国語施策・日本語教育

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議事 標準漢字表再検討

〔議 事〕

南会長

 標準漢字表は昭和17年6月決定したもので,当時の理想からいえば,不必要と思われるものも時局上採用存置した。しかるに,さらに文部省で再検討の上相当増加した。われわれの答申に対して不満な点があれば,なぜ本会に対して再審議の手続きをとらなかったかとすこぶる遺憾に思った。今日終戦にともなって時局は一変した。よろしく再審議の上,案の実行をなすべく,文部大臣にも頼んだ。その結果本総会を開いて各委員の御参集を願ったのであるが,今次官からわれわれと同じ意見を伺って一同欣快にたえない。かかる御意見を聞くことは従来にはないことである。じゅうぶんわれわれとしても努力したいから,大臣にも御努力を希望する。

保科幹事長

今この時局からみて

第1 兵器用語や軍事用語の難解なものは自然姿を消すことと思う。
第2 国定教科書にも民主的な一大改正が行われ,生硬な漢字は自然減少することと思う。
第3 官庁の用語用文における封建的伝統や軍国主義に引きずられた形式はくつがえされるであろう。
第4 新聞の用字用語は一時1960漢字案の実行によって文体の簡素化の実現をみたが,満州事変以来再びもとにもどった。これらのものも簡略化されるであろう。
第5 選挙法の改正によって,女中にいたるまで候補者の政見をわからせるため,漢字の制限が行われるであろう。


 社会上教育上の立場から漢字は自然に減少し,文体の平易化は自然に行われることと思うが,本問題はさらに新日本再建上断行の時は今であり,日本の民主化にとり欠くべからざる重要事業である。
 ことに連合司令部から文部当局に対し教科書の漢字表を1500字ぐらいにせよとの申入れがあった由であるが,その申入れにしぶしぶ応ずるのは当方としては不見識であると思う。よろしく独自の立場から1200字ぐらいにしたいと考える。この外,かなづかいの改定,法令文の口語化,国語の浄化,同音異義語の整理等についてもなすべきことは多く,徹底的な調査を必要とするが,現在の審議会の機構予算ではじゅうぶんな仕事はできない。この点文部当局の御考慮を望む。

南会長

 ついては,まず標準漢字表の再検討につき,主査委員会を設けて実行に進みたい。

下村委員

 幹事長の御意見につけ加えて,字数のみならず漢字の訓読・音読の整理についてもあわせて御考慮を願いたい。

南会長

 それでは漢字主査委員として、つぎの方々にお願いしたい。

保科幹事長

(つぎの名前を読みあげる。)
 宇野,鶴見,諸橋,竹村,牧野,赤坂,清水,河合,有光,簗田,安藤(正次)以上11名

南会長

 もし主査委員に追加の必要ある時は,会長に一任をお願いしたい。

大村次官

 わが国は,連合軍の進駐下にあらゆる行政が行われているが,内政上の点について,文部省としては極力自主性を保って行きたい。この点占領軍当局も同意を表して干渉をさけ不必要な指令は発しないと言明したゆえに,わが国は自主的に改むべきことは改めてゆきたい。審議会としてもこの点をじゅうぶんに考えてやってもらいたい。

南会長

 字音かなづかいの整理再検討について大臣に申し入れてあるが,これに着手する際さらに総会を開く煩を避けるため,主査委員11名の指名権を会長におまかせ願いたい。それではこれで閉会いたします。

午後4時閉会

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