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V 言葉遣いの中の敬意表現

2 敬意表現の概念

(1)敬意表現とは

 敬意表現とは,コミュニケーションにおいて,相互尊重の精神に基づき,相手や場面に配慮して使い分けている言葉遣いを意味する。それらは話し手が相手の人格や立場を尊重し,敬語や敬語以外の様々な表現からその時々にふさわしいものを自己表現として選択するものである。
 「相互尊重の精神」とは,一人一人の人間を大切にするという基盤に立って,相手の人格を互いに尊重する精神のことを言う。
 「相手に配慮する」とは,相手の状況や相手との人間関係に配慮することである。話の内容によっては,話題に上る人に対しても配慮を及ぼすことになる。
 「場面に配慮する」とは,会話が行われている場面や状況に配慮することを言う。「場面」には例えば,会議や式典といった改まった場面,職場や買い物などの日常生活の場面,親しい友人や家族とのくだけた場面などがある。そのほかに商談の場面,教育の場面,懇親の場面など様々な目的に応じて異なる場面がある。
 「使い分けている」とは,内容のほぼ同じ複数の表現の中から,その時々の人間関係や場面にふさわしいものを選択して使うということである。我々は,それぞれの社会ごとに期待されている言葉遣いの慣習を目安にしてふさわしい表現を選択している。
 「自己表現」とは,自己の人格,立場,態度を言葉遣いで表すことを言う。様々な表現の選択肢の中からどれを選ぶかによって,話し手がどのような人間であるかということが,その人らしさとして表れるということである。
 なお,上述の敬意表現は,話し手の側から述べたものであるが,聞く側においても同様のことが言える。聞き手は,相手の言うこと,言わないことを,立場や場面に配慮しながら理解することが必要であるが,それが敬意表現を支えるものとなる。このように,双方向で相手や場面に配慮した言葉遣いをしたり,理解したりすることによって円滑なコミュニケーションが成り立つことになる。
 また,敬意表現は,話し言葉ばかりでなく書き言葉においても見られるものである。さらに,言葉以外の種々の側面,すなわち,表情,身振り,行動,服装などにまで広げて考えることもできるが,ここでは言葉,主に話す側から見た話し言葉に関係するものを扱うこととする。
 敬意表現のような言葉遣いは,他の言語においてもそれぞれの社会の在り方に応じて存在する。

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