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次第 議事 八月十五日の「提案」に付随せしむべき資料(その一)

四,漢字の基本的な「構成部分」と「部首」とについて

 さて次の問題は,そのやうな漢字が日本に入って来てからの運命如何ですが,その前に漢字のシステムについて,いま少し理解を進めておきたいと思ひます。
 漢字のなかで一番数の多いのが「形声」ですが,それは大部分「扁」と「旁」から出来てゐる。その扁のなかで最も多くの字を作ってゐるのが「木扁」「火扁」「土扁」「金扁」「サンズイ扁」の五つですが,これは古代の中国人の宇宙観は「陰陽五行説」で,「五行」すなわち木火土金水で宇宙は構成されてゐると考へるものであったことに対応するものであるところなど,大いに味はふべきところでありませう。
 さて扁と旁のほかに「冠り」とか「構え」とか漢字の「構成部分」にはいろいろ名がついてをり,それらを或る程度心得ておくことは,実際生活上便利であるばかりでなく,漢字を理解する上にも有利でありますが,”辞書でいふ部首”なるものは少しわけが違ふので,これは”辞書を引いて貰ふ上の便宜のため”といふか,何万とある字を”配列するための必要”といふかさういふ見地から作られたもので,非常に多数のものが「部首」と考へられてをり,その数は二百以上にも及ぶので,これを一々その名称と共に覚えることは大変煩わしい。また何を部首と考へるかは,辞書作製者の考へ方によっても変化した。例えば「麻という字の部首は「」で,それに林と似た「」といふ字を配したものですが,いまでは「麻」それ自体を部首として,その仲間に「摩」「魔」等を入れることになった,といふわけです。従って,「部首」といふものは”辞書編纂の便宜のためのもの”と考へて,あまり重要視することも拘はることもない,と考へるべきでせう。またそれに対して,金とか木とか,前掲「季」といふ字の「禾」とか「子」とか,さういう「構成部分」については,その漢字が「会意」の字であれ「形声」の字であれ,それに或る程度の重要度を認め,その部分の「原意」を弁へてゐることが,漢字の理解を援けることになるわけです。末尾に「部首一覧表」を掲げておきました。なかに名前のないものも沢山ありますが,名前のあるものの大部分は,名前と共に知っておくのがいいでせう。

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