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次第 議事 八月十五日の「提案」に付随せしむべき資料(その一)

一,漢字はどのやうにして作られたか

 漢字はわけもなくゴタゴタしてゐるやうにみえますが,実は一定のシステムによって作られたものですから,そのシステムを知ってゐるとゐないとでは,漢字に対する理解の程度が大変に違って来ます。そのシステムとは大様次のやうなものです。
 文字といふものは要するに,”時間的空間的制約を乗り越えて自分の意思を他人に伝へたいとする念頭に出発するもの”でありませうが,自然の成り行きとして”まづ絵から始まり,それが簡単化されて字になる”といふ経過を辿るのが通常であります。
 その元来は絵であった形を残してゐる文字が,いはゆる「象形文字」であり,漢字は象形文字,と一般に人は思ってゐるやうです。事実漢字のなかには象形文字も沢山ありますが,しかし少し考へてみればすぐわかるように,世の中のことには”絵には描けないもの”が沢山あります。そこで”絵を離れて字を造る”ことが,どうしても必要になるわけですが,それを古代の中国人は次の三つの方法で行ったわけです。

(1)指事 (2)会意 (3)形声(諧声ともいふ)
最初の「象形」と合わせて四種ですが,例を挙げながら説明すると次のやうです。

(一)   象形 誰でも知ってゐる例は,山・川・馬・鳥・牛・羊等で,それが元来絵であったことは説明されれば誰にでもわかるところです。
(二)   指事 上・下・一・二等がそれですが,これは,見ればわかるように「上」といふ字は上を指してゐる,「一」は一といふ事実を示してゐるわけです。尤も学者によっては,一は一本の指の象形だといってゐる人もあるさうです。
(三)   会意 これは例へば「孝」の字が,”子が老人を支へてゐる意”といふ具合に,意味を持つ二つの字の組合せによって新しい字を作ったもので,「季」といふ字は,禾が稲を表はし,子が実を表はす。二つを合わせて”稲の刈入れ時”となり,それが季節一般を意味することになったものださうです。
(四)   形声 これは銅を意味する言葉は,その発音が「同」といふ字と同じであるところから,金扁を付けて金属であることを示し,同を旁にしてその発生をとり,両者を併せて「銅」を示す字とした。

 詳しく言へばいろいろむづかしいこと,面白いことがあるのですが,日本国民は常識として,以上のことを心得てゐればいいでせう。

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