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W 敬意表現についての留意点

[具体的な留意点]

4 地域の言葉に根ざした敬意表現

 敬意表現は,全国の共通語だけにあるものではなく,全国各地の方言(地域言語)にもそれぞれに特色のある敬語や敬意表現が豊富に備わっている。
 地域社会では,共通語と方言を使い分けることを含めて,対人的な配慮の表現が多様な姿で行われている。一般に,同じ地域社会に属さない相手や不特定多数を相手にする業務など公的な場面では共通語を核としつつ,他方,近隣の親しい間柄や地域社会の暮らしの場面では地域の方言を適切に使うという使い分けが,敬意表現の一つとして行われる。
 方言の備える様々な敬意表現は,共通語が求められるのとは別の相手や場面の場合に,その言葉遣いでしか表しにくい細やかな気配りを生き生きと表現する言葉遣いとして,それぞれの地域社会で用いられている。例えば,お礼の言葉である「おおきに」(関西地方)や「だんだん」(西日本地域)などは,共通語の「ありがとう」とは意味や使い方で微妙な違いを持ってそれぞれの地域で日常的に用いられる。
 また,地域によっては敬語の希薄な所があるが,その地域においても,例えば「〜なし」「〜ない」「〜のう」(東北地方)などの短い文末詞によって,話し相手への親しみや改まりの気持ちが微妙に言い分けられる。敬語の豊富な地域でも,「〜なも」「〜なん」(中部地方),「〜な」「〜や」「〜と」(九州地方)などの文末詞や言葉遣い全体の音調(イントネーション。声の上がり下がりの調子)を選ぶことによっても,話し手の気持ちが生き生きと表現し分けられる。これらも敬意表現の働きを持つ言葉遣いの要素として留意すべきである。

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