国語施策・日本語教育

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議事 専門調査員,参考人について/次回の総会について その他

阿部会長

 以上の各部会の報告について質疑,意見があれば発言願いたい。

藤堂委員

 報告を聞くと,第2部会と第3部会との間で,審議事項が重複しているところがあるようであるが,その調整はどうするのか。

阿部会長

 問題によっては,将来,二つの部会が合同で審議するようなこともあろうかと思うが,この件は,もう少し各部会での審議が進んでから考えたい。現在としては,互いに他部会と密接な連絡をとりながら,審議してほしい。
 他にご発言がなければ,これらの報告は了承いただけたものとする。次に,吉田,八木両委員からの提案について説明を聞くことにする。

吉田委員

 提案の趣旨は,国語審議会の「国語」に関して審議する立場を規定し,これを公表することである。その規定は,「国語は漢字かなまじりをもって,その表記の正則とする。国語審議会は,この前提のもとに,国語の改善を審議するものである。」ということである。
 このことは,伝達の便宜上,機械化のため,ローマ字やかな文字の使用を排除するものではなく,ローマ字などは副次的なものとして開発すべきものである。
 日本語の表記ついては慣用を重視すべきで,かなづかいも歴史的かなづかいを尊重すべきである。
 これまでの各部会の審議などから見て,こうした原則を立てる必要を痛感したものであり,このような提案をすることは委員としての義務であると思い,申し上げた。配布の刷り物をごらんの上,適当な機会に検討,審議していただきたい。

阿部会長

 この問題は,第1部会が国語の原則を審議しているから,第1部会で扱うのが適当でないか。必要ならば,吉田委員が第1部会の審議に参加されるようにするのがよいと思う。

吉田委員

 第1部会長の報告を聞くと,第1部会は,ことば,文字の原理,本質から討議しているようで,必ずしも立場は同じでない。ただし,国語という自覚をもって審議するという趣旨であれば,第1部会に付託するのもいい。

村上部会長

 ことば,文字の検討ということも,けっきょく日本のことば,日本の文字の検討であり,具体的には,国語が検討の目標である。さらに第1部会は日本の現実をおさえ,現実に合わせて審議するのであるから,この提案の趣旨と違いはないものと思う。

阿部会長

 他に異議がなければ,この件は第1部会に移して審議してもらうこととする。

八木委員

 第3部会の報告に開連して申し上げる。部会での審議の際,敬語のことがいちおう話題となり,かつて国語審議会が建議した「これからの敬語」の検討をしたが,わたくしとしては,その内容をそのまま受け取るわけにはいかないのである。すなわち,その中には,審議会の態度,方針に関する重大な問題を含んでいると思うのである。問題点としては,まず,基本方針についてであるが,敬語はもともと上下関係の上に立って発生してきたものである。これを相互尊敬とか万人は平等とかの思想に基づいて考えるのはまちがっている。
 このほか,表現に不適当と思われる箇所がある。たとえば,「『たち』は…自分のほうにつけてよい。」とあるが,これはおかしい。また,社会一般の実状を無視しているような点も見受けられる。
 要するに,10年前の国語審議会は,国語を改革することによって,国民の風俗習慣を変えようと考えていたかのように思われるのであるが,この態度は容認できないと思うので,今期の国語審議会としては,このようなことがないようにじゅうぶん注意していただきたいと思い,あえて,このようなことを総会の席で申し上げたのである。

阿部会長

 敬語の問題は,第3部会で取り上げる議題の一つとなっているはずであるから,いずれ部会での審議の際に取り扱われることと思うが,ご趣旨は,総会として承知しておくこととする。

八木委員

 けっこうである。

浜田委員

 細かい点であるが,敬称の「たち」についての表現が適当でないとの説明があったが,「たち」には敬語の意味があるが,わたくしはこの表現でよいと思う。

阿部会長

 細部の点は部会で審議する場合に任せたい。この提案は,われわれが心がまえとして承知しておけばいいものである。
 次に,専門調査員,参考人などの件についておはかりする。これは,政令によれば専門調査員をおく揚合には,総会にはかることが必要であり,これらの人の意見を開きたいという部会の要求が出た場合に,そのために,いちいち総会を開くのはわずらわしいので,便宜上一括して,あらかじめ総会の承諾を得ておきたいということである。

千種委員

 国語審議会令第3条第2項に,専門調査員は「…,審議会の意見を聞いて文部大臣が任命する。」とある。それを会長に委任していいか。

古賀部会長

 政令にあるのであれば,部会として希望した人について,せめて会長から全委員の意見を求めるという方法はとれないのか。もっとも,便法でいいということになれば反対はしない。

天城局長

 部会で必要とする人については,部会の意見を重視すべきであろう。総会の開催が間近いときはもちろん総会にはかれるが,次の総会を待つために部会の審議がとどこおるようでは困る。

横田委員

 けっきょくは,部会の審議の進むにつれて審議の必要上,他の意見――第2部会では,具体的に新聞協会の用語懇談会の関係者の意見――を聞きたいというのである。審議会の仕事は,言論,報道関係などの協力支持が必要であるから,その方面の人々の意見を聞く際には,手続きとか任命とかでなく,もう少し自由にできないか。また,専門調査員としてでなく,用語懇談会のような専門機関と定期的に連絡をとることも必要であろう。

阿部会長

 さしあたっての問題は,参考人の意見を聞きたいということである。参考人の意見を聞くことについては,部会の審議を進める上に,必要を生じた場合には,各部会ごとに参考人を決めることができるということを総会で確認したいと思うがどうか。総会に対しては,部会から,あとで報告することにしたい。そうして,専門調査員については,将来それが必要になったときに,じゅうぶん検討することにしてはどうか。専門の調査機関との連絡その他は,これとは別の問題であろう。
 ご異議がなければ,そのように取り扱うこととする。

森戸委員

 国語に関する専門調査機関として国立国語研究所が設立されたはずである。こちらから特に依頼したければ,国語に関する調査研究はしてもらえないのか。

天城局長

 その点に関しては,国立国語研究所長から説明をお願いしたい。

岩淵所長

 国立国語研究所の仕事は,けっきょく,すべて国語問題の解決に役だつものであるが,研究所としては恒常的な研究も行なっており,予算,組織,人員等の関係から,あらかじめ調査の項目が決められている場合が多い。このほかに,短期間でまとまるような調査も行なえるようなことは考えている。
 国語審議会からある事項について調査研究が依頼された場合に,それが調査済みのもの,または着手しているものであれば,資料をまとめて提出することはできるが,新しい問題であれば,かなりの時間をいただかないと,まとまった結果が提出できない場合もある。

天城局長

 要約すると,研究所自体,独自の題目をもっていることであるから,要求された問題の性質によっては,資料の提出時間に長短があるということである。

森戸委員

 専門家個人に頼むことも悪くはないが,その前に,組織をもっており,その目的のために設けられた国立国語研究所に依頼するのが本筋であろうと思って発言した。

阿部会長

 では次に,次の総会の開催時期について,事務局の考えを述べてほしい。

天城局長

 12月4日に,運営委員・部会長の合同会議を開き審議した結果,きょうは各部会の経過報告のための総会であり,次回は部会の中間報告の会として,それまでの審議を了承してもらい,総会で確認の上,さらに審議を進めるということになった。各部会の審議状況からみて,総会は来年3月ごろが適当でないかということになった。

阿部会長

 だいたい3月ごろ開催ということであるが,ご意見はあるか。なければ,具体的な日時その他についてはお任せ願いたい。
 次に,新聞発表についてはどうするか。

天城局長

 国語審議会の審議状況を知らせてほしいという声もあり,総会があれば何か報告があるものと期待している向きもあるので,ごく大筋の経過を述べる程度のことはいいのでないか。

横田委員

 吉田,八木両委員の提案も発表してほしい。

天城局長

 総会としてまとまった結論を出さず,単に部会の経過報告であるから,簡単に述べることにし,両委員からそれぞれの事項について提案のあったということも付け加えたらどうかと思う。

千種委員

 部会長報告程度のものは発表してもいいと思う。

吉田委員

 八木委員の提案の趣旨は,敬語だけの問題でなく,国語審議会の根本態度にかかわる重大問題であるが,これを聞きおくということだけでいいのか。

阿部会長

 提案のあったことを発表すればいい。

浜田委員

 先ほどの,敬語についてのわたくしの発言は,あまり細部にわたっていて穏当でなかった。

阿部会長

 他にご意見がなければ,これで閉会とする。

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