国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 第2委員会における審議状況について

清水会長

 引き続いて,第2委員会の御報告をお願いすることにする。

樺島(第2委員会)主査

 それでは,第2委員会から論議の概要について報告をする。資料2を御覧いただきたい。
 資料2の初めに書いてあるように,第2委員会は,第4回の総会以降,10月20日,11月12日の2回開催した。また,11月8日には,作業部会としての字体小委員会を開催した「論議の概要−3」は「概要−1」以来,基本的な構成は同じで,特にこの2回の委員会と字体小委員会で論議したことは点線で囲んであるので,そこを中心に説明申し上げる。
 まず,(4)の「検討対象漢字の範囲について」のところであるが,表外漢字すべてを問題にする,扱うということはできにくいので,常用漢字とともに使われる表外漢字の字体をどうするか,また簡単な形にした簡易慣用字体を認めるとすれば,どういうふうに,またどの範囲で認めるかということをこの委員会では考えている。試案において検討対象とした範囲(978字)というのは,簡単に言うと,今申したように,常用漢字とともに使われる漢字ということであるが,これをどのようにして21期に設定したかということは,少し複雑になるが,是非御理解いただきたいので,資料の4ぺージ以降に「参考」として「21期『表外漢字字体表試案』について」というものを用意した。それから,机の上に本が積み上げてあるけれども,これが第21期に使った資料である。今期は,これにまた厚いものを加えて使っている。これについての解説は後ほど小林副主査からしていただこうと思う。
 私は,2回の委員会でどういう論議をしてきたかということを簡単に報告する。「(4)検討対象漢字の範囲について」であるが,今申したように,21期では字体を検討するための検討対象として978字を選定した。今回,凸版印刷が新しく調査した資料を使って,21期に検討対象とした範囲が妥当であるかどうか,資料の偏りで使えるか,使えないかという問題が出てくるかと思って調べたところ,今回の凸版の新しい調査と比べると,86%ほどが同じ文字として得られたので,21期に設定した検討対象の範囲は確実なものであろうと言えると思う。両方に重なっていないものについては検討を加え,また,読売新聞の調査結果をいただいているので,それらを資料にして,新しく22期の検討対象範囲を決めよう。そして,より妥当性・客観性の高い検討対象の範囲を設定しよう。そういう作業をこれから始めようとしているところである。
 2ぺージに移って,「簡易慣用字体の位置付けについて」。印刷標準字体の簡易字体として十分に定着していて,印刷標準字体と入れ替えて使用しても何ら支障のないものを簡易慣用字体としようという方針である。
 それに基づいて選定作業をするのであるが,その中で問題になったのは,「懼」と「惧」,それから「臘」と「臈」などである。これらは,試案では,片方を簡易慣用字体にしてあったが,使い方を見ると,違う言葉の中で別々に使われているので,これは印刷標準字体と簡易慣用字体という関係とせず,別の字として扱うことを考えている。細かいことはその後に書いてある。この二つの文字以外にも同じようなものがありそうなので,それを検討して適用例を追加するということである。
 それから,「(エ)簡易慣用字体の選定基準」。簡易慣用字体をどういうふうにして選定するか。21期の「表外漢字字体表試案」では,出現頻度数に基づいて簡易慣用字体を選定した。つまり,割によく使われているものだけを簡易慣用字体として認めるというふうにしたが,今期は,出現頻度数に加えて,JIS規格の「6.6.4過去の規格との互換性を維持するための包摂規準」――これはちょっとややこしいが,後で小林副主査から説明があると思う――そこに掲げる29字,それから平成2年10月20日の法務省民事局長通達「氏又は名の記載に用いる文字の取扱いに関する通達等の整理について」の「別表2」に掲げる140字を再検討し,これらの中から簡易慣用字体を選定する。
 それから,出現頻度数に関しては,試案に用いた調査資料と今回新しく作成した資料(新凸版調査,読売調査)の両方を用いて検討するということである。
 2の「手書き字形にかかわること」。手書き字形がどうしてもいろいろと問題になってくるわけであるが,手書きの字形に標準を決めるなど,こうしろと規定するのは無理であるので,今期も「手書き字形は別とする」という試案の方針を踏襲する。ただし,印刷文字字形と手書き字形との関係・関連については,いろいろと考え方があろうから,それを整理して,解説として取り上げようということになっているが,具体的に内容がどうなるか,これは今後の課題である。
 特に,学校教育とのかかわりであるが,学校教育で指導するのは常用漢字の範囲になっているので,表外漢字の手書きの仕方はどうするということは考えない。答案はどうするかということは,指導上の問題であるので,我々の方では扱わないということである。
 それから,3の「字体差・デザイン差の示し方」。印刷標準字体は康熙(き)字典体とするということになっているけれども,具体的に,印刷標準字体とする康熙字典体とはどのような字体なのか,また同じ字体でもデザイン的にはどのような違いを許すのかということが問題になってくる。
 そこで,同じ字体だけれども,デザインの差であるというのはどこまで認めるかということであるが,デザイン差については21期の試案で述べてある。今回『明朝体活字字形一覧』という資料を作ったので,それを参考にして,もし付け加える必要があるものがあれば付け加える。それから,今までデザイン差としなかったために,例えば下から2行目に「煎」と「」があって,前の方は簡易慣用字体と位置付けているのであるが,これらも新たにデザイン差であると認定すれば,簡易慣用字体と印刷標準字体との関係ではなくなるので,その辺りも考えようという方向で論議が進んでいる。具体的に,目標,やらなければならないことと資料があるので,これからも委員会の方で調査しながら方向を定めていこうということになる。
 そこで,「参考」の「21期『表外漢字字体表試案』について」を小林副主査から説明していただいてよろしいか。

小林(第2委員会)副主査

 残り時間を考えると,7〜8分で「参考」のところを御説明申し上げるというのは至難の技であり,どこまで説明できるか分からないが,なるべく御理解いただけるように努力する。
 目の前に積み上げているものの中で,「国語審議会会議用」と書かれたファイルの一番おしまいの方にある薄緑色の表紙「第21期国語審議会 新しい時代に応じた国語施策について(審議経過報告)」をお開きいただきたい。これは,「第1 現代における敬意表現の在り方」,「第2 表外漢字字体表試案」という構成になっている。私どもは,第2の「表外漢字字体表試案」を再検討しながら,22期現在,議論を重ねつつあるということになるわけである。
 「参考」のところに書いてある枠で囲んだ部分について御理解いただくために,「表外漢字字体表試案」を御覧いただきたい。17ぺージから説明が載っていて,その説明に引き続いて,22ぺージの次の中扉に「U 本表」とある。それをめくっていただくと,そこから「表の見方」として説明があるが,これは飛ばす。27ぺージから表が載っていて,ここに印刷標準字体として選んだものが215字,簡易慣用字体として選んだものが39字載っているわけである。表外漢字で字体の問題を検討していくときに,27ぺージからの215字種がどういうふうに選ばれたかというと,常用漢字とともに割合に頻度高く使われる漢字の字種をたくさん見ていって,その中で,どれが字体の問題にかかわる表外漢字として絞り込まれるかというふうな手続きになって,27ぺージからの215字種が選定されたわけである。
 その215字が選ばれてきた土俵になったのは,37ぺージからの表になるわけである。37ぺージからの表を見ていただくと,一番最初の字が「唖」である。プリントの「参考」を御覧いただくと,「(1)検討対象漢字の選定方法(試案20ぺージ)」と載っていて,枠組みの中にNo.1,No.2というふうに「」から始まっている最初のものが掲げてある。「参考」のところの一番最初の枠組みの中のものが,今見ていただいている37ぺージからの漢字である。それをずっと見ていただくと,先の方へ行って,52ぺージの枠組みの表の最後が「碗」になっている。プリントと合わせて御覧いただきたい。私どもが,凸版印刷,大日本印刷,共同印刷3社の膨大な資料の中から,常用漢字とともに高頻度で使われる漢字というので選び出した941字がここまでである。
 印刷会社の資料を基に,表外漢字で常用漢字と併せて使われるものを選び出して,これと同時に検討対象にすべきものは何であるかというと,先ほど主査の方から説明があった「氏又は名の記載に用いる文字の取扱いに関する通達等の整理について」という法務省民事局長通達で出された,新戸籍を作るときに表外漢字の略字体として使ってもいいというふうにして出した「別表2」の140字,それも公的な大事な資料であるので検討対象とした。それにはいわゆる庸熙字典体と略字体とが併記されており,それは「参考」の1枚目をめくっていただくと,「付1」として字が並んでいるものである。「唖」から,もう1枚めくっていただくと,最後の「蝋」まで140字並んでいる。これが,いわゆる康熙字典体と簡易慣用字体を検討していく上における公的な大事な資料となるので,印刷会社の資料に加えて,これを見たわけである。
 御覧いただくとすぐ分かるように,一番最初の「唖」は,先ほどの凸版資料でも出てきた字であるから,このように重なりがあるので,重なるものを外すと,残りが34字ということになる。それが,前期の審議経過報告の52ぺージの先ほどの続き,1行空きで並んでいる942番から975番(榔)までである。140字中,前の表に載っているので,重なり合いのあるものを外して,残った34字ということになる。
 そう見ていくと,もう一つ,そこに976,977,978の3字残っているが,これが前々から問題になっているJIS規格の方で略字体だけを採用していて,いわゆる康熙字典体が出てこない29字の中のものである。JISの「6.6.4」というものの29字は,実は前の表の方にすくい上げられて出てきていて,残ったのがそこに挙げてある「」「」「」の3字ということになる。これも検討対象の範囲に入れなければならないものということになるわけである。というわけで,全部で978字,「土俵」というふうに申しているが,表外漢字で私どもが簡易慣用字体をすくい上げていくときに,いろいろ検討しなければならない土俵として取り出した表ということになる。
 プリントの方の三つの枠組みになっているものは何であるかということを前期の報告を御覧いただきながら,御説明した。
 「参考」のプリントにまた戻るが,「参考」の枠組みの下のところに「上記の「集合1」「集合2」「集合3」を対象範囲とし,その中から,中国の地名・人名だけに使われるような特殊な漢字を外す云々」とある。現代の国語の生活の中で,常用漢字とともに使われるような表外漢字における字体を問題にしているので,中国の地名・人名だけに使われるそうような特殊な漢字は必要ないと私どもは判断し,それらを外してまいった。例えば,「滄(そう)浪の水」とか「滄海」というふうに使うときの「滄」,それから,蘇(そ)東坡(ば)の「坡」などは外して,国語の生活で比較的よく見掛けるような表外漢字の字体を検討することを主眼とした。そんなふうにして土俵を決めたということでる。
 なお,Aの「簡易慣用字体の選定方法」というところに書かれているように,更にまた細かい検討をしていったわけであるが,ちょっと読ませていただく。「具体的な手順」のところで,「漢字出現頻度数調査(凸版調査)において,頻度頗位4500位以内で,かつ検討対象漢字に対応する略字体をすべて抜き出し,その1字1字について検討を加えて,簡易慣用字体とするものを選定した。」という手頗を踏んだ。「ただし,当該の略字体のすべてを簡易慣用字体としたわけではなく,検討の結果落としたものもある」。例えばどういうものを落としたかというと,日本の地名で一般には余り出てこないが,凸版調査の中で県別百科を使っている関係から,頻度高く出てまいった「飫」という字の略字体()がある。宮崎県日南市の肥(おび)というのところの「」の字は,「しょくへん」の中に簡易慣用字体として入れることも検討したが,地名で特殊なものだということで外した。そのほかにも外したものがある。
 以上,私どもが前期において表外漢字の字体を検討するときの土俵として,978字をどういうふうに選定したか。その上で,簡易慣用字体を考えるときに,日常生活で使われているものということを判断基準にしながら,選定しているというところを御紹介したということになる。 
 短時間で御理解いただくことは難しいけれども,ざっとしたところをお話し申し上げた。

清水会長

 大変膨大な資料,また調査,いろいろなデータを基に,これらの文字を1字1字チェックしていただいているということで,結果が出るのが楽しみである。また,これがJIS規格の新しいものに対してある程度の影響を及ぼすと考えられるので,そういった意味では慎重に取り扱っていきたい。何か御質問などはあるか。

阪田委員

 資料の3ぺージであるが,先ほどの御説明の中でも触れられたように,上の枠の中に「手書きの仕方について,学校教育を対象に書き込むという考え方は採らない」「飽くまで指導上の問題」というふうに書いてある。私ども実際に教壇で子供たちに説明するときに,指導上ということではなく,一般的にどう教えるべきかという基本を全国的に示されるわけではないので,各人,教員の考え方にのっとって教えていると,一人一人ばらばらになるということがある。
 例えば,新聞などで一度発表されたことがあるが,「女」という字の2画目は「ー」を書いた上に出るか出ないか。その辺で,小学校の先生方の解釈で,A先生は○にし,B先生は×にする。「比」は,活字体にした場合には左側の「ヒ」が3画で書いたような形なるわけである。私が教える場合は,書き順というよりも,画数で考えて, これをつなげて教えてまいった。その辺は私の考え方であって, ほかの先生方がどういうふうに指導しているかというところが問題なので,やっぱり一般的な,基本的な考え方を知らしめていただいた方が,先生方が迷わずにきちんと統一して教えることができるのではないかと思う。

小林(第2委員会)副主査

 今,私どもが第2委員会で進めているのは,表外漢字における印刷標準字体を決めることと,それに即して流通している簡易慣用字体を若干選び出すという作業である。今先生がお話しくださったのは,常用漢字表の表内漢字の指導上の問題における筆順とか字の形とかいうような問題にかかわったところというふうに理解した上でということで, よろしいか。

阪田委員

 学校教育で表外漢字を指導するということは一般的ではない。しかし,ここで「学校教育を対象に書き込むという考え方は採らない」というのは,学校教育では取り上げないからという意味なのであろうか。この文言を読むと「指導上の問題云々」という書き方になっているが,結局,難しい漢字も教育漢字の細々したものが寄り集まって出来上がっていくものである。手書きを明らかにしないという意味合いが,要するに,学校教育では取り上げないものであるからということなのかどうかを伺いたい。

樺島(第2委員会)主査

 主査 私の方の委員会の任務は,今,小林副主査が言われたとおり,印刷標準字体と簡易慣用字体を決めることである。ここに「飽くまで指導上の問題であるので」というのは,個々の先生がばらばらに考えたらいいということではなくて,別に初等中等教育の担当部署などがそれを考えるべきで,我々の方ではなかろうということである。よろしいか。

鎌田国語課長

 それでは,私の方から申し上げる。今第2委員会で検討しているそもそもの話として,表外漢字を対象としているが,学校教育における漢字の指導は常用漢字表の範囲内で行われている。 したがって,筆写についても常用漢字について行われるものとなっているので,そもそも表外漢字について学校教育でどうやって筆写の指導をするかというのは,関係がない話になっていると思う。
 それから,学校教育における筆順等については,別途,『筆順指導の手引き』というものが文部省の初等中等教育局の方で出されたことがある。

清水会長

 よろしいか。
 大変技術的に難しい問題も含みながら今の選択をしていただいているわけであるが, これは何とかちゃんとまとめたいと思う。よろしくお願い申し上げる。
 それでは, これで終わりたいと思うが,課長の方から今後の予定について説明をお願いする。

鎌田国語課長

 それでは,来年の総会の予定について申し上げる。
 お手元の配布資料に,「参考」として「平成12年度総会及び平成12年1・2月の各委員会開催予定(案)」というものがある。こちらを御覧いただければと思う。
 そこに書いてあるように,総会として4回予定している。これは本年と同様に4回の総会を開催したいというものである。この中に日程として書いてあるが,この日程で開催することにいろいろお差し支えのある委員の皆様方もいらっしゃるかと思うが,44人という大勢の委員の方がいらっしゃるので,全員の日程を調整することも難しいかと考える。大変恐縮であるが,この日程であらかじめ来年の御予定をお考えいただけるよう,よろしくお願い申し上げる。
 なお,次回については,ここにあるように,第6回総会を3月9日,2時半から4時半ということで,この同じ部屋で開催することにしている。正式の開催通知は,追ってお送りしたいと思う。
 また,各委員会についても,そこにあるように,来年1月,2月に開催される予定になっている。これについても,開催通知をお送りしたい。

清水会長

 そういうことで,6回,7回,8回,9回の総会,12月8日でまとめというも
のにさせていただく予定で進めている。あと4回の総会について,あらかじめひとつ御予定いただければ有り難い。また,それまでの間に各委員会が予定されているので,大変御苦労をちょうだいするわけであるが,どうぞよろしくお願い申し上げたいと思う。
 以上で本日の総会は終わりたいと思うが,特別に何か御発言はあるか。
 ないようなので, これで終わらせていただく。

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