「誰でもできる著作権契約マニュアル」 第1章 2. (2)

(2)契約はどのように締結すればよいのですか?

<1> 契約書の作成は契約成立の要件ではありません。
  • 契約は、原則として当事者の合意のみで成立しますので、契約書の作成は契約成立の要件ではありません。
  • しかし、契約書を作成せずに、口頭で契約を結んだ場合には、契約が成立したのかどうか、またどのような内容の契約が成立したのかが後で不明確になりやすいといえます。したがって、重要な契約を結ぶ場合には、契約書を作成して契約の成立およびその内容を明確にし、後に紛争が生じないようにするのが望ましいといえます。
  • 一定の場合には、法令によって書面の作成が義務付けられていたり、書面の作成が契約の要件とされる場合があります。
    • コンピュータ・プログラム、映像、図形等のデザイン等の著作物の作成を外部業者に下請けさせた場合には、直ちに下請業者の給付の内容、下請代金の額、支払日等を記載した書面を作成し、下請業者に交付しなければならないことが下請代金支払遅延等防止法で定められています。
  • 契約書は、必ず両当事者が同一の書面に署名押印する形式で作成しなければならないわけではありません。承諾書のように当事者の一方のみが署名押印する形式や、募集要項等のように、当事者の一方のみが作成する形式で契約内容を定める場合もあります。
<2> 契約書のタイトルや書式に決まりはありません。
  • 契約書にどのようなタイトルを付けるかは当事者の自由です。「契約書」というタイトルでも、「覚書」、「合意書」、「確認書」等といったタイトルでも、タイトルの名称だけで契約の効力が変わることはありません。
  • 契約書は、タイトル、前文、契約条項(条文)、契約締結日、当事者の署名・押印の順番で作成されることが比較的多いといえますが、これについても決まりはありません。契約条項(条文)は、関係のある事項をまとめて記載したり、必要に応じて見出しをつけたり、複雑な内容は別紙にまとめて、末尾に添付するなどして、適宜わかりやすいように工夫するとよいでしょう。
  • 契約条項(条文)には、お互いに合意した契約の内容を、できるだけ明確に、誤解の生じないように具体的に規定することが求められます。内容を明確にするためには、5W1H(<1>いつ、<2>どこで、<3>誰が、<4>誰に、<5>何を、<6>どうやって)を明示するように心掛けるとよいでしょう(なお、この点は契約類型により異なりますので、後述の契約類型毎の説明を参照してください。)。
<3> 契約の当事者になれるのは
  • 人は、原則として誰でも契約の当事者になれます。ただし、未成年者が親権者の同意を得ずに契約を締結したような場合には、後で契約を取り消されてしまうことがあります。したがって、このような相手と契約を締結する場合には、あらかじめ相手方が親権者の同意を得ていることを確認しておく必要があります。また、契約は代理人によって締結することもできますが、その場合、その代理人が、本人から契約を結ぶことについて権限を与えられているかどうかを委任状等で確認する必要があります。
  • 会社等の団体を当事者として契約を結ぶ場合には、その団体を代表して契約を締結する権限を有している人が契約締結の意思を示さなければなりません。株式会社の場合、会社を代表して契約を締結できるのは代表取締役です。そのほか、会社の支店長等(支配人)はその支店等の営業に関して、営業部の部長等はその担当する営業に関して、契約を締結する権限を有するものとされています。
<4> 押印について
  • 契約書への押印は契約当事者が内容を承諾し、契約を締結したことの証拠にすぎず、契約成立の要件ではありません。
  • しかし、契約書に押印がないと後々契約が成立したか否かが不明確になり、争いの種になりかねないので、契約書を作成するときには、当事者双方がしっかり署名し、押印をするべきです。
  • 押印は必ずしも実印でする必要はありません。しかし、実印は、後で契約が有効に成立したことを証明する強力な証拠になりますので、特に重要な契約を結ぶときは、実印を押印し、併せてその印鑑登録証明書をもらっておくことが望ましいといえます。
  • 一般に、契約書が複数枚にわたる場合には、ページがつながっていることがわかるように、各ページにまたがって押印(契印)をします。また、契約書の文言を訂正する場合には、訂正印を押印します。