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W 敬意表現についての留意点

[具体的な留意点]

2 人格や人間関係を表す言葉遣い

 敬意表現は,相手や場面に対する配慮を表現するものであり,話し手と相手などの社会的関係によって使い分けられるものである。この結果として,その場その場で選ばれる具体的な言葉遣いや敬意表現によって,言わば逆に,その場の人間関係を話し手や書き手がどのようにとらえているかがおのずから表れることがある。
 例えば,自らのことを「おれ」「あたし」などのように表現すれば,話し手が相手を親しい間柄ととらえていることや,話し手自身をざっくばらんな(場合によっては尊大な)人柄として表現していることが相手に伝わる可能性がある。このことは「わたくし」「手前ども」などの表現が,自らも改まった気持ちで,相手や場面に対しても改まって向き合っていることを表現するのと対照的である。あるいは文末の表現を「…でございます」と言うか「…だわ」「…だぜ」と言うか,前置き表現で「恐れ入りますが」と言うか「悪いけど」と言うかなどの言葉遣いによっても,話し手が自分自身や相手との関係をどのようにとらえて表現しようとしたのかが聞く人に伝わっていく。慎みのある態度や人柄,親しみのある気楽な気持ちなどがそれぞれに表現されるのである。
 より一般的に言い換えれば,言葉遣いによって,話し手が話し相手や周囲の人との人間関係をどのようにとらえているか,話し手が自分自身をどのような立場や役割の者としてとらえているかなどが表れてしまう。例えば,性や年齢によって異なる言葉遣いの選択,頼む側と頼まれる側,忠告する側と忠告を受ける側などの立場や役割に応じた言葉遣いの選択などは,敬意表現の一側面として留意が必要である。

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