HOME > 国語施策・日本語教育 > 国語施策情報 > 国語審議会(終戦〜改組) > 第11回総会 > 会議次第
会議次第 議事
議事要録
山崎委員
この際外来語の書きあらわしかたも至急解決されたい。
安藤委員長
別途委員会を設けて解決したい。
姉崎委員
全体としては原案に賛成である。すみやかに採択されるよう議事を進められたい。
小宮委員
もっと案をねった方がよい。この案作成の基礎となった考えかたについて伺いたい。
安藤委員長
現代語というのは,だいたい現代人の現代生活にあらわれてくる現代東京を中心とする国語の標準語である。統一の法則は語を構成する音を端的に文字にあらわそうとする点にある。発音の正訛については,歴史的変遷の結果をみとめ,現在ひろく行われているものを本則とした。
佐久間委員
「言う」は「結う」と書きわけるのか。また,オ列長音は近い将来発音に忠実に書くように改訂をのぞむ。この際は原案採択を望む。
佐野委員
国家的にまた個人的に長年の圧迫から解放されたように感じたが,キウがキュウのようになっているのは,全体が簡易化に向っているのに逆行するものではないか。除外例として「にうがく」のような書きかたを認められたい。
安藤委員長
字数からいうと多くなるが原則からいえば簡易化している。よう音「きゅ」に長音「う」を加えるのである。簡易化の点からはケフがキョウになるような例もある。
関口委員
- ヰヱヲの地方的発音による書きわけはゆるさないのか。
- 助詞のハは本則とするといい,ヲは除くとした理由。
- 「赤う」はゴザイマスなどにつく時以外,アコーとならないのだから「いう」をゆるすならば,アカウと書いてよいのではないか。
- 例言3の「変更しがたいかなづかい」とは,なにか。その例をそこにあげたらどうか。
安藤委員長
- ヰヱヲ をはっきり発音する地方もあるようだが,ごく特殊な場合だけだから,例外規定を認めない。
- ハにはワという許容の書きかたを認めたが,ヲはヲだけだから本則といわなかった。
- ウ音便形はゴザイマスにつく時あらわれる外,地方的にもアコーの様な発音が多いから,外の準則に応じてアコウという書きかたを定めた。
- 全般にわたらない具体的なものを前文に入れることはまずい。変更しがたいものとは,原作のまま採用する必要ある場合や,ことばの例を旧によって引用する場合などである
関口委員
それらは「原文」として解釈すればよい。
吉田幹事
そのほかに,戸籍に記された人名・登録された商品・特許登録名なども変更しがたい例である。
菊地委員
オの長音はオオと書いてはいけないのか。
安藤委員長
オウと書く。オオと書いてはいけない。
村岡委員
助詞ハ,ヘ,ヲをもとのままとしたことは,個人的感情としてはうれしいが,発音通りワ,エ,オとするのが本当と思う。
安藤委員長
ごもっともであるが,この新かなづかいをひろめるためには現実の社会習慣の抵抗を考えなければならない。助詞がその最難関である。ハ,ヘ,ヲのうち,ヘは一番変えやすい。ヲは語の頭につくオと混同するのでもっとも困る。ハはその中間にある。ざん進的に行きたい考えである。
大島委員
わたくしの実験によると,全部表音式で文章を書いたらよみにくいとの投書がさかんにきた。テニヲハだけ昔のようにもどしたら投書がなくなった。
春日委員
ヂズと書く除外例のうち,イチヂルシイは同音の連呼の場合にはいるのか。
安藤委員長
それはイチジルシイとシに濁点をつけて書く。
藤村委員
このかなづかいは日本語の表記法として一般に行わせるのか。
安藤委員長
現代語をかなで書くあらゆる場合に適用される。
藤村委員
実行面については文部省できめるのか。特殊な学習用語など漢字をやめてかな書きにする場合などどうするのか。
田中文部大臣
この規則決定の問題と,その実行とは別問題である。
安倍会長
別問題でいいのか,実行を前提として今これを考えているのではないか。
保科幹事長
この案が,この総会を通れば会長から文部大臣に答申する。大臣は各官庁の意見を聞き,閣議にだし,異議なくきまれば閣議決定として発表されるのが,今までの習慣である。本会としては一般に使ってさしつかえないという見通しをつけて,この案をつくるのである。
藤村委員
この案は現代語をかなで書く場合の一つの準則として示すにとどめ,一般に適用するには特別な機関を設けて,さらに調査研究することを希望する。この2本建てのうち,暫定的なものとしてこの案に賛成する。
河合委員
今までの御意見はすべて主査委員会でも論議し尽くされたものばかりである。不備の点があっても,全体として合理化したこの案によって新聞社でもやろうとしているのである。
簗田委員
よくをいえばいろいろあるが,今日ではまずこのへんのところが結構と思う。今日の急務は実行である。このへんで御採決ねがいたい。
小宮委員
この案に不満足である。暫定案として示すだけならばとにかく,教科書に使うとすれば大問題だ。この案は一案として示すだけでよい。いろいろの案の中で,よいものが残るだろう
安倍会長
いろいろ個人的な意見はあると思うが,今日これくらいのところが教科書にもつかい,一般に行わせるのにもまず適当なものと認める。原案採決に賛成のかたは御起立をねがいたい。
(大部分起立)
不賛成のかたは御起立をねがいたい。
(数名起立)
賛成者大多数とみとめてこの案を国語審議会から文部大臣に答申する。
山本委員
国語研究の国家機関をつくることを文部省に建議したい。(賛成の声あり。)
姉崎委員
賛成。ただ単なる学究機関でなく,審議会と連絡をもって実際問題をとりあつかうものがほしい。
関口委員
採決のとき起立しなかったのは,この会議のきめかたが非民主的だと考えたからである。案そのものには賛成である。
安倍会長
少数意見もじゅうぶん尊重して行くよう今後気をつけたい。
(山本委員起立して,文部大臣に建議すべき決議案をよみあげる。賛成の声および拍手。)
松坂委員
山本委員の提案に賛成し,かつ希望をのべる。今までは正しいものが政治的な力のために葬られることが多かったが,権威ある学問的意見が,今後力強く実行にうつされるようになることを望む。
文部大臣への建議
国語審議会は,国語国字問題の重要性にかんがみ,大規模の基礎的調査機関を設けて,その根本的解決をはかられんことを望む。