国語施策・日本語教育

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議事要録 審議(常用漢字表について)

副会長

 開会宣言

保科幹事長

 常用漢字表の実行に付帯して作成あるいは作成中のもの10案について説明。

  1.  字音かなづかい改定案
  2.  国語かなづかい改定案
  3.  漢字字体整理案
  4.  漢語整理案
  5.  漢字の用法整理案
  6.  字音整理案
  7.  句とう法案
  8.  おくりがな法案
  9.  漢字のよみ方整理案
  10.  官庁用語および文体整理案

河 合

 朝日新聞社では,今回の1300字案をそのまま実行することは困難でも,漢字制限を必要と思い,これに準拠して制限を実行することになった。一応の目やすとしてこの案を採決すべきである。

山 本

 かなづかいの決定も同時にやらねば,漢字制限は困難を招く。朝日新聞ではかなづかいはどうするのか。

河 合

 用語例によってやるはずである。

田 中

 漢字表の強制は,法令ではできない。実施項目案をつくることが望ましい。

有 光

 初等教科書では本案以内に限定し,中等教科書の普通教科は本案に準拠し,法令用語などは各方面の意見をうけてただちに実行しうると思う。新聞その他については基準をこれにおくこととし,専門用語は学術団体と連絡して調整できると思う。

保科幹事長

 大正12年の常用漢字表は,結局拘束力をもたなかった。この案は漢字濫用の統制に目標を与えるものである。

木 下

 漢字制限は科学技術方面の協力を要する。われわれも科学関係の教科書用語については手をつけている。

小 幡

 これだけの文字では科学技術方面は困る。

保科幹事長

 それはかなで書くか,ふりがなをつける。耳できいてわかるようにする。

山 本

 各方面からぎりぎり必要な漢字の提出を求めるのでないと,かなづかいの問題で困難する。

小 汀

 わたくしの新聞では4200字をつかっている。むりな漢字制限は実行できない。

副会長

 座談的に自由に御発言を。

大 島

 どういうふうに制限を実現するか。

副会長

 教科書による方法,法制局をとおす方法はただちに軌道にのせていける。それ以外はそれぞれ申し合わせてやるよりほかない。

清 水

 読売では最初6000の活字があったが,3,261を封印,今は2,889字以外は使わない。広告主にだいたいりょうかいを得た。

山 本

 皆の納得できるだけにするがよい。

副会長

 わたくしどもはこれでよいとしても,納得のいかぬ人があるならまた別である。

河 合

 新聞としてはただちにこの案の実行は不可能だが,漢字制限の標準として,審議会がこれを示すことを世間は待っている。

山 崎

 国民学校に本表を圧縮して与え,それ以上には必要なものを補って与えたらどうか。学術用語は聞いてわかるようにするようよびかけてはどうか。進んではローマナイズの方針か。

保科幹事長

 その点については各方面の協力を願いたい。ローマナイズして日本のことばの文化がくずれるようでは困る。

井 手

 法令の形式的の用字(又,但,面等)は,制限案にあてはめることができる。しかし,その実体については,技術的な内容にふれるから,どのていどまで実行できるかどうかわからない。この案を機械的にきめることはどうかと思う。

佐久間

 字典は文字のはきだめである。漢字は無限に新しいものが作られて行く。また世間にはむずかしいことばや漢字を喜ぶ者も少なくない。ゆえに漢字の制限は,ことばなおしと伴うべきものである。また機械的な制限でなく,固有名詞,語法的なものをかなで書くとか,音読にだけ漢字を使うとか,質的な工夫が便利と思われる。また,本表でいらぬと思われるものも少なくない。関聯(干連)候 掛 輯 など。また字体簡易化についてもお調べを願う。国語国字問題は山積しているゆえ,急務として,目やすを一応つけることは賛成である。

保科幹事長

 まえがきの一部にゆるみをつけたら,実行上便利と思う。改正案を読んでみます。
(まえがき第2の「ホ」の項を左の通り修正する。3 この表にない漢字は原則としてかな書きにするが,職域により,またはその他の関係により,万やむを得ないものに限りこの表以外の漢字を用いることを認める。ただし,それにより漢字制限の趣旨をくずすことは厳重にさけなければならぬ。)

副会長

 4時になったが,さらに審議を続行するか。それとも幹事長のまえがき修正案を入れて漢字表を決定するか。

小 汀

 続行するのがよい。

山 本

 小委員会を設けて審議するのがよい。

清 水

 政治的な問題に関連していないか。

有 光

 早く決定した方がよいが,決定がのびる理由は先方に話をする。

山 崎

 司令部としては無理をいってきてはいない。だから,必ずしも拙速主義をとる必要はない。

清 水

 先方からわたくしの社にきて,記事の2割はローマ字をつかえといってきたが。

山 崎

 ローマ字問題のアドバイスは教育使節団も司令部も強いが,国内問題ゆえ命令はしないといっている。

副会長

 では,新しい小委員会を作ることにしましょうか。



 漢字に関する新主査委員会をつくることとなって4時20分散会。

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