文化庁主催 コンテンツ流通促進シンポジウム「著作物の流通・契約システムに関する研究会」の成果報告
コンテンツビジネスの未来は輝いているか?

2004年6月28日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟大ホール)
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研究報告
Aグループ研究報告 座長:佐々木 隆一
Bグループ研究報告 座長:森田 貴英
Cグループ研究報告 座長:久保田 裕
Dグループ研究報告 座長:斎藤 ようこ

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Aグループ研究報告 座長:佐々木 隆一
佐々木 Aグループの方の座長をさせていただきました、
ミュージック・シーオー・ジェーピーの佐々木でございます。

まず、「次々世代」ということで非常にコンテンツビジネスの将来を考えた場合に、私どもの業界は携帯における着信メロディから始まりまして、いわゆるモバイルコンテンツビジネスを積極的に推進している企業が多いということもございまして、まず現状のコンテンツビジネスから将来に向けてまずモバイルというキーワードで考えてみようというふうに条件設定をまず前提といたしました。

そういった意味で考えますと、現状でも2,300億円近いモバイルコンテンツのビジネス規模に成長してきているわけでございますが。皆さんご承知のとおり、第3世代の携帯電話、それから第3.5世代、第4世代という形で10年先ぐらいまで携帯電話をベースにした技術革新のロードマップというのはもうできているわけでございますので、「次々世代」とはいうものの、非常にリアリティーのある議論が可能なわけです。

現状、第2世代から第3世代になっただけでコンテンツの中身が非常に変わってまいりました。ご承知のとおり、着メロも当初midiデータで、今でもそうですが、非常に軽いmidiという音楽データを使ってスタートして、約1,000億円市場になってるわけでございますけれども。第3世代携帯ではそれがいわゆる着歌ということで、midiの10倍以上のデータ量が配信できるということでリアルなレコード音源をコンテンツとして使えるようになりましたと。

これが今後、ことしの秋以降、もっと大容量のコンテンツが配信できるようになる。例えば音楽でいうと1曲丸々普通のポピュラー楽曲であれば1曲丸々配信できるというふうに急速に発展しているわけでございます。

そういうふうに技術革新を考えますと、現在のコンテンツビジネスをその技術革新を利用するということで、よりリッチコンテンツを投入することができますので、大体2,300億円の市場がこのまま技術の発展にうまくのっていけば5,000億ぐらいのところまではいくんではないかというふうに思うのですが。予想しているわけでございますけれども。

ご承知のとおり、現状のコンテンツビジネスというのはほとんどが二次利用コンテンツを主体に考えてるわけですね。二次利用コンテンツのいろいろなビジネス上の限界ということを考えますと、それ以上大きな市場にはならないわけです。


撮影:小池 良幸
ID:HJPI320100000590
我々が「次々世代」ということで考えますと、この次世代携帯電話の、先ほどから言いました通信速度であるとか、機能が飛躍的に発達しておりまして、現在携帯電話の市場でネット端末であるブラウザフォンというのが約7,000万台普及しているわけですね。これが小学生から持ってると。

こういう従来パーソナルコンピュータやPDAじゃなければできなかったようなことが携帯電話でほとんど可能になってきてるわけです。こういった7,000万台のブラウザフォンが現時点で次世代型の三次端末として1,700万台ぐらいになっております。これは世界で最大です。

そういった意味で、携帯電話を利用したいわゆる高機能なデジタル端末を個人ベースで利用している国というのは日本が最先端なんですね。こういった日本の環境というものは今後の日本のコンテンツビジネスにおきまして非常に大きな特徴になるだろうというふうに思っております。

そういう意味で、この議論をする前提といたしまして、こういった新しい携帯電話の機能を世界最先端の携帯電話の機能を、日本はものすごい勢いで利用していく、もしくは普及するということで、世界でまだどこの国でも実現できていないコンテンツ環境があると、コンテンツビジネスの環境があるという前提でまず話を進めました。

そういうことを考えますと、まずこの二次利用から脱却する方法ということをまず考えなきゃいけないということがポイントになりまして、まず、この7,000万台がいずれ8,000万台、9,000万台になるわけですが、こういった巨大なユーザーの中から光る才能をどうやって見つけるかというところからまず始めたいということが議論のスタートになりました。

従来、何らかのアーティストを探すとか、タレントを探すという場合に、テレビだとか雑誌とかでまずキャンペーンをするわけでございますけれども、モバイルの場合はもうユーザーが直接もう持ってるわけですから、直接ダイレクトにこの7,000万、8,000万台の端末に対してダイレクトにその才能のある人を見つけるための仕組みを考えたらどうかということを議論させていただきました。

その上で、8,000万台の端末を持ったユーザーの中から原石を見つけて、育てていくと。このコンテンツビジネスを考えたときに、才能を生み、そして育てるプロセスというのがあるわけですね。例えば小説であれば文学賞みたいなものがありまして、出版業界全体でそういった才能を探して育てるという形があるわけですし。映画ビジネスも映画祭みたいなのがあるわけですけれども。モバイルコンテンツが巨大なメディアとして発達する可能性が出てきたことによって、モバイル業界自身が才能を発掘して育てて評価する仕組みを持たなきゃいけないということがまず重要だろうと。

今まであらゆるメディアの中で7,000万、8,000万の個人ユーザーがこういった端末を持つ時代というのはなかったわけですね。そういった意味で、我々の業界には我々のユーザーの中から才能を見つけて育てるという仕組みがまだないわけです。

モバイルコンテンツの世界では非常にたくさんのサイトがあるわけですけれども、非常に特徴的なのは、上位20社ぐらいのサイトで大体例えば7,000万のユーザーのうち5,000万ぐらいをカバーしてしまうみたいなところがありまして、主要な企業がこのプロジェクトに参加するだけで全体の6割から7割のユーザーに我々のメッセージが伝わるということになります。
そういった意味で、評価し、それを育てていく、その育てた作品をマーケティングをしてネット上で広げていく、またはヒットさせていくという、そういうプロセスを我々自身が構築していくべきではないかというふうに考えたわけです。

その上で、契約の問題とか分配の問題とか権利の問題というのはいっぱい出てくるわけで、また他メディアへの展開ということも当然考えるわけですね。例えばモバイルで発掘して育てたアーティストの作品をDVDで発売するとか、写真集を発売するとか、そういう流れにはなっていくわけです。

そういったことで、まず最初にモバイルユーザーの中から才能を発掘して育てて、その巨大なモバイル市場の中で育てていって、ほかのメディアへ発信していくという、そういった仕組みをやはり真剣にこの「次々世代」までには実現しなきゃいけないというふうなことを議論をさせていただきまして、その経過がこのAグループの方の検討内容として書かれているわけでございます。

また細かくはその都度ご説明させていただきますが。全体の流れとしてはそういうことでございます。

その上で、コンテンツビジネスの質を高めるためには、そのアーティストだけじゃなくて、ビジネスをやる人材の育成、プロデューサーとかディレクターとかマーケッターですね、そういったビジネスマンの人材育成も必要だろうと。それから、投資環境を含めまして、モバイルのコンテンツ事業への投資であるとか融資であるとか、そういったことも議論させていただきました。

全体といたしまして、我々自身が今後、今までに過去に経験をしたことがないような非常に巨大なモバイルマーケットが出現するということを前提に、新たな巨大なコンテンツビジネスがそこから生まれてくる仕組みを研究、検討したというところがAグループの大体の内容でございます。

どうもありがとうございました。
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