国語施策・日本語教育

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次第 今後の運営について

有光会長

 まず,(1)の今後の運営についてであるが,従来から国語審議会は運営委員会を設けて,審議会の運営について協議をし,運営の円滑を図ってきた。そこで,今期も引き続いてこの運営委員会を組織し,会長を補佐していただく必要があるので,従来どおり運営委員会を設けたいと思うが,いかがか。(「異議なし」との発言があった。)

有光会長

 御異議がないようであるので,運営委員会を設けることにいたしたい。運営委員会の委員の指名は,先例によると会長一任ということになっているが,そのように取り計らってよろしいか。(「異議なし」との発言があった。)

有光会長

 御異議がないようであるので,指名させていただく。木内,酒井,鷹取,服部,林(大),茂串の各委員,それに会長及び副会長が加わって8人といたしたい。
 この際,審議の進め方全般について,自由に御意見を交換していただきたい。
 先ほど文化部長から,昭和41年の「国語施策の改善の具対策について」という諮問以来,国語施策の改善の具体策について毎期の国語審議会が非常に御熱心かつ周到な審議を重ね,それぞれ答申をお出しになり,国語施策の改善が図られてきているが,昭和41年当時予定した検討すべき問題点は大体決着がつき,残っている問題点は「現代かなづかいについて」であるという説明があった。したがって,「現代かなづかい」の内容上の問題について審議するのが,当面の我々の仕事かと思う。
 しかし,それと関連した問題についても十分総会で御発表いただき,それらの扱いについては,その都度運営委員会の御協力を得て,総会の御意向を適正に処理してまいりたいと考える。この際,今後の運営について,発言しておきたいとお考えになるようなことがあったらどうぞ。

村松委員

 従来の審議会の運営の方法として,総会で全委員の意見を出し合うということが本筋であるが,それの補助というか,それをより円滑にする方法については,運営委員会で,しかるべくお考えいただけるとは思うが,従来のことを参考までに申し上げると,当用漢字の検討のときは,漢字表委員会という,漢字に関する専門の委員会があった。それと並行して,問題点整理委員会というものがあって,そこで全委員に対して,こういう問題をどういうふうに考えるかという趣旨のアンケートを作成した。そして,その回答を整理したものに基づいて漢字表委員会で審議を進めていくという方法であった。それを応用するとすれば,今回も国語学の御専門の方々によって「現代かなづかい」に関する専門的な問題を検討していただくと同時に,問題点整理委員会のほうで幾つかの事項についてアンケートをとるというのも一つの方法ではないだろうか。従来の経験によって申し上げるわけである。

有光会長

 ただいまの御発言は,誠にごもっともだと思う。最終答申を出すまでには,いろいろな段階を経て,周到な審議をいたして,適正な答申にもっていきたいと思うので,アンケートをとるとか,その他いろいろ運営委員会のほうでもそういう御意見を踏まえながら,今後の運営に当たってまいりたい。ほかに御意見をお願いしたい。

鈴木委員

 答申までに要する年数は,どのくらいを予想しているか。

有光会長

 一応我々の任期は2年であるが,その間に結論が出れば結構であるし,中間発表でもして,それに対して更にまた審議を行うという事態になれば,1期ではおさまらなくなるかもしれないと思うが。

北橋文化部長

 ただいまの御質問と会長のお答えになったことに,私の方から若干補足的に御説明申し上げたい。審議の期間についてであるが,あらかじめ何年かかるというふうに,もちろん決めているわけではないが,ただ,従来の審議の経過から考えると,「当用漢字改定音訓表」と「改定送り仮名の付け方」(昭47.6答申)のときには,先ほど申し上げたように3期6年かかっている。「常用漢字表」(昭56.3答申)のときには4期8年かかっている。これら,音訓,送り仮名,漢字表については,中間試案を公表して,広く世間一般の意見を聞き,それを基に更に検討を加えるという慎重な手順が踏まれてきたわけである。今回も,当然これに準じた慎重な取り運びが必要であろうと考えるので,それ相応の期間が必要ではないかと考えている。

鈴木委員

 総会の1年間の予定回数のようなものは,従前はどういうことになっていたか。

有光会長

 後ほど,少なくとも次回の総会の日取りについてお諮りしたいと思っているが,大体の見通しについて文化部長から,過去の例も参考にしながら説明してもらいたい。

北橋文化部長

 第14期は,総会を4回開いている。その前の期が,これは少し多くなって8回開いている。

有光会長

 いまお聞きのとおり,第13期は2年で8回だったそうであるが,前期の第14期は2年で4回だったそうである。
 仮名遣いの問題は,従来の問題に比べて,論議の見当が比較的つけやすくはないかと思う。漢字のときのような大変な御苦労はないかと思うが,一応第15期については,次回の総会をできれば7月ごろにさせていただいたらどうかと思う。今日いろいろ資料をお渡ししてあるので,これらをよく御覧いただき,この7月には相当具体的な御意見も出るのではなかろうか。その御意見を基にして審議が更に進められるとすれば,1年に2回ぐらいだろうか。7月の時点でまた,後をどうするかを御相談したらいかがと思うが……。

木内委員

 会議は,やっぱり面白くないといけない。面白いというのは,自分の意見が通ることも面白いが,それよりも,有効であった,なるほどあってよかったというふうでないとまずいと思う。そういうことはやかましく言えば,運営委員会の問題である。だから運営委員会で,私も運営委員の御指名を受けたから,そのときに申し上げる方がいいかとも思って,ちょっと控えていたけれども,黙っていると,今日の会はこれで散会してしまって,今日初めて国語審議会にお出になった方は,何とつまらないものだとお思いになってお帰りになると,非常に後でまずいと思う。だから,運営委員会が開かれたら,そのときに,私ならば私として言うであろうことをちょっと御披露して,御参考に供した方がいいと思う。
 いま,村松委員からアンケートをとってはどうかという御意見があったが,これは大変結構であるが,同時に,委員の方から気楽な意味でヒントを運営委員会なりあるいは会長なりに,会長は運営委員会と一心同体のものであるけれども,どんどんお出しになるのがいいのではないか。仮にその希望が実現して運営委員会で議論するとすればどんなことになるであろうかということを今日申し上げておいて,そんなことなら自分はこういう考えがあるとか何とかいうことを言っていただくよすがにもなるかと思うから,ちょっとそれを申し上げたい。
 いままでの例で言うと,真っ先に決めるべきことは,部会を設けるかどうかだろうと思う。部会が非常にはっきりしていたのは,「当用漢字音訓表」と「送りがなのつけ方」の検討のときである。漢字部会とかな部会という二つに分かれて,これは部会がはっきりしていた。
 「当用漢字表」が問題になってからは,専門の部会は漢字表委員会一つしかなかった。しかし,別にたくさん案件があったから,問題点を整理する委員会というのができた。
 今回そういうものが必要だとは私は考えないが,部会が一つしかできないとなると,皆さんの参与がないわけである。部会である以上,余り大きくてはこれもまたまずい。そこらをどう調和するかというので,さっき申したように,ヒントをどんどん出していただくというのが非常にいいかと思う。
 もう一つは,ざっくばらんな会合である。つまり,速記をとって,それが公式の政府の報告書になって,何となく堅くなって話さなければならないということを避けるための非公式の懇談会ということなので,それはいままでも何回もやったことがある。この非公式の懇談会を活用すればいいので,私,いま思いついたことであるが,例えば,今日のようなとき正式の会合はこれでおしまいにして,あと40分あるから,これを非公式のざっくばらんな懇談会にするということになれば,わざわざ日を改めて集まっていただかなくてもいいかと思うし,あるいは非公式の懇談で集まった後で,今日のこの部分は正式の会議の議事録に残したいということがあれば,そういうふうにやるのもいいかと思う。
 それから会長のお言葉に,いままでの当用漢字表の検討と違って,今度は扱いが易しいかのごとく聞こえるようなお言葉があったので,ちょっとコメントしておきたい。
 当用漢字表の検討というのは実に時間がかかりすぎたと思うけれども,それは要するに漢字をだんだんやめていくかどうかというのが戦後の国語施策のポイントなので,それをやめていこうと正式には言わなかったが,そのつもりであったものが,それをやめることはしないで,漢字表は目安だということに切り換えるには大変やかましい,これはプリンシプルの問題であるから,議論があった。その意味で当用漢字表の検討はやかましかった。
 もう一つ,当用漢字表の検討は1,850字を千九百何十字にするにしても,一字一字やっていくのだから,とてもこれは大変な時間がかかる。ところが今度の仮名遣いは,「現代かなづかい」というものがどういう意味で作られたか,それを実施して,もう30年以上になるが,それをどういうふうに理解するかということで,もとの難しい,いわゆる旧仮名というものに戻せと言う方もあると思うけれども,私はそこまでは考えない。しかし,旧仮名の良さというものは,またすばらしい良さがあって,これはいけないんだということは断定できない。それは物の見方の争いなのである。だから長い議論をしてもだめなことでもある。
 しかし,この国語審議会は,国民のためにやっている会であるから,ここでいい結論を出すだけではだめで,議論をしている間に国民に何を議論しているか,何が問題なのかということが自然になるべく多く浸透して,国民の側からも反響が聞けるようにするのが望ましい。
 そうなると,さっきいつまでこれはかかるのかというお話があったが,余り短兵急に2年で答申ということになると,国民の反響が聞けない,あるいは聞き方が足りないということになってくるかもしれない。そうなるとゆっくりやる方がいいということにもなる。しかし,ただぼんやりゆっくりしていたのでは,これもまずいということになるので,そこは会長の手腕の示しどころであるからどうぞよろしくお願いしたい。
 そんなことで,プリンシプルの問題,見方の問題だから,これは議論したとて勝ち負けが決まる問題でもない。何となくやっぱりこうだなと思えてくるような問題であるから,時間をかけなければならないという要素もあるけれども,激しい論戦をするというものではないらしい。そんな点をお感じになって,楽な気持ちでやろうとおっしゃったのかと思う。
 こんなことが私のいま持っている感想である。次回の総会をいつお開きになるおつもりか,会の終了までに聞かせていただきたいと思うが,次回までに国語審議会あてなり,会長あてなりに,いろいろ意見を寄せていただいたら大変円滑なスマートな運営になると思う。これがこの審議会を有効ならしめる,すなわち面白からしめるゆえんだと思う。

有光会長

 昭和41年に「国語施策の改善の具対策について」という諮問を受けてから,国語審議会が非常に御苦労になった,その様子を紹介していただいた。それがとりもなおさず,我々の今後の審議の上に,非常に重要な参考になると思う。
 次の総会が7月ごろということであれば,それに向けていろいろ運営委員会のほうにも御相談をしたいと思うが,そういうようなことをお含みの上で,この際こういうことに注意してほしいとか,こういうことはどうなっているんだというようなこと,そのほか御発言があったらどうぞ。

林(大)委員

 伺っておこうと思うのは,第15期の課題は「現代かなづかいついて」ということに集中するというふうに考えてよいかどうかということである。と申すのは,昭和41年の中村文部大臣の諮問は,一つ一つの箇条について諮問はされているけれども,その前提には,漢字仮名交じり文というものが当面の我々の理想的な表記体制である,日本語を書き表すための一つの体制としてそれを考えるということがあった。将来問題になるかもしれないにしても,ここでローマ字化であるとか,漢字全廃ということは考えないということである。それで,漢字仮名交じり文の書き方というものについてどう考えていくかということを国語審議会はやってきたのであると思う。
 ちょっと外れるけれども,もう一つ,毎期の国語審議会の初めに御議論が出たのは,文字のことばかりやっていないで,話し言葉のことも議論してはどうかということであるが,当面,文字の書き表し方の問題のほうへ議論が進んだわけである。
 ところで,この書き表し方という方面にしても全体としての漢字仮名交じり文という体制についての問題を考えるとすると,仮名遣いの問題のほかにもまだ残されている問題がないわけではない。細かいことを申すけれども,例えば,片仮名で書かれる外来語の仮名遣いという問題があって,これも一つの標準が欲しいと言われているようだし,また数字の書き表し方とか,それからローマ字の使い方,漢字仮名交じり文の中にローマ字を入れるときの問題,そういうこともないわけではない。
 しかし,そういう問題に議論が進むこともあり得るかと思うけれども,少し広いところで,ただいま木内委員からお話しが出たように,懇談会とか,いろいろ自由に意見を述べるところがあってよかろうとおっしゃったかと思うが,そういうときに,そういう議論の方へも進んでいただければいいのではあるまいかと感じている。
 ただ単に,「現代かなづかい」を検討するだけでは,それも大切なことだと思うが,それだけではちょっと足りないような感じがするので,感想的に申し上げる次第である。

有光会長

 非常にいい御意見を頂いた。この第15期の審議は,昭和41年の諮問のうち,「現代かなづかいについて」ということに重点がかかっておると思うが,それに関連していろいろまた,今後の国字・国語問題について参考とすべきような御議論も,私はあって結構ではないかと思う。ただそれをどういうふうに扱っていくかということについては,ここで十分委員のかたの御意見をお出しいただいておいて,それを運営委員会で十分御相談をして委員の皆様方の御意見をどういう具合に生かしていくかということで,今後の運営をいたしてまいりたい。ほかに御意見があったらどうぞ。

木内委員

 国語審議会令の第1条を見ると,これを厳格に読めば,諮問を受けなければ動けないようになっている。
 ところが,そこに3項目が挙がっているが,例えば,2項目の「国語の教育の振興に関する事項」というのは,私はこれで十数年国語審議会に関係しているけれども,御諮問にあずからないから,もちろん審議会では何の発言もないわけである。
 そこで質問であるが,国語審議会が文部大臣に対してこういう諮問をしてくれるべきではないかという──建議というやかましいことを言わないで──道を開いたら,さぞ具合がいいだろうと思う。これは何も,いま決めていただくことではないが,そうしたら大変都合よくいくと思う。このことを何らかの機会に確認されて,そういうことを周知せしめることができればありがたい。

北橋文化部長

 木内委員からのお尋ねの件であるが,国語審議会令の第1条に,「国語審議会(以下「審議会」という。)は,文部大臣又は文化庁長官の諮問に応じて次に掲げる事項を調査審議し,及びこれらに関し必要と見とめる事項を文部大臣,関係各大臣又は文化庁長官に建議する。」とあるから,文部大臣,関係各大臣,又は文化庁長官に建議をするということが建前上できることになっている。
 なお,現に,昭和47年に国語教育の振興に関する建議を審議会から頂いている。それは,学校教育,家庭教育,社会教育を通じて,国語教育の振興に努めるべきであるという御趣旨の建議であるが,御参考までに申し上げておく。

渡部委員

 これはお願いであるが,仮名遣いに似たような問題を持っている国は,必ずしも日本だけではなく,韓国でもきっと持っていると思うし,あるいはスペリングの問題を持っている国もあると思う。そういう方面の専門家で,長い話は困るが,15分ぐらいでそういう国々の問題点とその解決の方策,それがどのくらい成功しているかなどということを時々,我々に聞かせてもらえる機会がないものだろうかと思う。
 それから,仮名遣いの問題でも,発音式にするか,それとも五十音図という,あれは一種のマトリックスになっているわけで,これは特別に我々の先祖がつくり出したんだと思うが,それによった方がいいのかということについては,最近のコンピュータ関係などで発音を文字化するときにどういう様式がいいかなどについての考えも参考になる。必ずしもそういう人たちの意見に従うわけではないが,そういう多方面から国語問題に携わっている人の現場報告みたいなものを,短時間でかっきり説明してくれるような人を選んで,時々聞かせていただけたら大変ありがたい。また,ここにおられる委員の方にももちろんそういう方もいらっしゃるし,委員に限らず,実地に携わっている人からの現場報告,そういう機会があるといいと思う。

有光会長

 十分そういう点も考えてまいりたい。大分前の審議会のときであったか,「英語のbombという語の一番おしまいのbを取るのには,bomb以上の力が要るだろう」とバーナード・ショーが言ったという話をされた委員もおられた。
 御専門の方に特別にお話しを願う機会などについて,今後運営委員会で十分相談をしてまいりたい。
 ほかに御意見があったらどうぞ。
 それでは,今後の日程について確認をお願いしたい。運営委員会はなるべく早い時期に開き,今後の審議会の審議の進め方,問題点の取り上げ方などを検討していただきたいと思う。それを総会に御報告して御了承を得た上で審議を進めるということにいたしたい。
 なお,次回の総会は,7月中旬ごろを目途に開きたいと考えている。運営委員会の方にはよろしくお願いいたしたい。また,委員の方も大体7月中旬ごろを心積もりにしておいていただければ幸いである。
 本日の総会はこれで閉会としたい。

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