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U 現代社会の言葉遣いをめぐる課題
1 都市化の進展と言葉遣い
産業構造が変化し,都市化が進展したことによって,地域社会が従来持っていた共同体的性格は大きく変容した。地域社会を超えた未知の人と接触する機会が増加するとともに,地域社会内部の人間関係は希薄になった。一方,高等教育の拡大,交通機関や新しい情報通信手段の発達等により人々の行動範囲が広がった結果,日常生活は従来より広範で多様な人間関係の中で営まれるようになっている。
我々を取り巻く人間関係は,このように,従来の狭く深く長い関係から,相対的に広く浅く短い関係に変わりつつある。言い換えれば,固定的な人間関係からその場その場で変わる多様な人間関係への変化である。こうした多様な人間関係の間で意思疎通を円滑に図るためには,その都度の相手,場面,目的などに応じた多様な言葉遣いが従来に増して必要となる。相手や場面に応じた配慮に基づく敬意表現が重要な働きをするのである。
なお,異なる地域社会に属する人や未知の人などとの意思疎通には全国的に通用する共通語が必要である一方で,地方の伝統文化や地域社会の豊かな人間関係を担う言葉として方言もまた不可欠である。共通語と方言という言葉の多様性を認め,相手や場面に応じて両者を使い分けることも敬意表現の一側面であり,現代社会における言葉遣いの課題の一つである。