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次第・議事要録 第2委員会における論議の概要について1

清水会長

 まだ御発言を御希望の方がいらっしゃるかと思うけれども,また後ほどまとめて伺わせていただくので,第2委員会の経過の御報告をちょうだいしたいと思う。

水谷(第2委員会)主査

 第2委員会については,私,水谷と副主査の小林委員の二人で報告をさせていただく。
 第2委員会自体の活動は,10月28日以降,5回委員会を開いてきた。10月以来目指したことは,まず,問題の所在,何が問題であるかというのを徹底的に追求しようということで進めてきた。それが,ほぼと言っては間違っているかもしれないが,かなり分かってきた。次の段階ですべきことは,それではその問題をどのような方針の下に整理するか,どのような方針を打ち立てていくかという段階にこれから入ることになるだろうと思っている。
 今日,ここでなるべく具体的な形で御報告をして,今までの私どもの認識について,もう少し違ったことがあるよとか,こういう方面のことも考えてほしいというような御意見をいただいて,これからの方針作りへ向けての参考にさせていただけたら有り難いなと思っている。
 資料2「第2委員会における論議の概要−2」を使って御説明申し上げる。冒頭にあるように,10月28日と11月の2回については,前回のこの総会で御報告申し上げた。したがって,その後の12月,1月,2月の3回分について,ここに追加した事柄を用意したものである。
 1は「検討の範囲・基本姿勢について」というタイトルが付いている。この数字で表されている枠組み自体は,前回の報告,論議の概要とはちょっと変わっているが,全体を整理するために便宜的に立てたものであり,これに拘束されるつもりはない。大体こんな意見が出てきているんだということの目安にしていただけたらと思う。
 1ぺージの1は「検討の範囲・基本姿勢について」,2ぺージに行って「表外字の字体統一基準について」,「(1)基本的な認識・方針にかかわること」,3ぺージヘ行って,「(2)統一基準の具体的な内容にかかわること」,4ぺージの下から3分の1辺り,「3 JIS漢字について」,5ぺージの4の「康熙字典の位置付けについて」,5の「固有名詞の扱いについて」,6ぺージの「6 国際社会への対応について」,「7 学校教育との関係について」,こういった事柄について,テーマを立てたりして検討を進めてきて,あるものはそのものずばりのテーマが会議の議題にもなった。
 1ぺージの「基本姿勢について」の部分であるが,○を付けて書かれている中身は,実際の委員の先生方の御発言から取り上げてきたものである。表現自体は,事務局が整理してくれているが,もしかすると御発言いただいた御趣旨とずれが起こっているかもしれないので,もし何かあったら後ほどお知らせいただきたいと思う。
 一番最初の○にある「実際に使われている漢字すべてを見渡す必要がある。」,二つ目の「JISの第1水準・第2水準までの範囲を目安として議論していけばよい。」の二つは,前回の総会で御報告した中身そのままである。三つ目から以下が,第3回,4回,5回の委員会の中で表れてきた意見である。この部分のところを具体的にお分かりいただいて,少しでも何か継ぎ足すことをお受けしたいと思うので,ちょっとお時間をいただいて,読ませていただく。三つ目の○から始める。

水谷(第2委員会)主査

 「国語教育又は社会生活から見た文字の過不足」という観点が非常に大事で,その視点がないと表外字の字体の議論をしても無意味だと思う。
 新聞社などでは常用漢字表が制限的に働く。制限を作っておいて,それ以外の部分について議論するのは意味がないと思う。この辺まで使っていいという基本的な線を出すことの方が大切だ。国民にとって何が必要かを考えねばならない。
 昭和20年代の当用漢字における略字体の採用は,国民の識字率を上げるための施策の問題だった。我々が,一般には用いない字だという前提で表外字の略字体を示すのは矛盾ではないか。また,「しんにゅう (1点か,2点か)」と「,鴎」は別の問題だし,一般名詞と固有名詞を一緒に議論するのも混乱の元である。検討の範囲を幾つかに区切って議論すべきである。
 ワープロの容量も増え,第2水準まで搭載するようになり,表外字の字体のゆれが,一般の人の問題になったということだ。
 表外字の字体についての考え方を示すことが我々に与えられた課題だ。それに対し,使える漢字をもっと増やすかどうかの検討は我々の課題ではないと思う。方針を変更するなら,総会レベルでの了承が必要となろう。
 出版社では.従来, 当用漢字,常用漢字ではとても字種が足りないので使用範囲を拡張して用いてきた。やはり常用漢字の範囲がもう少し広がっていかないと不都合が多いと思う。今期の第2委員会で扱うには大きな問題だが,今後の一つの課題だと考えている。
 常用漢字表は現在表記の目安として定着しているが,国語審議会が表外字を扱うと,常用漢字表の字種を広げるという印象を与えるおそれもあり, 慎重に進める必要があると思う。具体的に答申や報告を出す段になれば,社会に与える影響を十分に考えなければならない。
 実社会での問題と,我々が決めねばならない基本的な課題との関係を押さえておく必要がある。学校ではルールを厳しく適用して,学習の負担を軽くする必要がある。ワープロ等の業界では一般のニーズにこたえる必要があり,多様性に対応し得るものを作ろうとしている。その間に混乱が生じている。当事者は基準を決められないので国語審議会に決めてほしいという要請もある。

 その次の「通産省,法務省といった官庁や新聞社などとの協調体制を云々」と,その次の「現実の文字の使用状況を云々」の項目は,前回の総会で皆様にお知らせした「論議の概要−1」の中にも含まれていたものである。
 今読み上げたような中身は,かなりの部分でお互いに矛盾する意見が出てきている。そこをこれからどのようにして方針へ結び付けていくかというところが課題なのであるが,その方向付けについても,こういう視点が必要だとか,ここにはこれが挙がっていないから,こういうことも考えてくださいよというような御意見を賜りたいと思っているわけである。
 2ぺージに進む。2ぺージの「2 表外字の字体統一基準について」,「(1)基本的な認識・方針にかかわること」。
 これも,一番最初の○の部分は前回の総会で御報告した中に示してあったものだが, 「現実の混乱状況を交通整理しつつ,各方面で守ってもらうための,字体問題に関する根本的な考え方・基本理念を提示する。」は,前期の審議会から受け継いだ事柄そのものでもあるし,今期の審議会を進めていくために,一番最初の段階で委員会の中で確認し合った基準の性格にかかわる根本的な問題であると思っている。

水谷(第2委員会)主査

 次の「各新聞社云々」というところから始まるこのぺージのほとんどの部分が,3回,4回,5回の3回にわたって新しく出てきている意見である。これも読ませていただく。

 各新聞社,印刷業界,ワープロメーカ-等には現在持っている方針が,それぞれある。国語審議会で示すものを,「これは基本であるので,実際の運用はそれぞれの業界で自主的に判断してください」という性格のものにするのか,「できるだけこれに従ってください」という性格のものにするのかという問題もある。
 表外字の字体の標準化(例えば代表字体の提示もその一つ)が漢字使用の制限になるという考え方をする必要は全くない。逆に,多様性の中の標準化という発想が大切である。

 次の二つの項目は, 前回に既に出ていたものである。


 ワープロについては機種間の互換性の問題もあるので,厳格な字体統一基準がほしい。

 これはワープロにかかわっていらっしゃる方からの御発言であった。


 字体の基準は範囲の問題ともかかわる。例えば,第1水準の中で矛盾がなければよしとするのか,もっと広い範囲に応用できるようにするのかでは,やり方が違う。このような問題点を明らかにし,矛盾が生じないような基準を決めるべきだ。

 この辺りの問題になると,先ほどの御議論の中にあったように,国語審議会のすることは一体何なのかということがやはり問われているかと思う。


 字体に関する用語の概念を決めておく必要がある。「康熙字典体」「標準字体」「標準字体とデザイン差を持つ字体」「略字体」「異体字」があり,更に「代表字体」を定めるということになると,それぞれの字体の定義や相互の関係をよく整理しておかなければならない。その上で,「標準字体を使うべきだが,略字体を使ってもよい」「固有名詞に限って異体字を使うことを認める」などの方針を立てるべきである。

 この辺りになると,基準を作っていく上での方針をどうするかということにかかわった意見が出てきている。


 「吉」と「」はデザイン差でも「士」と「土」はそうではないといった個々の問題もあるので,具体的な素材について議論する中で,術語の概念規定や全体の体系付けを探っていく方がよいのではないか。

これは前の発言に対する更に追加の発言である。


 デザインの差(縦棒か点か横棒かなど)によってできる異体字――これは,例えば「言」という字の一番上が点の形になるか横棒になるのか縦棒になるのかというようなことを意味しているのであるが――まで一字一字検討すると膨大になるので,その辺りの原則はまず決めておくべきである。さらに,新聞雑誌等で実際にどの程度表外字が使われているかを統計的に把握したり,その中で,どういう連想が働いて略字化が行われるのかを見極めることによって,略字化を及ぼす範囲が特定できると思う。
 国語国字問題は社会の発展とともにある。現代はマルチメディアの時代なので「簡単に書ける」という必要はない。漢字は書くことが基本だという考え方も分かるが,同時に,表意文字だということも基本として考えたいと思う。

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