国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 資料説明

清水会長

 引き続き,事務局の方から,配布されている資料について御説明をいただければ有り難いと思う。よろしくお願いする。

鎌田国語課長

 それでは,資料について御説明申し上げる。
 その前に,先生方のお手元の封筒の中に,本日付けの国語審議会委員の発令の辞令が入っているので,御確認いただければと思う。
 それでは,今期の審議に関連して,資料5「第21期国語審議会 新しい時代に応じた国語施策について(審議経過報告)」以下について,今期の審議に至るまでの経過を御説明申し上げたいと思う。
 まず,資料5の冊子であるが,冊子の中に2枚紙の資料が差し込んであろうかと思うので,そちらを御覧いただきたい。この2枚紙の資料は,報告の主要事項について,私ども事務局の方でまとめたものである。これに基づいて御説明する。
 1ぺージ目の「I 現代における敬意表現の在り方」については,コミュニケーションを円滑にする言葉遣いを考えた場合には,いわゆる敬語ばかりでなく,相手や場面に応じた様々な配慮の表現が実際には用いられており,それらが敬語を含みつつ,全体で敬意の表現になっているという認識の下に,前期の審議会ではこれを「敬意表現」と名付けている。そして言葉遣いの問題として,この敬意表現全体の在り方を考えることが必要であることを指摘している。
 その上で,報告では,現代社会の特徴として,都市化,国際化,情報化,高齢化など様々な状況が見られ,また多様な価値観も共存しているが,いつの時代であっても,人間関係を円滑に保つためには,この敬意表現を適切に使うことが重要であるとしている。
 この前期の報告は,敬意表現に関する言わば総論的な考え方,理念についておまとめいただいたもので,いわゆる各論にわたる具体的な敬意表現とその使い方については,次期審議会の審議にゆだねるとしている。したがって,先ほど長官からも申し上げたとおり,今期の御審議においては,現代敬意表現の使い方として,場面に応じた敬意表現の具体的な使い方について御審議をいただければ幸いである。
 続いて2ぺージ目の,II表外漢字字体表試案」である。前期の報告では,ここにゴシックで書いてあるように,「現実の文字の使用状況について分析・整理し,表外漢字の字体問題に関する基本的な考え方を提示するとともに,印刷標準字体を示す」ということを基本的な考え方として,おまとめいただいている。
 ここで「表外漢字」とは,常用漢字表に掲げられていない漢字の総称のことである。この表外漢字については,これまで字体の基準が設けられていなかったこともあって,特にワープロ等の情報機器から,例にある「冒涜(とく)」の「とく」が「涜」の字のように,略字体しか打ち出されないなど字体に混乱が見られたことから,国語審議会において御審議をいただいたものである。
 この問題について,前期の審議会では,印刷・出版物における文字使用の実態を踏まえて,明治以来の伝統的な印刷文字字体を印刷文字における標準的な字体という意味で「印刷標準字体」として位置付けられている。また,略字体については,使用習慣や使用頻度を勘案して,一部のものについて,例にあるように,「簡易慣用字体」という名称の下にそれを選定してある。
 前期の報告の後ろの方に,本表という字体表が掲載されているが,これは使用される頻度の高い表外漢字で,字体,字形上,特に紛らわしいもの215字を掲載したものである。この中には,今申し上げた簡易慣用字体も選定されているものについては,右側に掲げられている。

鎌田国語課長

 前期の審議においては,このように字体表の試案をおまとめいただいたわけであるが,前期の報告の中でも触れられているとおり,印刷標準字体の字形や簡易慣用字体の選定方針などについて課題が残されている。これらの問題について,引き続き御審議をいただければと考える。
 続いて,資料6であるが,白表紙の第20期国語審議会「新しい時代に応じた国語施策について(審議経過報告)」を御覧いただきたい。最初のぺージを開いていただくと目次があるが,そこを御覧いただきたいと思う。
 目次の中では,Iとして「言葉遣いに関すること」,IIとして「情報化への対応に関すること」,IIIとして「国際社会への対応に関すること」というふうになっている。これらのうちIの「言葉遣いに関すること」とIIの「情報化への対応に関すること」については,それぞれ今申し上げたように前期の審議において審議が継続されたわけであるが,Vの「国際社会への対応に関すること」については,前期においては審議が中断している状況である。したがって,先ほど大臣及び長官からもお願い申し上げたとおり,今期の御審議において,日本語の国際化にかかわる問題について改めて御審議をいただければ幸いだと思う。
 第20期において審議された事項としては,目次にあるように,日本語の国際化にかかわる基本的な認識をはじめとして,「日本人の言語運用能力の在り方」「日本語の国際的な広がりへの対応」,その他としていわゆる片仮名語の乱用の問題である「外来語の増加や日本語の中での外国語の過度の使用の問題」,そして「姓名のローマ字表記の問題」として,ローマ字表記の際に,姓を先にすべきか,名を先にすべきかといった問題について御審議をいただいたわけである。今期においても,これらの問題について更に深めた御審議をいただければと考えている。
 また,第20期において御審議いただいたこれらの事項のほかにも,日本語の国際化にかかわる問題について幅広い観点から御検討いただければ幸いである。
 続いて,資料7の説明に移りたいと思う。
 資料7は,「平成10年度国語施策懇談会の概要」となっている。これは前期の審議会の審議経過報告をめぐって,私ども文化庁において,9月21日,22日の両日にわたって,国語施策懇談会という名の下に,前期の報告について関係各方面の有識者の方々に意見発表をいただいたり,またパネルディスカッションを行ったりした時のものである。資料の1ぺージ目と2ぺージ目にその概要をまとめてあるので,御覧いただければと思う。
 最初の1ぺージのところであるが,主な意見としては,敬意表現の在り方にかかわって,国際社会における言語運用として見た場合に,日本語における敬意表現は客観的にとらえるべき内容をあいまいにする嫌いもあるというマイナス面についての指摘。それから,「敬意表現」という用語よりは,むしろ「敬語表現」と名付けた方がいいのではないかという意見。あるいは個々の表現だけを取り上げて論じるのではなくて,表現全体の中で丁寧さを考える必要があるのではないかという意見。また,敬意表現の働きというのは,単にある場面における相手との関係性だけでなく,その伝える内容や伝達の仕方にも関係するのではないかという指摘。また,学校教育との関係では,大人の社会全体に敬意表現が少なくなっている。そういう社会状況を認識する必要があるのではないかという意見などが出されている。
 2ぺージ目の方は,「表外漢字字体表試案」に関することである。お二方に意見発表をしていただいているが,意見の内容としては,試案の基本的な理念には賛成だが,個々の漢字の字体とデザイン差の違いをより明確に示すべきではないかという意見,それから,そもそも表外漢字の字体基準を示す理由や必然性,字体簡略化の考え方について試案では十分に述べていないのではないか,常用漢字の簡略化原則に沿って,表外漢字についても字体を整理すべきではないかという意見も出されている。

鎌田国語課長

 また,パネルディスカッションの中では,常用漢字表の表内の漢字と表外の漢字で部分字形を不統一にすることは,漢字の負担を増やすことになる。特に「しんにゅう」は「1点しんにゅう」か「2点しんにゅう」か,あるいは「しょくへん」等の扱いが,表内漢字と表外漢字で異なるのは問題だという意見。また,試案では,異体字やデザイン差に関する規範が明快に示されているが,デザイン差に関しては更に詳細な記述があった方がよいという意見,あるいはJIS規格で例示する漢字字形は国語審議会の定めた形に従うべきであるし,また,それが可能であるという意見も出されている。また,今回の試案の基本方針は妥当であり,漢字の字体は基本的に変えるべきではないという意見,今回の試案は各方面に及ぼす影響を十分勘案しているという意味で極めて妥当であるとの意見もあった。また,表外漢字の使用実態の調査対象として新聞も入れるべきだということが言われているけれども,新聞については各社が自社の方針で字体を定めているのであり,新聞についてまで調査する必要はないという意見も出されている。それから,今回の表外漢字字体表試案は,常用漢字表の拡大やいわゆる第2常用漢字表の作成といったものを考えないという前提で検討されたものであるという指摘などもあった。
 以上であるが,パネリストや意見発表者の意見の詳細な内容については3ぺージ以降にあるので,後ほど参考にしていただければ幸いである。
 最後に,資料8ということで新聞記事の抜粋について御説明する。資料8は,前期の報告に対する新聞各紙の論調を私ども事務局の方でまとめたものである。前期の報告に関しては新聞各紙で報道しているが,その中で,社説あるいは解説などの形で論評しているものを抜粋した。新聞各紙の記事の中では,特に報告の中の字体に関する問題について主に扱われている。
 まず,1ぺージ目の朝日新聞の社説であるが,傍線が引いてあるように,前期に行われた漢字の頻度調査は書籍が中心で,多くの人が目にする新聞は対象になっていない。「常用漢字は略字体,表外漢字は康熙字典体という二重基準による混乱は起きないか。そもそも,常用漢字表制定の理念を軽視するものではないか」という指摘である。
 2ぺージも同じく朝日新聞で,これは解説であるけれども,冒頭のところに傍線が引いてあるように,「試案は字体混乱の解消を掲げながら,定着した簡略体を基本的に否定することで二重基準を生み,かえって混乱を招く。分かりやすさを目指した漢字表の精神にも逆行する。JIS方式の略字は,排除するのではなく,併用を認めるのが妥当だ」としている。
 3ぺージ目は毎日新聞の解説である。傍線を引いてあるところが細かくなって大変恐縮であるが,左側の下から2段目のところに,「戦後の平易さを追求してきた漢字政策と異なる方針は新たな混乱を生むことになりかねず,慎重さが求められる」「今回,表を作るに当たって行った漢字使用頻度の実態調査は,印刷会社が扱う書籍類を対象にした。問題となっている日常生活で多く目にするワープロ作成の文書が抜け落ちた。印刷文字で大きな影響力がある新聞も対象から外れている」とある。
 4ぺージ目は読売新聞の解説であるが,一番下のところに傍線を引いてある。「示された表外漢字字体表は,統計数字で機械的に選んだもののため,説得力不足の感も否めない。新聞業界に例を取っても,略字体の使用実態の違いによって意見が微妙に違って来るなど,なかなかコンセンサスが形成しにくいテーマでもある」「各界の意見に改めて耳を傾けたバランスのよい討議が期待されるとしている。
 次の6ぺージ目は,日経新聞の記事であるが,日経新聞は字体と敬意表現の両方が入っている。まず,字体の関係では,2段目に傍線が引いてあるように,「常用漢字と表外漢字で康熙字典体に対する考え方が180度転換してしまった」「「矛盾している」との批判は免れない」「39字だけ略字体を認めた根拠も薄い」としている。また,敬意表現の関係では,「その場の雰囲気や相手との関係だけでなく,時代的な変化も踏まえ,敬語の使い方が多様になっている現状に一定の理解を示す方向を打ち出している」「実態に即した弾力的な運用を認める方向を示した」と評価している。
 続いて,産経新聞である。産経新聞は二つあるが,下の方の「斜断機」のところに傍線を引いておいた。その中では,「常用漢字表(1945字)以外の表外漢字については原則として略字は認めず,伝統的字体(康熙字典体)を「印刷標準字体」として使用することを求めているが,当然のことである」。下の段に行って,「しかし,新聞が指摘する「表内字」と「表外字」の二重基準は現実にある」「国語審議会はこの際,根幹に立ち帰り,国語の体系性と史的合理性とを取り戻すべく奮闘して貰いたい」としている。
 最後に,東京新聞であるが,一番下の段に傍線を引いてある。「国語審は今後最終的な基準作りに向けた作業を急ぐ。その際,なぜ略字体排除なのか,説得力ある根拠を示せるかが焦点になりそうだ」としている。
 以上で,資料の説明を終わりたいと思う。

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