国語施策・日本語教育

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次第 これまでの審議経過等について(説明)

福島会長

 次に,これまでの審議経過等の報告を事務当局から説明願いたい。

内山文化庁次長

 これまでの審議経過等について,概要を御報告申し上げる。まず,資料2「国語審議会令」を御覧いただきたい。
 国語審議会令は,文部省設置法第43条に基づいて設置されている。その組織,所掌事務,委員等については,政令である国語審議会令で定められている。
 審議の所掌事務は,第1条にあるように,文部大臣又は文化庁長官の諮問に応じて,「国語の改善に関する事項」「国語の教育の振興に関する事項」「ローマ字に関する事項」について調査審議し,また,審議会自らこれらに関し必要と認められる事項を,文部大臣,関係各大臣又は文化庁長官に建議することである。
 組織については,第2条にあるように,学識経験者のうちから50名以内の委員で組織することになっており,また,必要に応じて臨時委員あるいは専門調査員を置くことができるということが掲げてある。第4条で委員の任期は2年と定められている。また第5条には会長・副会長は互選によって決める旨と会長・副会長の仕事とが述べられてある。
 第7条は,議事について定めており,委員の過半数の出席が必要であり,議決定数は第2項に過半数をもって決するとある。
 審議会の庶務的な事項については,第8条で文化庁文化部で処理することとなっており,文化部の中の国語課がこれを担当している。国語審議会令のことは以上である。
 次に,国語問題の今までの調査・審議の沿革並びに経過を説明する。
 国語問題の調査は,明治年代にさかのぼる古い歴史を持つ。昭和9年に勅令で官制による国語審議会が設置され,昭和24年に文部省設置法が制定され,それに基づき政令による審議会に改められた。戦後,この国語審議会から数多くの答申・建議がなされ,それに基づいて国語施策が実施されている。なお,戦後,答申・建議された数は,答申が5件,建議が11件である。
 昭和43年,文化庁の設置に伴い,国語審議会に関することは文化庁が所掌することとなった。
 現行の国語の書き表し方のよるべき基準は,先に述べたとおり昭和21年以来,国語審議会の答申及び建議に基づいて公布された一連の内閣告示・内閣訓令によって行われている。すなわち,昭和21年公布「当用漢字表」「現代かなづかい」,昭和23年公布「当用漢字音訓表」「当用漢字別表」,昭和24年公布「当用漢字字体表」続いて昭和26年公布「人名用漢字別表」,昭和34年公布「送りがなのつけ方」などである。これらの基準は実施後いろいろの論議と批判を生み,戦後の国語施策を再検討すべき機運が盛り上がってきた。
 そこで資料3にあるように,昭和41年6月,時の中村文部大臣から国語審議会に対し「国語施策の改善の具体策について」という諮問が出された。そして具体的に検討すべき問題としては,@当用漢字表(別表を含む。),A当用漢字音訓表,B当用漢字字体表,送りがなのつけ方,D現代かなづかい,Eその他上記に関連する事項が掲げられた。
 諮問の趣旨は,先ほどの資料3及び資料4「諮問当時の文部大臣あいさつ・文部事務次官説明」で御理解いただきたい。この文部大臣あいさつ中に,「今後のご審議にあたりましては,当然のことながら国語の表記は,漢字かなまじり文によることを前提とし……」と述べていることに特に留意願いたい。
 国語審議会は,この諮問を受けて,第8期から第10期まで,つまり昭和41年6月から昭和47年6月まで,まず「当用漢字音訓表」及び「送りがなのつけ方」を取り上げ,非常に熱心かつ精力的に審議を重ね,昭和45年5月には試案を公表し,社会の各方面の意見を求める等慎重な配慮をして,昭和47年6月,「当用漢字改定音訓表」及び「改定送り仮名の付け方」を文部省に答申した。
 この答申では,これまでの国語施策の制限的色彩を改め,現在の国語を書き表す場合の目安又はよりどころとすることを根本方針としている。この答申に基づいて翌昭和48年6月18日付けで,「当用漢字音訓表」及び「送り仮名の付け方」が,内閣告示・内閣訓令として公布された。
 次に第11期つまり前期の国語審議会における2年間の審議について説明する。前期の審議経過については,資料6「第11期国語審議会審議経過報告」を御覧いただいきたいが,その要点を説明する。また,前期審議会の委員会などの運営組織については,資料7「第11期国語審議会運営組織図」に簡単な図を用意したので併せて御覧いただきたい。
 前期の審議においては,残された審議事項のうち「当用漢字表」及び「当用漢字字体表」の問題を取り上げ,審議を進めてきた。これらの審議においては,基本問題についてできるだけ各委員の共通理解と意見の一致を図るために総会がたびたび開催された。また,適切な運営を図るために,会長を補佐して,審議会の運営について協議し,その運営の円滑化を図ることを任務とする機関として「運営委員会」が設けられた。また,「問題点整理委員会」を設けて,総会における基本問題の協議のための問題点を整理し,あるいは質問票による各委員の意見の調査を行った。このようにして,総会の審議を能率的にするとともに,極力全員の意見を確かめ,それを総会の審議に反映するよう努力し,いわば総会中心主義ともいうべき方針で審議が行われた。
 前期の審議会で初めに取り上げた漢字表の問題については,まず総会で,問題点整理委員会の助けを受けつつその基本的問題の協議を進め,漢字表の性格を制限的なものとしない等,5項目から成る「漢字表の具体的検討のための基本的方針」(資料6,6ページから7ページ)を立てられた。
 なお,この方針では漢字表の具体的検討に移るための一応の方針として了承されたものであって,今後更に具体的検討の過程で考慮していくものとされている。また,漢字の字数については,現行の「当用漢字表」と比べ余り急激な変化を来すことは避けようとの了解の下に,今後の検討結果に基づいて判断することとされている。
 次いで,このような方針の下に漢字表の具体的検討に入ることとし,漢字表委員会及びその中の作業委員会としての漢字表委員会小委員会を設けて,種々の資料により,約4,200字の漢字について一字一字検討し,その結果「漢字表の作成に当たっての考え方」(同,9ページ)及び「漢字選定の方針に関する具体的観点」(同,10ページから13ページ)を明らかにされた。そして残された漢字表検討の今後の問題としては,法令・公用文・新聞等あるいは教育の分野について十分な配慮をするということが掲げてある。
 次に,字体表については,総会で基本的な問題を論議し,問題点整理委員会で各委員の意見を質問票により調査し,それを集約整理された。(同,14ページから16ページ)しかし,字体表に関する基本方針をとりまとめるまでには至らなかった。
 なお,漢字表及び字体表について,今後,審議の適当な段階で,広く国民各界各層の意見を聞くことを期待している。
 以上のように,漢字表・字体表,いずれについても,具体案をまとめるまでには至らなかったが,今後の審議の基礎が築かれたものと考えており,前期委員の方々に感謝申し上げる次第である。
 続いて,今期の審議の問題であるが,大臣あいさつにもあったように,今期は漢字表,字体表の問題について,前期の審議の成果を引き継いで更に詳しく具体的検討を進めていただき,できれば,この12期の任期中に具体的な試案を作るよう御協力願いたい。もちろんその試案を世間に公表し,各界各層の意見を十分聞くという措置を当然考えていかなければならないわけである。しかしながら,新しい委員も多数加わったので,また新しい観点からの意見等もあろうかと思う。どうか十分御協議いただいて,より良い案をおまとめいただきたい。
 以上,審議経過等を御説明申し上げた。

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