ご挨拶

高松塚古墳は奈良県高市郡明日香村に所在する 7 世紀末から 8 世紀初めに築造された古墳で、下段直径 23m、上段直径 17.7mの二段築成の円墳です。石室内部(内法:奥行 2.6m、幅 1.0m、高さ1.1m)に星宿図・日月像・四神図・人物群像(女子群像、男子群像)が描かれています。昭和47年3月21 日に我が国初めての極彩色の古墳壁画が発見され、その発見は日本中に考古学ブーム、飛鳥ブームを巻き起こしました。昭和48年4月23日に古墳全体は極彩色古墳壁画を有する終末期古墳としての重要性から特別史跡に、壁画はその歴史的・美術史的・考古学的価値から国宝に、出土品は重要文化財に指定されました。国宝高松塚古墳壁画は、国宝キトラ古墳壁画(昭和58年に発見)とともに日本に2 例しかない極彩色古墳壁画です。壁画は発見以来、現地保存の方針に沿って保存管理が行われましたが、カビの発生等により「墳丘内の土中環境において壁画の劣化を食い止めることは極 めて困難」と判断され、平成17 年に壁画を石室石材ごと墳丘から取り出して、安全な環境が確保された施設で修理をする方針が決定しました。その方針決定により、取り出された壁画・石室石材は国営飛鳥歴史公園 高松塚周辺地区内に設置した国宝高松塚古墳壁画 仮設修理施設に搬送して修理が開始されました。史跡の保存はそれらを構成する重要な要素が一体的に保存されることが原則であり、古墳の壁画についても現地で保存されるのが基本ですが、高松塚古墳壁画は墳丘に壁画・石室を再構成して戻した場合、史跡としての一体性は得られるものの、石材の強度や漆喰の状態からみて大地震の揺れなどに耐えられないおそれがあるとともに、現在の技術では再びカビ等の生物被害の発生を阻止することは非常困難と考えられました。そのため、平成26年に開催された「古墳壁画の保存活用に関する検討会(第15回)」において、「壁画・石室は、墳丘に戻すことが望ましいが、現在の科学的・技術的水準の下では壁画・石室に安全な環境を作って墳丘に戻すことは困難であり、壁画を将来に伝えるためにも修理終了後、当分の間は墳丘に戻さず、引き続き保存と公開を行う」との方針が示され、令和元年度に保存修理事業が完了しました。

高松塚古墳壁画は貴重な「国の宝」であると同時に、我が国古代の政治と大陸との交流を背景に文化の中心地として栄えた飛鳥の地において、地域の人々により長く守り続けてきた古墳であり、「地元の宝」でもあります。

今回、飛鳥美人で有名な西壁女子群像、東壁女子群像、青龍、東壁男子群像、玄武をご覧いただきます。文化庁は、平成 20年から修理作業室を公開してまいりました。この公開は見学用通路からガラス窓越しに修理作業室を御覧いただくもので、博物館等での展示と異なり、多少見えにくい状態ですが、拡大鏡の貸し出しがございますので、この機会を逃すことなく国宝高松塚古墳壁画に出逢い、当時に思いを馳せて頂けますと幸いです。

高松塚 展開図

青龍

東壁女子群像

開催概要

開催期間 令和7年(2025年)5月17日(土)~5月23日(金)
※期間中の開催時間や詳細は別途ご案内いたします。
開催場所 国宝高松塚古墳壁画 仮設修理施設 (奈良県高市郡明日香村 国営飛鳥歴史公園内)