ご挨拶
キトラ古墳は、藤原京の南に広がる古代の皇族・貴族などの墓域に所在する、下段の直径が13. 8m、上段の直径が9.4mほどの小さな円墳で、7世紀末~8世紀初頭頃に造られたと考えられています。墳丘の中央には、18個の凝灰岩の切石を組み上げた石室があります。昭和58年の調査で石室内に描かれた極彩色壁画が発見され、高松塚古墳に次ぐ我が国2例目の壁画古墳であることが確認されました。古墳は平成12年に特別史跡に指定されました。キトラ古墳の石室内には、天の四方を司る神獣である四神(東壁に青龍、南壁に朱雀、西壁に白虎、北壁に玄武)、十二支、天文図、日月の壁画が対応する方位に合わせて描かれています。高松塚古墳では、盗掘により南壁の朱雀が失われていたため、我が国で四神の図像が全て揃うのはキトラ古墳壁画のみです。四神の下には、獣頭人身の十二支が描かれています。北壁中央の子から時計回りに、方位に合わせて各壁に3体ずつ配置されています。現在、図像の存在確認ができているものは、子、丑、寅、辰、巳、申、午、戌、亥の9体です。天井には天文図と、東に金箔で太陽が、西に銀箔で月が描かれています。この天文図は、赤道や黄道を示す円を備えており、本格的な中国式星図としては、現存する世界最古の例といえます。キトラ古墳の壁画は歴史的・学術的に極めて価値が高く、平成30年に重要文化財、令和元年に国宝に指定されました。キトラ古墳の石室内から出土した主な出土品は、平成30年に重要文化財に指定されました。
石室内の壁画は保存修理のため、平成22年までにすべて取り外され、仮設修理施設にて平成28年まで修理作業を実施しました。キトラ古墳壁画では、壁画保存のために石室内から壁画を取り外して修理を実施しましたが、「石室石材から絵が描かれた漆喰のみを損傷なく外す」という大変困難な修理事業で、その過程で数々の修理技術が新たに開発されました。それらの開発された修理技術は現在の文化財の修理現場でも用いられる技法となっています。発見時の様子や修理技術については、キトラ古墳壁画体験館 四神の館にてご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
今回の壁画公開では、南壁「朱雀」を公開いたします。古墳壁画で朱雀が現存するのはキトラ古墳のみであり、その躍動感がありつつも優美な姿は観る者を惹きつけます。ぜひ細部までじっくりとご覧いただき、古代のロマンを感じて頂けますと幸いです。
開催概要
開催期間 |
令和7年(2025年)5月17日(土)~6月15日(日) ※期間中の開催時間や詳細は別途ご案内いたします。 |
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開催場所 | キトラ古墳壁画保存管理施設 四神の館 |