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次第 議事 八月十五日の「提案」に付随せしむべき資料(その一)

六,結びとしての言葉

 以上,”漢字をシステムとして理解する”ために必要な事項について述べてきましたが,申したことは,大変ハッキリしてゐるやうに見えるでせうが,現実の漢字を前にして,そのなかから以上に述べてきたやうなことを掬み取ることは,容易なことではありません。
 そのわけのひとつとして,漢字そのものの側に,これをシステムとして理解することを著しく困難にする特別な事情があるのです。以下には,結びの言葉として,そのことを述べておきたいと思ひます。
 「特別な事情」は二つあります。そのひとつは,いま我々の見る漢字は,「楷書」によるそれだといふことです。これに前にもちょっと触れたことですが,漢字のなかで圧倒的多数を占めるものは「形声」によるもの,次が「会意」によるものですが,この「形声」「会意」二つの作り方による「合成文字」の元になってゐるものは,「象形」「指事」の何れかによって作られた「原形たる文字」です。ところがその原形は,篆書か隷書でみればそれが現はさうとしてゐる形は掴めるが,楷書であっては,よほど丁寧な説明を,篆書なり隷書なりの原形に遡りながらして貰はないとわからない,といふ事情です。ところがその篆書や隷書は,いまの日本人にとって甚だ縁遠いものになってゐますから,甚だ困るわけです。
 いまひとつの事情は,特に「形声」についてのことですが,形声の場合,合成された字の一部分は音を示すわけですが,その音が,長い中国の歴史において,いろいろに変化した,地域によっても,漢字の発音は全く異なってゐる。従って,「形声」による文字の一部は音を表はす,といってもその音自体が甚だみ難いものになってゐるわけで,この事実が,”漢字の仕組みはさう簡単にはわからない”といふ事情を作ってゐるのです。
 ですからこれは,要するに学者に委せるほかはない問題であるわけですが,にも拘らず,「漢字の仕組み」は,複雑であろうと何であろうと,厳としてそこに在るのですから,素人なる国民一般も,”その大筋の理解は持つ”といふところまでは,是非行きたいと思ふ次第です。
 なお上記の説明を補ふものとして,以下に,
(一)図形を添へた「象形」以下の文字の作り方の説明とその例
(二)部首一覧表
(三)その他
を添へることにしました。

(右の(一)(二)(三)は目下作製中です。)

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