国語施策・日本語教育

HOME > 国語施策・日本語教育 > 国語施策情報 > 第12期国語審議会 > 第100回総会 > 次第

次第 庶務報告/前回の議事要録について/漢字表委員会における検討状況について(報告・協議)

福島会長

 第100回国語審議会総会を開会する。
 初めに,事務局から庶務報告がある。国語課長,どうぞ。

石田国語課長

 2点ほど報告させていただきたい。
 一つは,既に御連絡申し上げてあるように,委員の異動についてである。内閣法制次長であった真田秀夫委員が,7月9日付けで内閣法制局長官に御就任になった。これに伴い,同日付けで国語審議会委員を辞任された。その後任として,内閣法制次長になられた,角田礼次郎氏に7月31日付けで国語審議会委員に御就任いただいた。御紹介申し上げる。

角田委員

 このたび,委員に任命された角田です。よろしくお願いします。

石田国語課長

 もう一つは,前回総会(51年7月2日開催)で御協議いただいた人名用漢字の追加の問題についてである。前回総会での協議に基づき,会長,副会長及び運営委員会の各委員で相談していただいた結果,国語審議会としての回答を文化庁長官に7月9日付けでいただいた。それに基づき,内閣官房等と協議をし,手続を進めて,去る7月29日,「人名用漢字追加表」の内閣告示,その実施に関する内閣訓令の二つが閣議決定され,7月30日付けで官報に登載された。法務省では同日付けで戸籍法施行規則の改正を行った。それによって,人名用漢字の追加が即日施行になった。これについても,官報を添えて8月初めに御報告しているが,念のため申し上げた。

福島会長

 以上の庶務報告について何か質問等があったら,どうぞ。(発言なし。)
 去る7月2日に開催した前回総会の議事要録は,前もってお送りしてあるので,御覧いただいたことと思う。御自分の発言について修正等があったらどうぞ。場合によっては,後で事務局へ御連絡いただいても結構である。(発言なし。)
 それでは,本日予定している議事に入りたい。
 最初に,漢字表委員会における検討状況について報告を伺い,また,委員各位の御意見をそれに伴って伺うこととしたい。漢字表委員会では,前回総会以後引き続いて,字種の問題について御検討いただいたと了解している。岩淵主査から検討状況などを御報告いただきたい。

岩淵主査

 漢字表についてそろそろ結論を出したいということで,漢字表委員会及び漢字表小委員会では,この夏なども,2日間,朝から晩まで通してできるだけ検討してきたが,まだ具体的な漢字表を示すところまで至っていないので,その間の経過について御報告申し上げる。次回には多分具体的な漢字の表を出すことができるであろうと思うので,それをお考えいただく予備的なものとして,第11期以来の経過などにもついても申し上げたい。
 第11期にこの仕事は始まり,既に御承知のように11期中にある程度までの漢字の検討をした。
 まず,資料1の2枚目にあるように,「漢字表の具体的検討のための基本的方針」というものが総会で認められ,これに基づき,漢字表委員会及び漢字表小委員会が動いてきた。簡単にいうと,現行の「当用漢字表」に代わるべきものというか,そういうようなものを作るということで検討を始めた。
 第12期に入り,総会で第11期でやったことの報告をし,いろいろ意見の交換があった後,漢字表委員会を7回,漢字表小委員会を6回開いた。
 この中で漢字表をどういう形で発表するか,発表する場合には字の種類だけでなく,当然字体も決めておかなければいけないだろうということも問題になった。その結果,字体を審議するのは,やはり漢字表委員会でやるべきであるという総会の意見により漢字表委員会が引き受け,漢字表委員会と字体小委員会で字体について審議した。字体については一応の考えがまとまったと思われたので,字種の検討に再び入った。
 字種としては,頻(ひん)度数その他の点から最初約4,200字ばかりを検討した。その中からいろいろ問題になると考えられた約2,300字を選び,更にこれでいいのかどうか,もう少し考えてみる必要があるかどうか審議した。その審議のために漢字表小委員会などを開いてきた。
 前回総会以降は,漢字表委員会を1回,漢字表小委員会を4回開いて,表外字約450字の中から取り入れるものがあるかどうか,それから表内字のうち検討しなければならないものがあるので,それについての議論をした。本日,できるなら,まとまったものを出したいと思ったが,間に合わなかった。
 なお,漢字表小委員会などで検討する場合に,11期以来使ってきた資料のほかに,新しい資料を使っている。それらについて少し説明する。
(1) 日本新聞協会「新・用字用語集」――新聞の方ではまぜ書きとか書き換えなどいろいろ行っているが,なるべくまぜ書きがないような状態にあることが望ましいという意見があって,用字用語集の中からそういうものを取り上げて検討した。
(2) 国立国語研究所「現代新聞の漢字」――中間報告は既に出ているので,利用してきた。今度は全体がまとまったので,それを利用した。
(3) 「凸版印刷株式会社 漢字出現頻度調査第1回,第2回」――沢村委員の御好意で凸版印刷で漢字を調査していただいた。昨年第1回目の,今年第2回目の調査をしていただいた。その資料に基づいて検討した。
(4) 「日本新聞協会編集委員会 当用漢字表の改定に対する意見」――これも参考にした。
 前回総会で字体については報告だけして,意見をいただいていないので,できたら字体についての意見もいただきたいと思う。資料2は,最初,漢字表の性格あるいは字数などについては,具体的な作業をしていくうちに次第に固めていこうという申合せで仕事を進めてきたが,いよいよ最後の詰めになって,やはり字数のことも問題になり(余り字数のことを考えてないで得られたのが,先ほどの約2,300字であり,その中には問題になる字もある。),一体どのくらいの字数がいいのかということで,従来の調査資料について漢字数と累積使用率を調べてみたものである。

岩淵主査

 資料2の(1)から説明する。
 「日本基本漢字」というのは,大西雅雄氏の古い資料で,しかも調査の仕方が十分明らかになっていないので,細かいことは分からないが,全体で3,000字ばかり取り出し,それを基本度に従い,最初500字を第1基本漢字,次の500字を第2基本漢字にするというように順序づけをしたものである。
 雑誌90種というのは,国語研究所で昭和31年の雑誌90種について調査したものである。これは,たびたび申し上げるように,雑誌では「当用漢字表」や「当用漢字音訓表」に基づいて書いたものもないではないが,余りそれに拘泥(でい)しないで書いたと思われるようなものが多い。したがって,雑誌90種は,戦後の国語施策を行った結果と見るよりも,それ以前のものと見てよいかと思う。
 新聞3紙というのは,昭和41年の朝日,毎日,読売の3紙について国語研究所が調査したものである。新聞では,41年にはもちろん「当用漢字表」「当用漢字音訓表」などに従って記事がつくられている。ただ,当用漢字補正資料の28字については,教育界などでは使っていないが,新聞では使っているので,その点,多少当用漢字と違うかと思う。
 凸版印刷の第1回調査では約357万字,第2回調査では約530万字を処理して表をつくってある。
 これらについて仮に1,000字のところを見ると,日本基本漢字79%(選ばれた頻度数の高い1,000字の中の字が,100字のうち79字を占めていると考えていいかと思う。),雑誌90種90%,新聞93〜94%(これは「当用漢字表」などに従っているので,ある意味では当然かもしれない。),凸版印刷第1回,第2回調査ともに91%となっている。それから1,500字では84%,96%,98.4%,96.56%,96.86%,2,000字で87%,98.6%,99.6%,98.7%,98.83%という累積使用率になる。
 一方,一体どのくらい違った漢字が出てきたかということについては,日本基本漢字は3,000字だけにとどめてあるので,それ以外の字がどれだけあったかは分からないが,雑誌90種3,328字,新聞3,213字(これは国語施策に基づいているので,幾らか少ないのかと思うが,新聞でも固有名詞などをかなり使っているので,当用漢字以外の字も出てきたのだろうと思う。),凸版第1回調査4,377字,第2回調査4,520字ということである。
 2,000字あたりから以下になると,相当の字の種類が加わらないと,パーセンテージは詰まらないということになる。そのことは下の参考のグラフを見ると,お分かりと思う。これは国語研究所調査の新聞と雑誌についての表で,新聞が実線で,雑誌が点線である。これで見ると,新聞の方は,当用漢字などに従っているから当然ではあるが,2,000字辺りになると,ほとんど頂点に達しているような感じである。したがって,どこで切るかということが大変難しい作業であって,漢字表小委員会,漢字表委員会での委員の意見,それからできるだけ詳しい具体的な資料などを基にして検討している。
 資料2の(2)の方は逆からの見方である。もし仮に全体の98%まで選ばれた表の字にしようということになると,雑誌90種は1,832字,新聞1,426字,凸版印刷第1回調査1,782字,第2回調査1,727字となり,大体現行の当用漢字1,850字に近い。99%までになると,新聞以外は2,000字を超す。こんなことも一応目安にしながら,詰めの段階に入りたいと考えている。
 以上,経過報告だけ申し上げた。

福島会長

 漢字表委員会,両小委員会には何回となく,作業,検討を願って,逐次,試案作成に到達しつつあるようである。いずれ総会で検討することとなると思う。
 前回総会は人名用漢字の追加問題でかなり時間が掛かり,字体問題についての漢字表委員会の報告に関して意見交換の時間が十分なかった。したがって,ただいま主として字種の問題について報告があったが,前回総会の報告の字体問題についても,本日意見を伺いたいと思う。その資料はお手元の黒表紙の中にとじ込んである。御参照いただきたい。
 字体,字種について,更に漢字表委員会に検討をこれからもお願いするわけであるので,うまくいけば次回にかなり具体的なものを御報告願えると思う。そのための資料としても,本日の意見が大事なことになるのではないかと思うので,字種,字体問題について,漢字表委員会の本日の報告,前回総会の報告に基づいて御意見や御質問があったら御発言いただきたい。
 本日はこの関係の議事以外にも前回総会で時間がなくて省略した自由討議関係の議事も予定している。また,前回総会で時間がなくて打ち切らせていただいた木内委員の御意見については,自由討議の時に意見交換をしてもよいが,漢字表委員会にも関係があり,漢字表委員会に対してこの際できるだけ多くの御意見を拝聴しておいた方がよいのではないかとも思うので,今,御発言いただいてもよいと思う。
 ところで,岩淵主査,このままだと,大体2,000字前後の表になるのか。

岩淵主査

 現在大変難しいところに差しかかっていて,大まかな点では大体意見が一致するが,具体的なことではなかなか意見が一致しないので,分からないが,今のところ,大体2,000字以内くらいのところが漢字表小委員会では考えられていたかと思う。まだ漢字表委員会に上げていないので,そこでの意見は承っていない。

福島会長

 第11期国語審議会から第12期国語審議会への引継ぎの中に,漢字表は制限的なものとはしない,という非常に重要な中間意見があり,更にその際には現在の字数を急激に変化させないという意見もあったわけである。第12期国語審議会としては,第11期とのつながり方などもかなり重要な問題だと思うし,その辺も意見のあるところではないかと思うので,できるだけ御発言をいただきたいと思う。
 これらについても段々に御発言いたたけると思うが,前回総会の自由討議の際に出てきた木内委員の御意見(漢字表の作成という基本的な点についてのかなり重要な御意見であり,前回は時間切れで議事に取り上げられなかったので,前回総会後文書で御提出いただき,前もって委員各位に差し上げてある。)は,漢字表委員会の報告とかなり関連があるので,それに対する補足説明があったら承って,漢字表委員会の報告に関連して,これからの漢字表の在り方というようなことで意見交換を願ってよいかとも思うが……。
 もし木内委員に補足説明があるようなら,ただいま御発言願い,木内委員の漢字表に対する御意見にも関連して,今後作るべき漢字表についての意見交換をしたらどうかと思うが……。差し支えなければ,そのようにお願いしたい。

木内委員

 最初に訂正箇所を申し上げる。
 「三,提案の細目的説明」(14ページ)というところの17ページに表をつくる話があり,「私自身にはそのやうな表を作る技能はないが,私が会長をしてゐる「国語問題協議会」の衆知を集めれば,多分いいものが作れることと思ふので,不日(多分九月中頃には)一応の素案といふべきものを作ってお目にかけることにしたい。どうぞそれを素材として,さらに十分な検討を加へ,真にいいものを作って戴きたい。」ということが書いてある。そして,第4表というものは表にするよりは説明ですますということがどこかに書いてあるが,実際に素案を作る作業をしてみたところ,第4表は漢字のシステムを理解するための表で,500字もあったらいいと思うが,表の形ではうまく表現できないので,説明にかえたわけである。
 実はその説明を印刷物にしてきた。もしよかったら,時間がかなりあるようなので,第4表にかわるべき説明を読ませていただいたら,提案のことも一層はっきり分かるかと思う。読み上げるだけで20分ぐらい掛かるがよろしいか。

福島会長

 議事の進め方としては,木内委員の補足説明を伺った上で,また先ほどの漢字表委員会の報告に関する意見交換へもどろうと思っている。今日残りの全部の時間を木内委員の提案にあてるわけではない。あしからず,
 できるだけ短く願いたい。

木内委員

 それでは印刷物にしてきた説明,「八月十五日の「提案」に付随せしむべき資料(その一)」を読み上げる。

八月十五日の「提案」に付随せしむべき資料(その一)

 これは「提案」にいふ「第四表」に代るものです。実際に第四表を作る作業をしてみましたところ,これはやはり「表」ではなくて「説明書」とする方がいい,と考へるやうになりました。以下の説明文を,三つの漢字表の前か後に付けることにしたいと思ひます。


漢字のシステムを理解するために


 以上である。
 このうち(一)の作製の原型になるようなものを1枚紙に別に参考として示した。(注2)お手元にあるとおりのものである。
 この漢字の成り立ちについては学者に任せるほかはないが,素人でもある程度知っていると非常に具合がいいと思う。
 したがって,説明書の後につける,「図形を添えた「象形」以下の文字のつくり方の説明とその例」というのは,初めは500字も並べたらすっと分かるかと思ったら,そうはいかないようである。また,説明も非常に大事で,それを上手にやれば,興味をもって漢字を覚えるだろうと思う。(二)の部首はさっき申したとおりである。(三)のその他には,私の提案の第2表3,500字の後に,いろいろな漢字を分類して挙げておく。もちろん,3,500字全部を分類するわけではない。例えば,物を表す字として,「藤(ふじ)」を挙げておく。もっとも,「藤」という字は,ふじという植物を表す以外には,人名地名ぐらいしか活用がないが,字によっては,非常に活用がある。例えば,「自」という字は,「観自在菩薩」の「自在」とか「悠々自適」の「自適」とか「自立」とか「自尊」とか,20以上の熟語に使われている。
 そういう字もあることを,機能的に示すわけである。このように「自」1字でも表すものによって全くいろいろだということを心得て漢字を見ていくと,自然に覚えるし,漢字を使える人間になると思う。なお,少し表を作りかけて気が付いたことであるが,当初第2表の後に付けたらいいと思ったものは,第4表(表というよりはむしろ説明書とでもいうべきもの)の後に付けたらいいだろうと思う。既に文書で提出したものだけが案ではなく,始めたばかりで,まだ極めて不備であるが,以上の説明のようなものを伴ったものが私の案である。そのことを申し上げて,一応私の説明を終える。

トップページへ

ページトップへ