国語施策・日本語教育

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これからの敬語

10 新聞・ラジオの用語


 新聞・ラジオの用語として,いちばん問題になるのは,敬称のつけ方である。
 それについて,


1) 一般に文章・用語がやさしくなり,それにしたがって敬称も「さん」が多く使われる傾向があるのは妥当である。
   
2) 政治的記事における「氏」の用法も妥当であるが,一面,社会的記事において「翁・女史・くん・ちゃん」そのほかの敬称・愛称を,その時,その場,その人,その事による文体上の必要に応じて用いることは認めざるを得ない。
   
3) 犯罪容疑者に関する報道でも,刑が確定するまでは敬称をつけるのが理想的であるが,たとえば現行犯またはそれに準ずるものなどで,社会感情の許さないような場合に,適宜,これを省略することがあるのもやむを得ないと認められる。
   
4) 次のような場合には敬称をつけないでよい。
     青山荘アパート(責任者甲野乙雄)


11 皇室用語


 これまで,皇室に関する敬語として,特別にむずかしい漢語が多く使われてきたが,これからは,普通のことばの範囲内で最上級の敬語を使うということに,昭和22年8月,当時の宮内当局と報道関係との間に基本的了解が成り立っていた。その具体的な用例は,たとえば,

     「玉体・聖体」は「おからだ」
     「天顔・龍(りゅう)顔」は「お顔」
     「宝算・聖寿」は「お年・ご年齢」
     「叡(えい)慮・聖旨・宸襟(しんきん)・懿(い)旨」は「おぼしめし・お考え」

 などの類である。その後,国会開会式における「勅語」は「おことば」となり,ご自称の「朕」は「わたくし」となったが,これを今日の報道上の用例について見ても,すでに第6項で述べた「れる・られる」の型または「お――になる」「ご――になる」の型をとって,平明・簡素なこれからの敬語の目標を示している。



12 むすび


 一般に,杜会人としての対話は,相互に対等で,しかも敬意を含むべきである。
 この点で,たとえば,公衆と公務員との間,または各種の職場における職員相互の間のことばづかいなども,すべて「です・ます」体を基調とした,やさしい,ていねいな形でありたい。
 戦後,窓口のことばや警察職員のことばづかいなどが,すでにこの線に沿って実践されているが,これからも,いっそうその傾向が普遍化することが望ましい。

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