国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 意見交換3

西尾副会長

 私から一つよろしいか。
 先ほどのどなたの御意見であったか,総会が堅苦しい雰囲気で,なかなか発言しにくいというお話があったけれども,私も何期かしながら,それはずっと思ってまいった。よくよくそれを考えてみると,特に総会のときには報告事項も多いけれども,御意見が出たときに,必ず会長あるいは文化庁側の方がそれを受けてお答えになる。このやりとりが非常に堅苦しい雰囲気を作っているのではないかと思うので,これからは,できれば御意見が出たら,お互いがそのことについて忌憚(たん)なく意見を言い合えるような雰囲気を作りたいものだと思うが,いかがであろうか。

清水会長

 大変結構であると思うが,どうか。先ほど,委員会の報告は,途中経過でどういうことが問題になってどういう議論があったかを説明してほしい,結論だけでは困るという話があったが,今のお話もそれに通じるのではないかと思う。委員会やワーキンググループのときの討論をまたここへ持ち込むのも困るけれども,ある程度肝心なところはそういう議論があったということを説明していただくのも悪くはないんじゃないかと思う。

内館委員

 脚本家の内館である。今回初めて参ったけれども,私,今までここに座っていて,発言が大変活発で,かつ雰囲気が軟らかかったことで,実は大変驚いた。以前,文部省ではないが,1度だけある会議に出たことがあって,余りに代理の方が多いことと,御意見を言う前に「我々のような者が皆様より先に言うのは申し訳ないんですが」とか,そういう言葉が30秒ほどあって,私はそれにあきれ果てて,そのときに2度と国の仕事はやらないと誓った。今回は,私は,もちろん話し言葉の仕事をしているということもあって,国語には,大変関心があったので,お仲間に加えていただくことをとても喜んで来たのだが,こんなにソフトで結構楽しげな会議というのは珍しいんじゃないかなという感じが本当にした。
 私,今日は黙って最後まで皆様の御意見を伺って,ちゃんと勉強してきて次回から発言しようと思っていたのだけれども,つい手を挙げた。この総会は,ほかのところに比べたら大変にいいムードなのではないかと思う。これは本当に率直な意見である。

清水会長

 ありがとうございました。

阪田委員

 東原中学校の校長をしている阪田である。先ほど井出委員からのお話で,学校教育現場で「ら抜き言葉」はどうなんだということがあったが,今まで文法を教えるときに,下一段活用とか,そういうことで,「れる」「られる」,助動詞をどう付けるんだという指導をしている段階では,実際に「ら」を抜かない正確な言葉で私たちは話をしていたので,子供たちに非常に教えやすかったが,実は今はNHKのアナウンサーも「ら」を抜いてしゃべっている。そうなると,私たち教員は,NHKがあれだから余りうるさく言わなくてもいいんじゃないかというふうな判断をすることになる。
 そこで,NHKでは,アナウンサーとして,どうしてそういう言葉を使うのか,どの辺の判断で決めるのか,質問させていただきたいと思う。

小塩委員

 私の知っている限りは,アナウンサーは「ら」を付けていると思う。記者の人が大体落とす。レポーターが落としている。日常の生活の中ではやっぱりそうなのであろう。アナウンサーは原則として落としていないと思うが,私は審議委員長であるから,厳しく言っておく。

水谷委員

 NHKの用語委員会の方をやっているので,私から申し上げるが,方針としては「ら抜き言葉」を許していない。ところが,実際のところ,今おっしゃったとおりで,アナウンサーは割に守ってくれるが,レポーターになって画面に実際に出てきてしゃべっている人の中で,アナウンサーでない人が結構多い。その場合にちょっと困るのだが,記者の人たちも,レポートをする限りは,実際にマイクを持って話をする限りはきちんと話せということは言っているけれども,結果として見ると,「ら抜き」がぼろぼろ出るということはある。今日はいいお話を伺った。教育の現場で困っていらっしゃるということは次回の委員会で報告する。

中澤委員

 私も初等教育の方を担当していて,関連しているかと思うが,今の「ら抜き言葉」は大変由々しい問題である。しかし,教えてなかなか身に付くものではなくて,できるだけ正しい言葉を使う方に触れる機会を多くして,慣れる。そして正しい言葉遣いを身に付けていくということが一番いいのかなと。もちろん国語科の指導が中心になるわけであるけれども,学校生活全体を通して,徐々に身に付けていくことが大事ではないか,こんなことを考えている。

中澤委員

 そんなことで,今私の学校では,例えば高齢者の方をお迎えして「触れ合い給食」ということを試みている。その日は軟らかいもの,お煮しめなどのよく煮たものを出すように心掛けているわけであるが,子供が入れ歯のおばあちゃんに「食べれる。」と聞いたところ,「いえ,食べられませんよ。」とお答えになった。その辺のところを担任が聞いていて,生きた教材として,「おばあちゃまが「ら」の字を入れて正しくお話になりましたね。」と取り上げて,子供たちが納得したというようなことがあった。そのように,生活の中で,敬意表現にしても,できるだけ言葉を正しく身に付けていくように私どもも努めていきたいと思っている。
 こういう審議会等でお話しいただいたことを学校の方に使わせていただくにはかなり時間が掛かるわけであるけれども,報道を通して,審議の模様等を逐次伝えていただくことが大変参考になると思っている。

浮川委員

 フランクに話ができるということに後押しされて,一番言いづらいことをあえて言わせていただく。
 一つは,私も同じ委員会の方々に背中から切り付けるようなことを言うかもしれないが,この発表した中でやっぱり気になるのは,この新聞の社説から始まって,我々が出したものに対する反応である。また委員会に帰ったら,これをやった人間ばかりであるので,場合によったら自分たち――事務局も含めて,委員の方々は本当に苦労して,私も参加して一生懸命やらせていただいたけれども,しかしながら,世の中の評判というか,見方というのはこうである。極端に言えば,白紙に戻せと書いてある。これをどのようにするかというのを自分たちの委員会だけで考えるか,総会でこういうことを考えるのか,浮川はむちゃくちゃなことを言うなと感じられる方もいるかもしれないが,これは言わないといけないんじゃないかと思って,思い切って言った。御議論いただければと思う。

牛島委員

 高等学校の牛島である。今いろいろお話があったので,私も委員になったのは初めてであるが,ちょっと申し上げる。
 すべての言語の乱れは国語教育にあるというようなことで,大体,学校教育を悪く言われるのがマスコミで,本当に腹の立つことが多かった。NHKさんも乱れは多いし,どこでどういうふうにやるのか,国語審議会というこんなに立派な審議会があるんだから,ここでちゃんとしていただきたいと思っていた。もし,「ら抜き言葉」を容認されたりすると,何だという感じになって,どこが一体責任を持つかというのがとても問題になると思う。私どもとしては,先生方にちゃんとしてくださいと一生懸命申し上げても,先生自体がもう駄目になってきつつあるということもある。だから,こうあるべきだという方針を国の政策としてきちっとしていただきたいというのが,私,お願いしたいことである。
 そして,今日フリーにお話しできるということは大変有り難いことであるが,私たち自身ももう少しソフトにいろいろな形で参加できれば有り難いなと思っていた。そんなわけで,私もこのたび喜んで伺わせていただいたけれども,実は一番困っているのは,「ら抜き」だけではなくて,敬意表現である。学校の現場においても,敬意表現というのはめちゃくちゃになっていて,先生は友達扱いで,親も先生に対して敬語を使わなくなった。こういう乱れた状態の中で,校長としては実に困って,PTAの会などでは,父母の方々にもう少しちゃんとした丁寧な言葉を使ってくださいとか,どんどん反発をしている。そうすると,校長はそう言うけれども,そんなことを言ったら駄目だ,もうちょっと丁寧に,腰を低く頭を下げて父母に対してくださいとか,大事なお子さんを預かっているのだから,言葉も丁寧に,しかも大変和やかに話すべきだとか,すべて学校側のせいにされて,自分の子供が勉強しないのに先生が悪いというような,そういうふうに言葉から発する様々なことが多くあるので,敬意表現,特に日本語の美しさとか,日本語としてあるべき姿みたいなものをきちんとしていただきたいなと私はずっと前から思っていた。
 漢字もうるさいし,いろんなことを言う方が一杯いらっしゃるけれども,どんどん言葉も変わっていくし,使わなくなる漢字もあるし,いろいろ変わっていくので,その辺のところは,やはり21世紀を見通して,この会でというか,委員会でも結構であるけれども,きちんとした形を採っていただくと有り難いなと思う。
 それから,私,ちょっと気になっているのは,最初は委員会にきちんと全員が所属するか否かということについての論議だったと思うけれども,だんだん従来の国語審議会の経緯の話になっていって,前のことがだんだん分かってきたので,それはそれで大変有り難いが,結局は三つの委員会のどれかに必ず所属するということであったと思うが,いかがか。その話はどこかへ行ってしまったような気がするが,私としては,必ずどこかへ所属して,きちんとした意見を述べ,責任を持ち,忙しい人は来ないということのないようにしていただきたいと思う。

清水会長

 今のような御意見を踏まえて,何かどうぞ。

阪田委員

 今の牛島委員の御質問の方のお答えはよろしいのか。また話を元に戻して構わないか。
 先ほどの「ら抜き言葉」の件であるが,私は文法の面から,教育現場で非常に困るというお話はしたが,実は学習指導要領では,文法は今までのように余り厳しくやらないだろうというところが見られるので,やはり,まず文法ありきというのはおかしいかと思う。実際に使われている言葉をもう少し考えて,国語審議会が一つの線を出すというのは正しいと思うけれども,今までの正しい言葉にいつまでも固執する必要はないと考えている。先ほど私の言ったのが誤解にならないように,一応話させていただく。

牛島委員

 「ら抜き」は,絶対によくないと私は思う。文法はきちんとやった方がいいと私は思っている。特に,古語の文法をちゃんとやると,現代の文法もよく分かるので,やはり今の文法だけでなく,きちんとした形を採らせていただくと有り難いと思う。
 もう一つ,私,今学習指導要領の方に出させていただいているけれども,今回,国語の方は伝え合う力,コミュニケーション能力と言っているが,そちらの方をうんと強化しようということで,それがある意味ではとても大事になりつつあるので,文法も大事だけれども,国際社会を背景にして,お互いに伝え合い,コミュニケーションしていくということはどんどん大事になろうかなと思う。
 一つ気になるのは,第3に国際化というのが出ている中で,国際化と言うと,学校教育ではどうしても英語の先生が中心になる。しかし,私は国語が国際化の中で大事な言葉を担うべきだと元から思っているので,是非今期の第3の分野は頑張っていただいて,一生懸命やっていただきたいと思う。

清水会長

 いろいろ御意見もおありかと思うが,時間もないので,最後に,お手元に参考ということで11年度の国語審議会総会開催予定(案)というのが配布されているけれども,これを御覧いただきたい。45名の委員の先生方,お一方ずつ御都合を伺って,共通の御都合のいい日を選ぶというのは技術的にも大変であるし,また,なかなか合わないと思うので,あらかじめこちらからお願いを申し上げて,申し訳ないけれども,後から入ってきた予定はできるだけ抜いていただいて,今日のような御議論がいただければ有り難いと思う。

鎌田国語課長

 御覧いただいているように,平成11年の予定ということで,4回の日程を入れている。次回は来年2月19日2時半からということで,勝手にこのようなものを書いて恐縮ではあるが,場所は同じ東條会館で,同じ部屋で開催いたしたいと思うので,よろしくお願いする。

清水会長

 3,4,5回も大体場所はここであるか。

鎌田国語課長

 3回目以降については未定であるが,できるだけこの場所で同じようにやりたいと思っている。ただ,3回目以降については,開催通知等で御連絡させていただきたいと思っている。

清水会長

 日時はこれでやりたいということで,御案内も改めて差し上げるけれども,よろしくお願い申し上げたいと思う。
 これで終わりたいと思うけれども,どうしても一言というお話があったらいただきたいと思うが,よろしいか。
 それでは,第1回の総会はこれで終わらせていただく。

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