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U 現代社会の言葉遣いをめぐる課題
7 外国人との意思疎通における言葉遣い
近年,日本に在住するために日本語の習得を必要とする外国人や,海外における日本語学習者が増加するなど,日本語が国際的な広がりを見せており,日本語は日本人だけのものとは言えなくなっている。一般の人々が外国人と日本語で意思を疎通させる機会も日常的なものとなっている。
日本人の言語運用は,例えば婉(えん)曲な言い回しをしたり,文末の判断部分を相手にゆだねたりするなど,同じ文化に根ざした言語習慣を前提として行われることがこれまで一般的であった。こうした言語運用は,言語習慣を共有する日本人の間では評価されることもある。他方で,異なる言語習慣を背景とする相手にはあいまいで理解しにくい言葉遣いであって意思疎通を妨げる場合もある。
お互いの言語習慣や文化の違いを客観的に認識し,日本語の言語習慣に慣れない外国人との意思疎通においては,分かりやすく誤解を与えない言葉遣いを選択することが,今後の国際化の進展の中での敬意表現の一つの課題である。
現代社会における言葉遣いの課題は以上のようにとらえられる。これらに共通しているのは,コミュニケーションを取り巻く社会や人間関係の在り方が多様なものであって,それぞれにまつわる言葉遣いにも多様性が存在するということである。そうした中で意思疎通を円滑に行うためには,話し手が相手の人格や立場を尊重し,その都度の相手や場面への配慮に基づいて多様な言葉遣いから適切なものを選択することが必要である。
相手や場面への配慮を基盤とする言葉遣いとしての敬意表現は,このような意味において,現代社会の言葉遣いの課題に深く関連している。