HOME > 国語施策・日本語教育 > 国語施策情報 > 第22期国語審議会 > 現代社会における敬意表現 > W 敬意表現についての留意点
W 敬意表現についての留意点
[具体的な留意点]
7 外国人との意思疎通と敬意表現
外国人との意思疎通における言葉遣いは,異なる言語習慣や文化を持つ相手とのやりとりであることが前提であり,相手への十分な配慮に基づく言葉遣いが敬意表現となる。これには幾つかの点に留意する必要がある。
まず,外国人に日本語で話し掛ける場合には,相手の日本語の習熟度や日本の言語習慣並びに文化の理解度に合わせた言葉遣いを選んで表現し,相手との意思疎通が十分にできない場合には,分かりやすい表現で言い換えたり,説明を加えたりして,相手の理解を確認することが必要である。日本人の言葉遣いには婉曲な言い回しや,文末の判断部分を相手の判断にゆだねたりすることが多いが,こういった,ごく当たり前の言葉遣いが聞き手である外国人を戸惑わせることがある。相手に誤解を与えないようにするには,伝えたい内容を言葉で明示的に十分に表現する努力が必要であろう。
また,外国人の用いる日本語を理解しようとする場合には,相手の日本語の習熟度により,相手の意図する内容が十分に理解できなかったり,戸惑いを覚えたりすることもあるだろう。こういった場合には,まず相手が敬意表現に習熟していないことを寛容な態度で受け止め,相手に分かる日本語で聞き返したりして,相手の意図を確認し,意思の疎通を図る姿勢が必要であろう。
外国人と日本語で意思疎通を十分に図るためには,日本人が常日ごろ用いている日本語について意識的に把握し,その言語習慣を異文化における言語習慣と比較できる能力を身に付けていることが望ましい。異文化を背景とする外国人に理解できる日本語の表現を,相手の日本語の程度に応じて使い分ける能力を培うことは,地球規模で日本語学習者の広がっている現在において必要であろう。