国語施策・日本語教育

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議事 第1部会の報告

土岐会長

 第42回の国語審議会総会を開会する。これは同時に第5期最終の総会である。任期中熱心にご審議いただき,国語審議会の目的に沿ったご尽力をいただいたことを感謝する。きょうは,各部会報告のあと,推薦協議会のこともあるので,能率的に会議を進めたい。庶務報告はないとのことであるから,第1部会の報告をしていただく。

原第1部会長

 第1部会が前の総会以後取り上げたものは,固有名詞の書き方についてと,改正刑法準備草案の用語についてである。まず,固有名詞の書き方については,当用漢字表の補正案について審議したあと,部会で自由な討議をし,この問題を取り上げることとして,去年の7月からこの3月まで8回の部会を開いた。最初,部会では,固有名詞の書き方について直接ある方式を決めるという方向に進むのではなく,この問題を中心にして,国語の書き表わし方についてお互いじゅうぶん根本的な意見を出し合って,話し合おうということで出発した。そして,この方針で話し合いを進めていくうちに,地名をかな書きにすることについて話し合ってみたらということになり,10月・11月には,「公用文作成の要領」の地名・人名のかな書きの規定について研究すると同時に,国語課で作った資料をもとに,書き方の実例について具体的に検討した。その結果,「一般に地名・人名も,さしつかえのない限りかな書きにしてもよいのだ。」という了解を確認するにいたった。そこで,この了解のもとに,12月・1月の部会では,地名・人名をかなで書いてもさしつかえない範囲,それから,かな書きにするときには,どのような基準によることにしたらよいかについて,問題点を列挙した一覧表によっていちいち審議した。その結果,かな書きをしてもさしつかえない範囲については,明確に決めたほうがよいという意見も出たのであるが,それを具体的に示すことは事実上不可能である。だから,けっきょくは,個人個人のそれぞれの場にあたっての判断にまかせるよりほかしかたがないのではないかという意見が強かった。書き方の基準については,「一般に,地の文がひらがなであるから,地名・人名はかたかなで書くほうが区別がつけやすいと思われる。」「かなづかいについては,地名も人名も,やはり現代かなづかいによることをたてまえとすべきであろう。」ということになった。しかし,それ以上の基準は,実際にかな書きがもっと多くなってから改めて考えればよいことであって,今決める必要はないということになった。
 次に,部会のこの問題に対する審議の態度であるが,当用漢字表を決めるとき,固有名詞については別に考えることとして処理している。だから固有名詞の漢字の処理の問題として,地名・人名のかな書きのことを考えなければならないという考え方もあった。しかし,部会全体としては,だいたい,地名・人名のかな書きを漢字問題解決の方法としてではなく,単に実務上の便宜の問題として考えるのであるという立場でやってきたわけである。つまり,むずかしい漢字はやめて,かなで書くという了解ではないのである。しかし,態度のうえで,その点では一致していても,実際の審議の中で,考え方の傾向としては,最初から対立している考え方があった。すなわち,現在,地名・人名をかなで書いた書類が行なわれているが,このやり方はいけないとする人がいる。しかし,これは「公用文作成の要領」が規定している趣旨が,世間に徹底していないからである。したがって,そういう誤解をといて,事務能率の向上をはかるために,地名・人名をかなで書いてもよいのだという見解を積極的に示す必要があるというのが第1の立場である。これに対して,第2の立場は,地名・人名をさしつかえない限り,かなで書くことはもちろんよい。しかし,積極的にかな書きのほうがよいのだということになるのでは困る。また,基準を立てるにしても,すべてをかたかな書きにするとか,現代かなづかいによることにするのでは問題だろうと考える立場である。この二つの立場が歩みより落ち着いたところは,多くの場での実行を積極的に進めようというのではなくて,さしつかえない限り,かなで書いてよいのだということをはっきりさせることが,今日必要であろうというのである。
 以上が,第1部会の固有名詞の書き方の審議のだいたいの経過と考えの落ち着いたところであり,それを文章にしたものが,この印刷物である。(資料「地名・人名のかな書きについて」を配布。)これは,経過と結果とをまちがいなく了解していただくために印刷したものである。(資料を読む。)

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