国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 意見交換2

井出委員

 大変面白い比較のデータを拝見して,これを私どもがこれからの審議会にどう生かしていくかということを考えていたのであるが,今,分析の途中段階であるということなので,これからの更なる分析の時に是非御期待申し上げたい観点を挙げておきたいと思う。
 それは15歳から69歳までの方たちが被験者でいらしたということだが,世代差というのはどうなっているのか,各国の比較の中で見てみたい。なぜかと言うと,私どもが考えなければならないのは,21世紀の世界の中にあって日本語をどうするのかということを考えていく上で,若い人たちがどう思っているのか,人生の半ばを過ぎた人たちはどう思っているのか,それによってこの表の読み方も変わってくると思うので,男女差も知りたい気がするが,それより何より世代差を細かく見ることができたら,より参考になるのではないかと思われる。よろしくお願いする。

水谷委員

 了解した。

片倉委員

 水谷委員や150名の方がこれにかかわって,大変な調査をなさったその労力に敬意を表したいと思う。しかも,面接調査をなさったということで,一人一人の人間にお会いになってお聞きになったということで大変な調査だったと思う。150人の方が面接なさったかどうか,そこら辺はよく分からないが,私,申し上げたいのは,そうやって出てきた大変貴重な数字統計であるけれども,この数字だけを取り上げて分析をしていくと,数字が独り歩きして,とんでもない結果になることもままあるということである。
 今まで社会学ではアンケート調査というのはかなりやっていて,それはそれで意味もあったのだが,それではどうも落ちてしまうところがあるというので,調査票も作らないで,面接,しかも住み込んで,その人たちの総合的な様子,生活全体を見るというのが文化人類学なんかではなされている方法である。これはすっきりしなくて,数字でちゃんと言ってくれた方がさっぱりするのであるけれども,数字ではなかなか言えないという部分が出てきて,あいまいな――さっき徳川先生がおっしゃったように,聞かれ方によっても随分答えが違ってくる――部分が生じるわけである。面接をなさった方が,その場でお感じになったあいまいなところ,数字ではそれは表せないと思うが,それを拾っていただくようなというと,また更に大変で2年が3年になるかもしれないが,場合によってはまた現地に戻ってというか,インターネットでは駄目だろうし,ともかくそこら辺のあいまいなところを何とかすくい上げるというようなことをしていただければ,全体としてこれだけ立派な調査をなさった成果が更に生かされるのではないと思う。

水谷委員

 有り難い御助言を承った。最初の調査の具体的な方法に関しては,実践は,調査会社に委託して実行したわけである。ただし,それにかかる前に,予備調査段階で百数名の人間が地域を分担しながら予備調査を行い,それで当たりを付けるという手続を踏んでいる。それから実際に本調査をするときにも,担当者がそれに参加してやるという形で,ずれが起こらないように気を付けたということが一つ。
 もう一つ,これは全体のセンサスの調査として成り立たせたので,これとは別に事例調査をしている。これはケース別にやっているわけだが,それがドロドロしたところへ近づいていく道の一つだと考えていた。問題は,今おっしゃったような密着調査的なところまでどう広げていくか,あるいは伸ばしていくかということは計画が立てられていないことである。でも,恐らくこの中で問題が分かってきたときに,密着調査の必要性と可能性を吟味した上で,多分プロジェクトを用意することが可能ではないか。文化人類学の方などで具体的なケースから密着してなさるのとは方向は逆だけれども,ーつの方法論としてはあり得るのではないかなと思っているのであるが,何せお金が掛かるので,予算の問題と労力の問題を調整した上で,どう企画するかというのは大問題である。
 この調査自体は,人間性の抽象化されたところで調査をしているが,それでもそれなりに意味があると思うが,少なくとも継続性というのは大事ではないか。今回やった同じような行き方を10年ごとに繰り返してやっていくことが,日本の社会,あるいは学術研究にとっても大きな柱になっていく可能性があるだろうと思っている。

濱田委員

 理論としては,日本の円が世界のキーカレンシーになり得るかどうかという理論と非常に似ていると思うけれども,日本経済がバブルの真っ最中で,マンハッタンを買ったとか,中国・韓国にどんどん工場が行ったとか,そういう時の調査であれば,もっと違う日本語に対する関心,日本に対する関心というのが強かったのではないかなという予想がつくと思う。したがって,今御指摘のように,継続するということが非常に面白い結果につながるのではないかと思いながら,数字を見せていただいた。
 それと非常に理解しにくいのは,「子供に習わせたい言語」ということで,アメリカ,ブラジル,夕イ,ポルトガルが,自国語というか,母語というか,これが何ゆえ最初に出てくるのかなというのが,質問の仕方にもよるのだろうけれども,非常に分かりにくい。識字率が低いとか,いろいろあるのだろうけれども,その辺はどういうふうに考えたらよろしいのか。

水谷委員

 私自身,原因が知りたいと思っている。これからの宿題にさせていただく。こうかな,ああかなと思うことがないわけではないが,今うっかり言うと心配なので,控えることにしたい。とにかく,私も知りたいと思っている。

柏倉委員

 一つ伺いたいのは,「好き?,嫌い?」の数字であるけれども,これはなぜ好きか,なぜ嫌いかという理由はお尋ねになっているのか。

水谷委員

 尋ねていない。関連した質問もない。

柏倉委員

 感想だけれども,私は1968年に最初にフランスに駐在したのであるが,その時に私の周りにいたフランス人が唯一知っていた言葉は「カワサキ」だった。つまりオートバイである。9ぺージのどういう言葉を知っているかというのを見ていて,下の方ではあるが,「カワサキ」が出てまいって,なるほど,そういうことだと思ったが,恐らくどういう言葉を知っているかという高頻度語の調査も時代とともに変わってくるだろうと思って,そういう点でも継続をされるということは大変力になるのではないかという感想を持った。

水谷委員

 「カワサキ」が挙がっていて,「トヨ夕」と「ホンダ」がなぜ出てこないのかなとか。

柏倉委員

 これは私にとっては全く不思議ではない。戦後のヨーロッパでは圧倒的にオートバイの進出が多かったものだから,恐らくアフリカの一部でやっても,「カワサキ」という名前は出てきただろうと思う。

宇治委員

 今質問された方に関連するが,9ぺージのところの高頻度言語というのは,自由に答えてもらったものなのか。それとも何かサンプリング的なものをある程度用意されたものなのか。

水谷委員

 自由である。

宇治委員

 そうすると,今御質問があったように,例えば,トヨタとか,ホンダとか,松下とか,ソニーとか,そういう企業名というのは,ある意味では日本語と認識されていないということなのかどうかというのはどうだろうか。

水谷委員

 それは当然あると思う。下から3分の1ぐらいに「カンフー」というのがあるが,これは日本語ではないけれども,日本語を挙げろというところで入ってきている。そちらの方のずれもあるし,「パナソニック」は,我々でも日本語だと思わないかもしれないが,「ソニー」は英語という意識がごく一般的かもしれない。ここに出ているもの,ここに挙がっていないものを全部面倒見ながら,切り取りの方法を幾つか考えて,さらに,そのこと自体についての研究が次の段階で意味を持つだろうと思っている。

宇治委員

 地名,国名なんかで,「にっぽん(日本)」は多少出ているけれども,挙がっているのは「とうきょう(東京)」だけで,ほかの地名は出ていない。京都とか,奈良とか,今までの調査結果では多いように思うけれども,そういうのは挙がっていないということなのか。

水谷委員

 「京都」は確かあったと思う。下の方に,四つか五つぐらいの頻度数で出ていたのではないか。ただ,その辺の数字的な意味は,最初にも申したように,その段階に行くと,この表からは想像してはいけないものだと私は思っている。こういう類の言葉がここで切り取ると挙がっているよというのを御覧いただくために用意した資料であるから,新聞社の方がこれをお出しになるとすると,「ちょっと待って」とお願いしなければいけないものだと思う。

清水会長

 ほかにあるか。
 これから三つの委員会で,それぞれの問題を御検討いただくと思うが,ただ今の水谷委員からのお話にかかわる事柄はまたその都度御報告などもいただきながら,第3委員会で御審議をいただくことになるかと思う。
 ただ今のような日本語の国際化にかかわるお話があったけれども,そのほかの問題で,前回はこうだったけれども,こういうことを更に深めたらどうかとか,第1委員会,第2委員会の担当である言葉遣い,漢字の字体問題等々で何か御発言があれば,御自由に御発言いただきたいと思う。
 最初であるので,なかなか御発言もないかと思うが,委員会が何度か開かれて,それをまた総会にも御報告申し上げて,全体の御意見をいただきながら,また委員会を開くという繰り返しの手順で進めていくつもりであるので,その節はひとつよろしくお願いしたい。
 次回の総会であるけれども,5月11日,午後2時半,東條会館のこの部屋で開催するということで既にお知らせしてあったと思うが,ひとつよろしくお願い申し上げたい。このことについては改めて御通知をさせていただく。
 次に,先ほどお決めいただいた委員会の日程である。先生方の御都合なども伺いながら進めていくことになるかと思うけれども,そのことについて課長の方からひとつ。

鎌田国語課長

 それでは,委員会の開催日程について御説明する。
 お手元の配布資料の一番最後であるが,参考ということで「3月,4月の各委員会開催予定(案)」というものが入っている。先般,各委員に3月,4月の日程の御都合をお伺いした結果,このようにまとめたものである。日程については,すべての委員の方々の御都合を合わせるということは大変難しいので,一番多くの方々の御都合がよろしい日ということで,これらの日を選んでいるので,その点を御了承いただければと思う。開催通知については,後ほどこのような日程ということで改めてお送りしたいと思う。
 なお,前回の総会で了承されたとおり,これらの委員会の開催に当たっては,所属されている委員の方だけではなく,全委員の方に通知をお送りするので,所属されている委員会以外にも御希望の会議に御出席いただければと考えている。

清水会長

 そういうことで,第1委員会,第2委員会,第3委員会は,参考のところにあるように,3月,4月と2回開催させていただいて,5月の総会に御報告をいただくということになるかと思う。場合によっては,作業部会を作って云々(うんぬん)ということもあるかと思うが,この辺の運営については,各委員会にお任せすることとしたい。どうぞよろしくお願いを申し上げる。
 この件について何か御質問はあるか。よろしいか。
 それでは,今日の議題は以上であるので,これで終わらせていただく。

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