国語施策・日本語教育

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次第 開会のあいさつ

開会のあいさつ(安倍会長)

 一言ごあいさついたします。本日は御多用のところ多数御出席をいただき,ありがたく御礼申し上げます。
 本会は昨年11月第12回総会において,「当用漢字表」を議決いたしましたが,その後,閣議の決定を経て内閣訓令同じく告示によって公布され,各官庁の公用文・国定教科書をはじめ,一般社会においては新聞・雑誌等に着々実行されておりますことは,たいへん喜ばしいことと思います。
 さて,この当用漢字の総会の際,漢字の数を限定するだけでなく,その音訓を整理し,ほとんど無秩序にひとしい漢字の使い方を合理化してほしいという強い要望がありました。よって本会では,当用漢字の選定の主査委員の方々に引きつづき御尽力を願い,以来39回主査委員会の審議研究の結果,ようやく別案のような成果,「当用漢字音訓表」を得たのであります。
 次に昨年4月の第10会総会の決議にもとづき,義務教育の期間に学習せしむべき漢字を選定することになりまして,新たに教育学・心理学・国語学・漢文学・児童文学の実際教育新聞関係の方々の御参加をいただいて委員会を組織し,これまた33回の主査委員会を経て,義務教育の期間に読むことも書くこともできるように指導する漢字を選定いたしました。これを「当用漢字別表」として,前の「当用漢字音訓表」とあわせ本日の総会に提出する次第であります。
 日本がこれから産業を再建し,文化の水準を高めていくためには,日常生活のはしから,高いていどの学問や芸術にいたるまで,それを伝える道具となる国語国字が,やさしく使いやすく,完全に国民全体の所有となっていなければならぬことは申すまでもありませんが,同時に国語そのものも美しくりっぱなものでありたいと思います。
 そうしてまた,一日として休むことのない現実の国語のあゆみを考えるとき,漢字とかなを用いて書くいま行われているような,国語を書きあらわす形式が,いちおうの基準として肯定されることもまた論のないことと思います。それならば,漢字のもつ働きをじゅうぶんに出しつつそれを利用すべきではないでしょうか。
 さきの当用漢字の決定は,あふれる水のような広範な漢字の使用に対して,ひとまず字数のわくをつくりましたが,このたびの「音訓表」はそのわくの中に漢字の使い方のすじみちを立て,漢字の長所をどこまでも生かして行くように考慮したものであり,また「別表」は教育面における漢字の取扱について一つのめやすを示したものであると思います。新しい文化の建設といっても,それはこれから発足する新しい教育の責任であります。文部当局をはじめ,社会一般がこのえらばれた能率の高い漢字をじゅうぶんに活用するように指導し,整理された音訓と相まって漢字学習の負担をのぞき,その労力を教育内容の向上にふりむけていただきたいと思います。
 本日提案の両案とも,多年この会で力を入れてまいりました漢字制限の仕事の総仕上げという意味も含まれておりますので,どうぞじゅうぶんに御検討の上,御審議をいただきたく御願い申し上げます。

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