課】
  5.  小・中学校(男女)の自称代名詞を自由作文のなかからひろってみた一つの統計資料【国語課】
  6.  女性の自称について【国語課】
  7.  各種低学年教科書における「お」の用例【国語課】
  8.  「お・ご」の用法【国語課】
  9.  敬称について【国語課】
  10.  新聞紙上の敬称の用例【国語課】
  11.  皇室用語(案)(昭和22年8月当時の宮内庁当局と報道関係者との協議になるもの)〔うつし〕【国語課】
  12.  皇室用語の問題【国語課】
  13.  動詞の敬語法【金田一委員】
  14.  教室用語【国語課】
  15.  対象の性別による「くん」と「さん」との新しい用法について【国語課】
  16.  あいさつ語【国語課】
  17.  商業主義と敬語【国語課】
  18.  公務員の用語について【国語課】
  19.  これまでのとりまとめ【国語課】
  20.  「これからの敬語」第1稿・第2稿【金田一委員・国語課】

 第1回の部会では,まず次の諸説を検討した。

  1.  敬語法は日本語の美しい特徴であるから,これからもぜひ保存していかなけいればならない。
  2.  日本語の敬語法は封建時代の遺習であるから,これからの民主主義の世の中では,当然,清算すべきものである。
  3.  敬語法は尊敬感情の現れである。民主主義の基本は個人が互に他の個人を尊敬することにかかっているから,これからの世の中にも,ある程度の敬語は有用である。

 けっきょく,第3説に基いて,次の方針で審議を進めていくことに決定した。
 現代における敬語法の行きすぎをいましめ,誤用を正して,できるだけ平明・簡素な形に整理する。
 この方針に基き,第2回以後の部会で,代名詞の用法その他の諸項目について,順次に審議を進め,次のことを決定した。

  1.  日本語における自称および対称の代名詞が多種多様にあるなかで,特に「わたし」および「あなた」を選んで,これを標準の形とする。
  2.  敬称については「さん」(あて名用語としては「さま」)を標準の形とする。
  3.  「お・ご」の整理については,実際に有用なものと,そうでないものとがあることを例示して広く世の反省を促す。
  4.  あいさつ語については,戦後における行きすぎをいましめる。
  5.  対話の基調として「です・ます」体を原則的に採用し,「形容詞+です」の語法を認める。
  6.  動詞の敬語法としては「れる・られる」型の適正な用法を認めるとともに,「お〜になる」型をとる。「お〜になられる」の形はとらない。
  7.  教室用語については,(1)特に女教師のことばに「お」の使用が多すぎることについて反省を求め,(2)一般的には,これからは先生も生徒に対してひとしく「です・ます」体を用いることを原則とする。
  8.  商業方面で行われている尊敬語と謙そん語との使用の実状にかんがみその適正化をはかる。
  9.  公衆に対する公務員の用語,および各種職場における職員相互間の用語は,近来著しく民主化されているが,さらにこの傾向をいっそう推し進めたい。
  10.  皇室用語については,宮内当局と連絡したところ,すでに終戦当時,報道関係と宮内当局との間に協議された案があり,その妥当なことを認めた。

 敬語の問題はもとよりこれに尽きるものでなく,なおいろいろの問題が残されているが,一応,以上の要旨をとりまとめて,別冊「これからの敬語」を作った。これが第14回総会(昭和27.4.14)で議決されたので,同日文部大臣に建議を行った。

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