文化庁主催 コンテンツ流通促進シンポジウム「著作物の流通・契約システムに関する研究会」の成果報告
コンテンツビジネスの未来は輝いているか?

2004年6月28日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟大ホール)
トップ 基調講演 特別公演 研究報告 パネルディスカッション
研究報告
Aグループ研究報告 座長:佐々木 隆一
Bグループ研究報告 座長:森田 貴英
Cグループ研究報告 座長:久保田 裕
Dグループ研究報告 座長:斎藤 ようこ

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Cグループ研究報告 座長:久保田 裕
久保田 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会の久保田でございます。Cグループを担当いたしました。

Cグループでは、「次々世代」ということなんですけれども、もともと当協会はデジタルコンテンツであるゲームソフトやビジネスソフトの権利保護を中心として活動している団体でありまして、そういう意味では「次々世代」のことは、デジタル化・ネットワーク化を設立以来考えてきました。そこで、現在の既存の流通システムの課題を解決することで「次々世代」の方を逆に考えていこうというようなテーマの取り方をしました。

そういった観点から、Cグループのメンバーは、我々権利者の側から人選をするよりは、映画やゲームやその他CDを扱うビジネスをされている方のご意見を聞くことによって、権利者の方がさらに考えていくことがあるんではなかろうかというような視点で検討しました。

その中で、主な論点としましては、1点目は、「異なるユーザーニーズに対応した柔軟な流通形態のあり方」、これは都市型と、また都市近郊、そして地方都市では、この情報を扱う、もしくは欲する、そういったニーズも変わるのではないかと考えます。

2点目として「マーケティング戦略の生かし方」ということなんですけれど、デジタルコンテンツ業界は歴史が浅く、マーケティング上の情報蓄積が余りないんですね。映画業界では、「リング」や「らせん」などのプロデューサーとして成功されている仙頭武則氏のお話を聞きますと、かなりの情報量のビジネスを支える資料をデータベース化していて、それを読み込むことによってその先も読むというようなこともおっしゃられました。そういったことがコンテンツ業界から見たときに参考になるのではないかということで、映画業界での成功例を検討しました。

3点目として「プロデューサーに求められる要件」ということなんですけれども、ゲームを中心にしたデジタルコンテンツ業界は、業界としての歴史も浅く、プロデュース機能を担う人材が充実していない中で、プロデューサーに求められる要件ということを議論の対象にしました。先ほど濱野さんが基調講演の中で指摘されたように、日本にはすばらしいコンテンツがたくさんあります。それをどういう形でパッケージ化し、コンテンツビジネスとして、さらに文化を創出するという視点を持ちつつプロデュースしていくことにつきましても検討を加えました。

そして4点目として「契約システムに求められる要素」。出来上がったコンテンツの流通については、たとえばパッケージ化することもできますし、ネットワークでサーバーから端末へ、端末から端末へと流通していく形態もありますが、どういう契約システムが流通を促進するのか、またどうやって課金と連動させていくか、また、本日当協会とレコード協会がファイル交換ソフト利用に関する調査発表を行いましたが、課金と連動したセキュアなP2Pというものについても、検討を行いました。

そして最後に「ゲーム業界の成長鈍化の原因と今後の対応策について」。先ほど濱野さんのお話でも、残念ながら数年前に比べて日本のゲーム産業のアメリカでのシェアが5割を切ったというような非常に厳しい数字が出ております。ゲーム産業というのは日本の基幹産業の一部として、アニメと並んで日本の輸出産業の大きな部分を担っているわけですが、先ほど森口審議官のお話にありましたように、実際トータルで数字が下がってきている原因についても、考えました。


撮影:小池 良幸
ID:HJPI320100000590
今一番頭の痛い問題は、デジタルコンテンツが商品として劣化しないということで、産業として見たときに新品と中古が同時に販売されているというのも大きな問題であろうと。中古流通については「頒布権」が消尽するということで法律的な決着がついているんですが、今後たくさんのデジタルコンテンツが流通するようになったときに、果たしてパッケージで流通するものすべてがこういう中古流通ビジネスになっていき産業としてどんどん先細りになってしまうんではなかろうかということも議論しました。

もちろん、流通の方々からは、こういった中古コンテンツを買い取ることによって新品コンテンツが売れるという循環があるという指摘もあり一概には言えないところもあるのですが、これは今後も考えておかねばならない問題として、どのコンテンツも検討せざるを得ないだろうということになりました。

このように、中身は全く同じであるにもかかわらず、中古と新品が同じ棚にならんで、価格が違い、どちらを買いますかと。こういった形で無限に売買が繰りかえされると、ある意味では図書館のように著作物の複製物が回転をしていくことが考えられます。ブックオフ問題も同様の問題を抱えていると考えております。これは著作権法の領域で検討することなのか、不正競争防止法的な、もともとこれがフェアな競争なのかというようなことも検討の余地がありまして、著作権法からだけのアプローチを考えているわけではないんですけれども、ここはぜひ皆さんのお知恵を借りながら検討せざるを得ないだろうということになりました。

ゲームソフト産業の将来像と対応策としては、この座長をやらせていだたいて勉強になったのは、やはり流通の方々とクリエーターの側が話し合う土壌というものが、現在うまく出来上がっていないのではないかということがございまして、今回の検討会は流通の人が考えていらっしゃるコンテンツの流通がどうあるべきだと、そしてクリエーター側から考えたときに、またそれはどうあるべきだという検討を突き合わせる機会になったという意味では非常に効果的な会になったかなと思っております。

全部が同じ意見ではないのですが、幾つかの対応策が出ております。

まず、新たな流通方法の検討としまして、ゲームソフトの場合に限りますが、ソフトメーカーと販売流通は在庫リスクを分担すべきだと。また、資金調達の手段の多様化とということで、証券化の問題なんかが残されていますねと。そして、マルチユースの必要性として、企画段階から映像、キャラクター、脚本、音声等を活用したビジネス戦略を構築できるプロデューサーが求められていると。また、これを一気通観に考えることによって、著作物が最大限に利用される環境、これは先ほども森口審査官からポケモンの経済的な効果が2兆4,000億円というふうに言われましたが、そういった最大値をつかむためにどういうふうにそのコンテンツを展開していったらいいかというようなビジネス戦略を構築できるプロデューサーが求められていくのではなかろうかと。

そして、制作の効率化というところでは、これはアーティストには耳が痛いんですけれども、芸術家やアーティストというのはやはり自分の世界で最高のものをつくろうと努力するがためにビジネスの世界から離れていってしまって、ゲームソフトの納期がおくれて半年延びました、1年延びましたというようなことが起こっている。そういったことが続く限り、なかなかビジネスとしては成功しないのではないかというような厳しい指摘も出てまいりました。そういう意味では制作の効率化が非常に必要になってくるということでございます。

そしてまた、そういった制作現場を支えるユーザーのニーズをすくい上げるマーケティングというのも非常に重要なのではなかろうかと思います。これからは、先ほど言いましたように、能のゲームソフトとか歌舞伎のゲームソフトなんていうのもたくさん出てくるような環境になってくると思うんですね。こういうものが文化や国際協調主義や、さらには国内のエデュテインメントというようなところを刺激して、大きなビジネスに成長させるためにも、マーケティングは非常に重要性があるだろう。まさに文化に直結したマーケティングということになろうかと思います。

「次々世代」の流通のあり方ということですが、流通の自由度を高めることは重要ですが、これは放っておいても高まると思っています。「次々世代」に出てくる端末等を見ればその自由度というのは非常に高いものになってくると思いますが、ユーザーがデータそのものの対価、複製物の対価を支払えるようにし、ユーザーのニーズに合わせて価格を変動させることが必要なんではなかろうかと。これは電子商取引等でかなり臨機応変に対応ができるんではないかと考えております。

また、流通過程から対価を得られるような方法を検討すべきと。これは「超流通」と呼ばれるシステムがありまして、流通と課金が連動すれば技術的には可能であろうと。

先ほども言いましたけれども、コンテンツの企画制作から流通までの段階を結びつける一気通観の仕組みが必要。これはクリエイトする側と流通させる側が同じ方向をもって議論することによって、合理的な対応策が出てくるのではないかということ、コミュニケーションが必要だということになります。

そして、これも繰り返しになりますけれども、流通自体もその流通をデザインし、収益を最大化するためのプロデューサーが求められると考えます。

どうもありがとうございました。
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