国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 その他2

井出委員

 たびたび発言して申し訳ない。国立国語研究所の責任者でいらっしゃる甲斐委員の「学校教育では「国語」が使われている」ということに関しての御発言は大変貴重な御意見だと思って伺った。それが前田委員が今おっしゃった,文化を背負っているのが「国語」ということの意味なんだということは,私も研究テーマとして深く考えなければいけないとかねがね思っているものである。
 言わずもがなのようにして,「国語」を通じて,「国語教育」を通じて,日本人の心を育てるということがあると思う。国語の教科書に多くの文学が載っている。詩歌も載っている。そこで日本人の心,人を思いやる心を育てるということは,全国の国語の先生が,小学校からずっと当たり前のようにしてやっていることだと思う。それをはぎ取ってしまって,世界の一つの言語だと言ってしまっていいのかという問題が,結局,「国語」か「日本語」かの問題だと思うのである。
 私が最初に発言したときに,どっちかに決めろということではなくて,この問題点をはっきり整理する,国際化をしなければならない時代になったので,今までやってきたいいものをどうやって守るかという問題も考えなければいけない。そういう課題を背負っているんだというふうに理解しなければいけないと思っているわけである。最初に私がこの会に出席させていただいた時にも申し上げたが,言語学者として自戒を込めて,どのように日本語の言葉が日本人を支えているのか,日本の文化を支えているのかということに対しての研究がなされてこなかったために,前田委員が文化だとおっしゃって,ここの4ぺージの「言語と文化について」というところにも3行ほど書かれていることが貧弱なのは,言語学者がちゃんとやってこなかった責任だと思っている。ここをどう考えるのか。
 例えば英語をイギリス人が母語として学ぶときに,イギリスの文化の糧として英語をやっているか,アメリカ人はどうか,オーストラリア人はどうか,フランスではどうか,ドイツではどうか,そういうところも伺いたいと思うが,多分,私の不勉強ながらの勘で申すと,日本ほど言葉に日本の文化を背負っているということがユニークに出ているところは世界の中でもないのではないか。こういう言い方は大変危険だけれども,そういう面で,目立っていると言ってもいいのではないかと思う。そういうことを落とすことなく,この審議会が運ばれる責任を感じているということを申し上げたいと思う。
 そういう点で,皆様にいろいろお教えいただければ有り難いと思っている。

中澤委員

 「国語」と「日本(にっぽん)語」,あるいは「日本(にほん)語」であろうか。大変な問題だと思うが,私は初等教育を担当している立場から,国語はやはり文化という面で,国民性あるいは心を育てるということで,非常に大事なものではないかと思う。学校には,サクラの花,ツバキの花,ボタンなど様々な花が意図的に植えられている。サクラの花は,御存じのように「散る」と言うが,「ツバキの花が散る」というようなことは子供も言わない。ではどう言うんだろうということから,ツバキの花はこういう言い方がある,またボタンの花はどういう言い方が一番ふさわしいか,様々な現象,事実を体験しながら,言葉を生み出してきた背景・文化というものを自然に身に付けていくのではないかというふうに思うわけである。
 私は横文字に弱いので,翻訳で読んだので定かではないのだが,ショーという哲学者に「祖国とは国語のことである」という言葉があったと思う。やはり国語ということが,人間性あるいはその人を育てていくという上で基本的には大事ではないか。そういうことから,こういう審議会等でも論議を尽くしていくのではないかなというふうに考えている。

徳川(第1委員会)主査

 ちょっとしゃべり過ぎて申し訳ないけれども,例えばドイツなんかの場合は,ドイツ語にゲルマン文化が反映しているという考え方が仮にあったとしても,さっき申したように,「国語」という言葉は使いにくいわけである。そういうことを考えて,文化を背負っていれば「国語」であり,そうでなければ「日本語」で行きましょうという逃げ道というか,それは必ずしも普遍性がないんじゃないかなというのが私の気持ちである。
 それから,ここで「外国語」という言葉がよく使われている。国語でない,あるいは日本語でないものは何だということであるけれども,オーストラリアなどでは,このごろはだんだん「外国語」という言葉は使わなくなっているそうである。「ランゲージ・アザー・ザン・イングリッシュ」とか何とか言って,LOTEという言葉を使うようである。その辺との関係で,周辺というか,あるいは対比する概念とどういう関係にそれぞれがあるかということを考えていただきたいと思う。

清水会長

 まだ御発言なさりたい方がいらっしゃると思うけれども,今日はお手元に「国語に関する世論調査」の結果が配布されている。そのことについて事務局から若干説明してもらい,また御質疑もちょっといただきたいと思うので,そちらの方に入らせていただく。御了承いただきたいと思う。
 それでは,お願いする。

野村国語調査官

 非常に時間が限られているようなので,ごくかいつまんで平成10年度の「国語に関する世論調査」の結果について御説明したいと思う。報告書の要約である資料4を御覧いただきたい。
 「調査の概要」として,まず調査目的が書いてある。三つの委員会の審議にかかわる事項について調査をした。調査対象は全国の16歳以上の男女3,000人,調査時期は本年1月8日から22日にかけてである。調査方法は個別面接調査,回収結果については有効回収数(率)2,000人(73.3%)ということである。
 次に,「調査結果の概要」である。初めの方は,第1委員会の方にかかわる問いについて紹介してある。
 「1 言葉遣いについての意見」ということで,「ここに挙げた(1)から(3)について,あなたはそう思いますか。それとも,そうは思いませんか。」という形で聞いている。敬語を使うべきときに使わないで話すこと,また必要以上に敬語を多く使って話すこと,共に8割前後の人が感じが良くないと思うと答えている。また,次の「日ごろ良い言葉遣いを心掛けて生活していると,その人の人柄が良くなる」は,全体では63.5%が「そう思う」と答えているが,年齢差が非常に大きく出ていて,人生経験が長くなるに従って,そのような言葉遣いと人格との結び付きについては強く感じている。つまり「そう思う」という人が増える傾向がある。後ほど報告書の分析をお読みいただければと思う。
 また,2番目にはマニュアル敬語についての設問が紹介してある。細かいことは省略するが,若い層の方が,マニュアルに従って型にはまった接遇について抵抗がないという結果が出ている。
 次に,3の「気になる言い方」である。時間の関係で一つ一つ紹介することは省略するが,意見,感じ方が分かれている言い方がいろいろあることが分かる。その項目の(8)に「誠に申し訳なく,深く反省させていただきます」というのが出ていて,これは「気になる」が41.4%であるが,過去の調査で「(店の張り紙で)明日は休業させていただきます」等について調査をしており,それらに比べて,今回の謝罪の場面で「させていただきます」を使う例は,「気になる」人の割合が高いという結果が出ている。
 次に,第2委員会にかかわる問いであるが,「異体字の併存についての考え」で,例えば「」「鴎」のように,異なった二つの字体が印刷文字として使われている場合があることについてどう思うかという問いに対して,「不統一は望ましくない」というのがほぼ半数で,「不統一でも構わない」を上回っているという結果である。
 次に,「異体字についての印象」である。12組の異体字(いずれも常用漢字表に入っていない漢字)を示して,どちらの字体を見掛けることが多いと思うかを尋ねた。(a)の方はいわゆる康熙字典体,(b)は略字体であるが,結果としては,(a)と(b)のどちらを多く見掛けるかについては字種によって大きく異なっていることが分かった。
 次に,第3委員会にかかわる問いである。「外来語の認識」ということで,そこに出ている(1)から(4)の「ストレス」から「カジュアル」までについては「聞いたこと・見たことがある」という人が9割を超えているが,一番下の「リテラシー」に至るまで非常に差が出ていて,「カジュアル」より上に挙がっている外来語については「聞いたこと・見たことがある」という人の8割から9割は「意味が分かる」と答えているけれども,下の方では意味が分かる人は,「聞いたこと・見たことがある」人の半数前後になっているということが分かった。
 次に,「外来語の認識」で,外来語と訳語(漢語・和語)とどちらが分かりやすいか,また親しみやすいかを聞いている。このように,表の上の方の欄に出ているものは,漢語・和語の方が分かりやすい,親しみやすいというのが多くなっている。下の方の二つの言葉,「イベント」と「メリット」については,外来語の方が分かりやすく,親しみやすいという答えが多くなっているという結果が出た。
 最後であるが,「英文における日本人の姓名」ということで,英文の中で日本人の姓名の順をどう表記すべきかを尋ねたところ,このグラフのように,「日本人の名前は「姓−名」の順なのであり,英文の中でも「姓−名」の順で通すべきだと思う」という人が34.9%で,「「名−姓」の順に直すのがよい思う」という人をやや上回っているという結果である。
 以上,時間の関係で非常にかいつまんで説明したが,詳しくは報告書を御覧いただいて,また委員会等でも御活用いただければと思う。
 なお,この世論調査を報じた新聞記事がとじてあるので,後ほどお読みいただければと思う。
 以上で終わる。

清水会長

 余り時間がないけれども,何か御質問があれば……。

阿辻委員

 時間の関係で手短にお尋ねする。
 私,大学で講義をしていて,この間,この新聞記事が出た次の日だと思うが,授業が終わって学生が質問に来た。ちょうど今御説明いただいた2ぺージの「ファーストフード店へ一人で行って,食ベ物を10人前注文して」というのを新聞の記事で取り上げたようである。その質問をした女子学生はかつてファーストフード店でアルバイトしていたんだそうで,そのアルバイト先では,まず注文を聞く前に,その席で食べるのか持って帰るのかを聞くというふうに指導されていた。したがって,10人前注文を聞いてから,ここで食べるのかという質問はあり得ないということを指摘してきたわけである。
 これは重箱の隅をつつくような話であるが,この設問をお作りになる段階で,そういう現実との齟齬というか,ディテールを読んでまで細かく検討されたのか,こういう具体的な言語であれば,例えば今の事例,すべてのファーストフード店でそれが提供されるのかどうか存じないけれども,そういう事柄がどの程度検討されているのか,今日は時間もないので,またいつか追ってお教えいただければと思う。

鎌田国語課長

 実は,これについては,特定のファーストフード店のものを見て作っているものではない。こういうものだということで一応想定して,その想定に対してどういうふうに感じるかということで聞いているので,特定のものではないということを御理解いただければと思う。

牛島委員

 この会議の進行のことについてちょっと御質問かたがたお願いである。先はどから言われているように,敬語の問題は国際化の問題にもつながるし,敬語が日本において大変すばらしく機能しているが,これは国際化社会においても同じある。また,文化を背負っていくとか,関連事項がいろいろあるので,できたら第1委員会と第3委員会を合同でやっていただくとか,意思疎通を十分にやりながら進めていただくと大変有り難いという気持ちがある。このことについてお考えいただければという要望である。

清水会長

 これは委員会の方でも考えがあるようなので,また主査の先生方で御相談いただいて,合同でやるとか,問題点を絞ってやるとか,いろいろあると思うので,ひとつお任せいただきたいと思う。
 ほかに何かあるか。なければ,時間になったので,最後に課長の方からお願いする。

鎌田国語課長

 1点だけ御説明させていただきたいことがある。
 第1回の総会のときに,国語審議会が中央省庁等改革の中で今後どうなるかということについて御質問いただいた。それについてある程度の方向性が見えてまいったので,若干御説明申し上げたいと思う。
 現在,中央省庁等改革の中で審議会等の整理・合理化ということが進められているが,その中で,政策審議を行う審議会については,原則として廃止するということになっている。国語審議会についても,政策審議を行う審議会というふうに位置付けられているわけである。ただ,原則として廃止されるが,必要性を見直した上で,最小限の機能に限っては残す。また,残すことになった機能については,審議分野の共通性に着目して,できる限り統合するというふうになっている。
 国語審議会については,文化の基盤であるところの国語に関する諸問題を調査・審議する審議会として,これまで大変重要な役割を担ってきていただいたわけであるが,今般,ただ今申し上げたような審議会の全体的な整理・合理化に関する統一方針に基づいて,平成13年1月――省庁再編の時期であるが,それをもって文化庁に新たに設置される文化審議会の一部として改組されることが予定されている。
 この新たに設けられる文化審議会においては,文化の振興及び国際文化交流の振興に関する重要事項について調査・審議することになっているが,特に国語審議会の任務とされている国語の改善及びその普及に関する事項については,文化審議会の任務の中で,国語の改善及びその普及に関する事項を調査・審議するということが法律上明記されることになっている。したがって,国語審議会の機能を引き続き果たすことができるよう措置される予定である。以上のように,「国語審議会」という名称の審議会はなくなるが,その機能は新たに作られる文化審議会の中で,今後とも存続することになっている。
 この文化審議会の設置については,新しい省である文部科学省の設置法という法律で規定されることになっているが,各省庁設置法案は先月の27日に閣議決定され,翌28日に国会に提出されている。したがって,今申し上げたことは,現在のところ法案として国会に提出された段階であるので,国会として議決されたものではないが,一応そういう方向で進んでいるということで御紹介申し上げたいと思う。

清水会長

 そのようなことで国会に提出されたということである。
 それでは,これで終わりたいと思うが,次回の総会は……。

鎌田国語課長

 次回の総会については,9月17日(金曜日),午後2時半から東條会館のこの同じ部屋で開催する予定である。正式の開催通知は,追って事務局の方からお送り申し上げたいと思う。
 また,各委員会の開催予定は,お手元に参考として6月,7月の日程をお配りしてある。これについても追って開催通知をお送りしたいと思う。

清水会長

 各委員会に御出席の折には,また事務局の方に事前に御連絡いただければ有り難いということである。
 それでは,これで本日の総会を閉会する。

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