国語施策・日本語教育

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次第 議事 今後の運営について

福島会長

 ただ今の事務当局の説明について,何か質問があるか。差し当たって,質問がなければ,今後の運営について相談したい。本日は今期最初の総会であるので,これからの運営,審議の進め方,あるいは委員会その他の組織の仕方など,関連する諸問題について,自由に意見を交換し協議を進めたい。
 前期の審議会では,部会等を設けることを極力避け,総会でできる限り委員各位の意見を出してもらうことを主眼に運営してきた。ある程度の方針が固まった段階で,これを委員会に移していくという努力を重ねた。これから先2年間の運営は相当重要なことであるので,運び方,進め方,組織の在り方などについてなるべく多数の方々の意見を伺いたい。
 なお,次長の説明中にあった運営委員会というのは,この審議会の運営の仕方について会長・副会長と一緒に相談を願える委員会であり,私は前期同様これを組織してもらいたいと考えている。
 そのほかに前期の審議会の組織である問題点整理委員会とか,漢字表委員会とかについても,意見を出してもらいたい。

林(四)委員

 運営に方法とは組織とかをどうするかよりも先に,今期は何を審議するかについて話し合うべきであると考える。先ほどの経過報告によると,漢字表と字体表の審議が主要な目標ということは明らかだが,今,国民の実際の生活の中で本当に何が問題なのだろうかということを改めて考えてはどうか。例えば,ローマ字の問題,これからの敬語の問題等も考えられる。1,2回,総会で主要目標は何かを論じ合うことが必要なのではないか。

福島会長

 11期の審議会の初めにも,今,指摘のあった点が問題になり,総会で連続して協議した。今回も,新委員が加わったので,ただ今のことは十分に考えてみる必要がある。
 事務当局への質問だが,先ほどの大臣あいさつにもあったが,今期2年の任期中に漢字表・字体表について具体案まで運んでほしいというのは強い注文か。

内山文化庁次長

 「当用漢字音訓表」「送り仮名の付け方」の審議の経過等を見ると,2期4年で試案をまとめ,それについて世間に広く意見を求め,その批判を踏まえながら再検討を加え,結局6年間で答申いただいた。この例から見ても,漢字表・字体表についても,できれば今期に試案をまとめていただきたいと考えている。

木内委員

 昭和41年に諮問が出て,やがて10年になる。私は,前期に引き続き,漢字表・字体表について審議し,早く答申を出すという意見ではあるが,近ごろは,ゆっくりやるのも良いところがあるということが分かってきた。
 しかし,今日,17名の新委員がいて,その方々は,ただ今の次長説明ですぐ何を審議すべきかについてピントが合うというわけにはいかないだろうと思う。そこで新委員から質問してもらい,漢字表委員会では岩淵委員,問題点整理委員会では遠藤委員から,11期審議経過について説明してもらい,その上で,協議を進めていったらどうかと思う。

林(大)委員

 11期と12期との審議の連続性の問題については,私は連続するものと理解するが,もう少し説明してもらいたいし,また新委員は,もうまとまりかけている議論のまとめに参加するのか,それともこれからまた新しい問題を展開し得るのかというような点で話を聞きたい。
 6期から7期にも審議の連続性ということで問題があったようなので,その辺のところを説明願いたい。

福島会長

 前期の漢字表委員会主査岩淵委員,同じく問題点整理委員会主査遠藤委員から,それぞれ11期の審議会における問題点等について,説明願いたいと思うが,いかがか。

遠藤委員

 私は41年の文部大臣の諮問の当時からずっと国語審議会に関係しているが,その諮問の「検討すべき問題点」のうち,「当用漢字音訓表」「送り仮名の付け方」の二つについては,6年間の日時を費やして昭和47年6月に答申した。その審議の特徴は,部会というものをひんぱんに催して,大体の検討を終えたものを総会に諮って,承認を得るということであった。
 次に47年11月に11期の前期審議会が発足したが,その初めの協議によって,41年の文部大臣諮問事項で残っている問題のうち「当用漢字表」と「当用漢字字体表」の二つを中心にして協議をしていくことになった。そして11期は総会中心に審議を進めていくこととなった。
 そこで,この二つの問題の中で,まず漢字表を取り上げることが決まり,これについて総会で数回自由討議を繰り返した。なお,総会だけでは時間的にも内容的にも委員の意見を十分くみ取ることができないので,問題点整理委員会を設けることとなり,この委員会で総会で審議すべき問題の所在を明確にするとともに,それらについて全委員からアンケートを取ることとした。これに対し,回答が多く寄せられたので,各委員の意見を総会の審議に反映させることができたと考えている。そして何度か総会を開き,まとまったものが「漢字表の具体的検討のための基本的方針」等である。その基本的方針を今度は具体策に移すため,漢字表委員会が設置されたわけである。
 先ほどの林(四)委員から御指摘のあったように,国語審議会の任務としては,ローマ字に関する問題,国語の教育の振興に関する事項等もあるが,11期の最初に了解したところでは,諮問事項中の「当用漢字表」と「当用漢字字体表」とを先に片付けようという意見であった。もちろん新しい問題が入ってきてもよろしいかと思うが,ただ大臣の諮問以外の事項を論議してよいのか,それをすべきであるのかどうか,そういう点については総会で十分議論をしなければならない問題であると考える。

岩淵委員

 前期「当用漢字表」を取り上げたことについては,今,遠藤委員から御説明があったとおりであるが,実は8期に諮問があったときから,そのうちの何を最初に取り上げるかについて議論があった。「当用漢字表」を第1に検討すべきではないかという意見,「現代かなづかい」について審議を進めるべきだという意見も出た。そのときいろいろ話し合った結果,「当用漢字表」の審議に取り掛かるのにはもう少し資料を集め,それに基づいて検討すべきであって,当時はその準備が十分ではないという考え方が出た。それと関連して,「当用漢字音訓表」の方には差し迫っていろいろ問題があり,例えば,漢字がありながらその漢字の使い方について音訓表でいろいろ制約があるが,それが,果たして良いのか等,議論すべき問題があるということで「音訓表」が取り上げられたわけである。もちろん,音訓表を改善しても,当用漢字表が変われば,当然,音訓表も変えなければならないし,また音訓表を本格的に決めるには,将来どういう漢字表ができるかという見通しも付けなければならないということもあったが,取りあえず,まず音訓表に取り掛かったのである。一方では,送り仮名が世間で大変問題になっていたので,それを取り上げることとなった。
 なお,当時は,漢字関係のことを扱う部会として漢字部会,仮名関係のことを扱う部会としてかな部会が設けられたので,何を取り上げるかについては,それぞれの部会で協議し,漢字部会では音訓表,かな部会では送りがなを取り上げるということになり,仕事を始めたわけである。
 このような8期以来の経緯もあって11期には,前からの懸案であった「当用漢字表」を検討しなければいけないということで,取り上げた。

岩淵委員

 それと関連して,「当用漢字字体表」の問題が出たが,字種と字体とについて同時に審議することは困難なので,一応字種について考えていこうということになった。その後,字体についても総会の委員の意見をまとめようということで,問題点整理委員会で意見を集め,整理し,どんなところに字種・字体表についての問題点があるかを明らかにした。
 新委員にもいろいろ意見があると思うが,そういう経緯からいうと,できるならば,11期で取り掛かった漢字表なり字体表なりについて,今期も何らかの意味で継続して審議すべきではないかと思う。
 また,国語審議会の審議のやり方は,委員自身がいろいろの基礎的な材料を基にして案を作るということをやってきており,委員の合意の上でまとめていくこととなっているので,ある程度の時間を掛けなければいけないと思う。
 その上,広く世間の意見を聞きその意見を踏まえてまた審議をし直すという進め方が行われているので,相当の時間が掛かることを覚悟しなければいけないと思う。
 とにかく取り掛かった仕事は精力的に審議して,できるならば余り時間を掛けないで仕上げることが望ましいのではないかと思う。もちろんそれだからといってほかの問題は全然取り上げない方が良いというわけではない。ただ,9期,10期には,漢字部会とかな部会とのほかに一般問題小委員会というものがあった。これは,漢字部会とかな部会との谷間の問題とか,それ以外の問題も検討するという委員会であった。そこでいろいろな問題を取り上げ,結局,そこでまとまったのは「国語の教育の振興について(建議)」であった。
 8期から10期までの審議は,それぞれ部会に分かれて審議した結果,部会内では十分な審議を尽くしたが,総会の場合には多少形式的なことになってしまって,総会の委員全体が審議に十分参与したかどうかというふうな不安があった。その結果として,11期では部会を設けず,総会で一つの問題を取り上げて審議していこうということであった。
 しかし一方,漢字表委員会でいろいろ具体的な作業を進めていくが,実際に漢字表委員会を開く時間が余りたくさんなく,総会に追いかけられているような状況であったと思う。そういう点から言えば,もう少し漢字表委員会などに時間を貸してほしいという感じがする。
 漢字表委員会に関係した一人として言うと,同委員会は,ある程度筋道を付けたつもりではあるが,これから先が実は大変であって,大いに議論をし,審議をし,研究をしていかないと,結果をまとめることは難しいと思われる。そういう意味では当用漢字表について,かなり精力的に審議を費やすべきではないかと思う。

古賀副会長

 一委員として,特に新委員に申し上げたい。
 今期の委員は当初から前期の審議方向をそのまま受け継いで審議を進める使命を帯びているのだという先入観があったら,そうであってはいけないと思う。もし現時点で諸般の事情を勘案し,ある新たな問題があり,それを前期までの仕事を中断してでも優先的に取り上げるべきだという意見があったら,その提案について十分論議を尽くし,かつ前期までの審議をこの時点で中断することによって生じる損失をも考え合わせて,多数委員の合意の上で今期の方針を決定することが必要であると思われる。もし今日の審議だけで十分進むべき方向が決まりかねるようであったら,更に次の総会でも十分話し合うことが大切であると考える。

森岡委員

 50人の会を運営するためには,運営委員会というものがないと能率的に進まないと思われるので,是非設けてほしい。また,前期に設けられた問題点整理委員会は,審議すべき事柄について整理し,問題点を明らかにし能率的であったと思う。前期の組織をそのまま踏襲するように思われるかもしれないが,運営委員会と問題点整理委員会は,内容にかかわらず総会を能率的に進める組織なので,早速設置されたい。次の総会のためにも能率的であると思う。
 そして,漢字表と字体表の検討を優先させるべきであるか,又は,もっと現代の社会生活で改善しなければいけない国語の問題があるのかどうか,その辺のことについて新委員から意見を出してほしいと思う。
 また,11期に審議した漢字表と字体表についても,まだ中途半端なので,新委員からも意見を加えてほしいと思う。

佐藤委員

 私は,今日初めてこの審議に参加した者であるが,新しい委員は意見を述べるようにということなので,発言したい。
 私は,国語に深い関心を持っている。この審議会に参加した理由も今日の国語の乱れが大変心配であるからである。ある意味では,国語は一国の文化の象徴であり,時代の鏡であると言われるわけであり,そうした時代に生きる我々が,国語について大きな関心を持つことは当然であると思う。
 今まで外部から承知している限り,国語審議会は,当用漢字等を主として審議し,それらを制定する大きな力になってきたと理解している。この審議会の目的にある国語の改善,国語の教育の振興について,私は非常に関心を持っている。
 確かに国語審議会において漢字表等を作ることは,国語の整理,国語の能率化という意味で,歴史的・社会的意義を持った大事業であり,今後も続けなければならない問題であるが,国語の乱れに対するいろいろな問題があるのではないかと思う。そういう問題も,この審議会令によれば,我々の当然の使命ではないかと思う。この審議会は,あえて建議機関と諮問機関とに分ければ,諮問機関の性格が強いであろうと思うので,所管している文化庁あるいは文部省で国語審議会の使命を再考してもらって,審議事項についても,諮問の範囲を広げて,国語に関する本質的な問題も含めて取り上げることを考えてもらいたいと思う。

福島会長

 ただ今の意見なども,事務当局に考えてもらい,あるいは次回の総会などで意見を聞きたいと思う。引き続き,次回の総会でも意見を聞くが,漢字表なり字体表なりの検討を進めることが不要なものとは思われず,可能な限り進捗(ちょく)させなければならないと思う。
 ところで,この総会の進行を円滑に進捗させるため,会長,副会長の相談相手ということで,主として総会の運営に関する事項について協議する場として運営委員会を前期同様,是非設置させてもらいたい。また,その委員の指名は従来も総会の承認があれば,恐縮ながら会長が若干名指名し,委員として委嘱することになっている。いかがか。(賛成。)それでは,運営委員会を設置することとし,その委員を指名する。
 岩淵委員,江尻委員,遠藤委員,木内委員,木庭委員,真田委員,志田委員,下中委員
 以上8名の方に,会長,副会長が参加して,10名で構成したい。
 その他,各種の委員会の設置という問題もあるが,これは運営委員会で検討した上で総会に諮りたいと思う。
 なお,総会は予定の時間どおりに終わるようにしたい。各委員の協力を願う。
 次回の総会は,2月21日(金)に開催する。
 本日の種々の意見を運営委員会においても改めて相談したいと思うが,引き続き次回総会でも遠慮なく意見を出してもらいたい。
 本日の総会は,これをもって閉会とする。  

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