国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 意見交換1

清水会長

 大変貴重なお話をちょうだいして,ありがとうございました。
 せっかくの機会であるので,先ほど申し上げたように,これからの審議の問題の位置付けにもなるかと思うので,何か御質問があったら,どうぞひとつ御発言いただければと思う。

徳川委員

 面白いお話を有り難く承った。7ぺージに「学習経験の有無」という表がある。学習者が,韓国の場合は49.0%であろうか。台湾,韓国の場合は,相手が65歳以上というお話であるから,旧植民地時代の人がいるということを考えなくてはいけないと思うが,中国は7.1%となっている。12億とか何とか言われている人口の中の7.1%というのは,1億人と考えていいと思われる。アメリカも5.2%で,仮にアメリカの人口が2億人だとすれば1,000万人と考えられる。さっき2ぺージのところで,日本語の学習者は100万人とか200万人とか言われていると言われたが,今の二つの地域だけでも明らかに1億人はいるわけである。これはどう考えるべきであろうか。

水谷委員

 まず,先ほど確認しなかったが,3ぺージにあるように,市民権を有する15歳から69歳までの男女という形でやっている。年齢層は,ポルトガルはやや偏りがあるが,全体として見ると,ばらついている。今御指摘の韓国の49%,台湾の29.3%,中国の7.1%という数字自体は客観的だと思うが,年齢層の高い方では,実は日本語はほとんどやっていない。

徳川委員

 旧満州地区ということか。

水谷委員

 そうではなく,中国全体である。外国語としての学習は,英語もそうであるが,ロシア語が非常に強くて,一定年齢以上の人たちは外国語はロシア語だという形で学習をしてきている。だから,年齢層をもし分けると,下の方にだけ集中させれば,日本語の学習者の数は増える。そういうことが一つある。

徳川委員

 驚くべき数字。

水谷委員

 ええ。一番最後におっしゃった100万,200万という数の問題については,国際交流基金の調査は,外国で調査対象とし得る日本語教育機関を軸にしてやってきているから,学習者のすべてを確認することはできない。確実な数で,百六十何万というのを出してきていると思うから,このサンプルで出てきた割合と基金でやった数字との間のどこかに真実があるだろうと内心では思っている。

徳川委員

 「さようなら」と「ありがとう」だけ知っていても,「習ったことがある」と言うのだとすれば,それはそうかもしれないと思うが,この辺がきちんと位置付けられないといけないんじゃないかなと。

水谷委員

 ごもっともである。

内館委員

 5ぺージの「子供に習わせたい言語」のところで,日本は,1位が英語で,2位が日本語になっている。これは,取りあえず日本人の子供は生まれてから黙って息だけしていれば日本語が話せるであろうということを大前提に考えたときに,親としては,美しい日本語を習わせたいとか,きちんと日本語を書けて読めて,そういうことができる子供にしたいとか,そういった意味があるのか。

水谷委員

 まだ中身をきちんと突き詰めていないので分からないが,最近の現象として,例えば,日本の大学で学生に日本語の訓練をしなければ駄目だという意見が広がってきている。大学生だけではないと思うけれども,今調べている中では,50校以上の学校で,もっとたくさんあると思うが,日本語の訓練のコースを作っている。そのねらいの中で一番多い理由は,きれいなとか美しいとかいうことよりは,論理的にきちんとものが言える,きちんと文が書けるということを目的としている学校が多いようである。
 今もうちょっと時間を掛けて調べようと思っているけれども,このサンプリングでやったのは大学の先生の意思とは違うから,本当のところは分からない。言葉遣いが悪いとか,ものを頼むときにきちんと頼めないとか,周りから言われていて,そういういろんなことを含めて出てきているのだろうと思うが,国語審議会に対する期待などもこの裏には多分あるんだろうと思う。

土谷委員

 この調査は面接調査であるが,最初に,日本の機関に頼まれてこれをやるということを言うのか。というのは,まず「日本」という単語が最初に出てくると,日本,日本,日本というのが頭に残る。それで何語と言った場合に,「日本語」というのが出てくる確率が高くなる。私は別に統計学の専門家ではないが,何かそういう偏差というか,偏りがあるのではないか,ちょっと多過ぎるのではないかという気がしたのであるが,それはいかがか。

水谷委員

 調査主体,どこが調査をしているかということは一切伏せた。だれがやっているかというのは分からないから,調査に来た人たちがやっているんだろうという印象を受けているのが一般的だろうと思う。最初から,それは少し危ないからと意識はしていた。余り数字が高いので,私も何か漏れていて,日本にサービスするために出てきているんじゃないかなとちらっと思ったのであるが,確かめてみると,割合忠実に隠してやってくれている。ただ,日本語について聞いているので,何となくどこかでというサービス精神は生まれてきているかもしれない。

鳥飼委員

 関連してであるけれども,例えば,アメリカで調査をなさる場合に,地域的な広がりというのは,つまり「子供に習わせたい言語」の4位に日本語が出ているけれども,西海岸で聞く場合と中西部,東海岸とでは全く数字が違ってくると思うが,地域的な差異を考慮なさったのかどうか,ちょっと伺いたいと思う。

水谷委員

 アメリカの場合は,差異,偏りはないはずだと思うが,念のために,詳しい点はちょっと担当部長に確認させていただく。

江川(国語研究所)

 調査を担当した国語研究所の江川である。
 今の御質問に関しては,アメリカは全国からランダムに選んでいるということで,サンプリングの段階では偏りはないはずである。だだし,面接調査を行っていて,回収1,000サンプルということでお願いしているので,実際には1,000サンプルより多い人数に接触して調査を行っているわけである。アメリカの場合,いろんな調査事情があって,面接調査そのものができない地域がたくさんあり,そういうところは回収不可能になって落ちていくので,実質的にはそういうところが部分的に影響しているだろうとは思っている。先ほど水谷委員の方から話があったように,まだ全体のデータの点検が終わっていないので,地域別の分析はしていない。それをしてみれば,そういうことが多分出てくるだろうと思う。

三次委員

 パーセントというのは,複数回答とか,そういう意味か。例えば,日本の場合,英語が82%で,日本語が55%になっているが…。

水谷委員

 5ぺージ,表の1,2は複数ではないと思うが,どうか。

江川(国語研究所)

 複数回答である。

水谷委員

 複数ということである。

三次委員

 100にならないので,どういうことかと気になった。どうもありがとうございました。

清水会長

 大変面白い調査の結果だと思うが,何か御質問があったら,また,こんなことがもっとあったら面白いというか,参考になるんじゃないかということがあったら,どうぞ。

坂上委員

 調査票がちょっと分からないので,どんなデータか,ほかにも採れるのか分からないけれども,「日本語」という聞き方の中では,日本語の定義もいろいろあると思う。日本語というのは,漢字もあれば,平仮名・片仮名もあるということで,構造的に難しかったりするので,日本語という形のどの辺を聞かれているのかということも随分あるんじゃないかと思う。そういうわけで,質問票の在り方が,中身の解釈に随分影響するんじゃないかということがあると思う。
 それから,好き嫌いとか,そういう意識の調査になると,それを構成している因子に関して少し調査をしておかないと,クロス調査をしておかないと,ここで類推してしまうと,経済に関係が強いところが「好き」が多いなとか関心が高いなということになってしまうので,こういう言語の位置付け,ましてや国際的に更に普及させるための政策的観点ということになると,日本語というものを既にある,存在するものとして置いてしまって,好きか嫌いかという形でやっていくと,何となく自画自賛になる結果が得られて,よかったなとか何とかいう話になってしまうところがあるのではないか。この辺は,調査をなさるときの御準備としてはどんなことをお考えになったのであろうか。

水谷委員

 調査にかかる前に,今おっしゃったようなことはメンバーの中で随分議論を繰り返して慎重を期したのであるが,きっと問題は残っていると思うので,これから分析・整理を進めていく中で,その点が問題にならないように整理を進めていきたいと思う。
 質問文の内容自体も,そういうことが起こらないように,避けるように注意してきているけれども,やっぱり何かあるかもしれない。それから,今日本当は用意すればよかったのであるが,もし御関心がおありなら,質問文を御覧いただけるように資料を準備していきたいと思う。私どもとしてはきちんとした報告書を近々出していくので,その時に見ていただけるかと思う。それまでお時間をお貸しいただきたい。

徳川委員

 7ぺージの「学習意向・継続の有無」という質問であるが,それは前の「好き?,嫌い?」という円グラフとも関係するが,先ほどの御質問で,これは日本の調査ではないように覆面でやったというお話であったが,日本語学習の意向ということを聞いてしまうと,日本語臭いというにおいがしてくるような気がする。中国は32.2%が「習いたい」。これは大変な数であって,4億人にもなる。日本の全人口より多くなってしまう。その話はともあれ,日本の調査だという感じがしてしまうという辺りについて,何とお答えになるか。

水谷委員

 そういう可能性があるとさっきも申したが,分析の段階で,それは注意しなくてはいけないと思う。といって,それを客観化するために英語・日本語・ドイツ語・中国語と列挙する形にすると,膨大になってしまうので,これはやむを得なかったなと思っている。したがって,掛かったバイアスをどう見通すかというのが勝負かなと思っている。

徳川委員

 私も,「ピアノを習いたいですか」と言われると,多分駄目なんだけれども,「習いたい」とか言ってしまいそうな気もするわけで,つまり,「習いたい」というのをどう位置付けるかはかなり慎重にしないと,これが潜在的なものであって掘り起こそうとか言っても,なかなかそう簡単な数ではないだろうという気持ちである。

水谷委員

 今日お見せした項目自体,非常に限られたものであるから,もう少し全体としては項目数が多く用意してある。実際から言うと,もうちょっと欲張りたかったのであるけれども,時間や経費の関係で制限した結果,関連項目との関係の中で分析を進めるだけの十分な材料はないだろうと少し心配になっている。それでも今日挙がっているものだけではなくて,この周辺にあるものとの関連の中で,幾らか客観化を目指すことができるのではないかと期待している。少なくとも努力しようと思っている。

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