「誰でもできる著作権契約マニュアル」 第2章 6. (1)

(1)対象

 ここでは、作品展やコンクールを主催して作品を募集し、優秀作品を選考して表彰したり内容を発表したりするなど、主催者が創作物の発表の場を提供する場合の募集要項の書式に関して説明します。

コラム 「募集要項」と「著作権契約」
 作品展やコンクールを主催して作品を募集する場合、募集の趣旨からみて作品を発表する方法があらかじめ想定できる場合もありますが、そのような発表の方法だけでなく、その後の機会にたとえば広報誌への掲載、ホームページでの紹介など様々な方法によることも考えられます。
 一般的には、作品展やコンクールに応募する場合、主催者がその作品を多くの人に見せたり配布したりすることは応募者も承知していることが多いと考えられます。しかし、最近は、高品質なコピーやデジタル形式での発信などが容易にできる状況になっており、よい作品であればあるほど無断コピーのおそれがあり、主催者やそれ以外の者がその作品をどのように利用しようとしているのかについて、応募者も把握しておく必要があります。このようなことから、主催者としては、入選作品等の著作権に係る利用行為について応募者から了解を得る契約をしておくことが適切です。
 通常、著作物の利用方法やその条件については、著作者との間で協議をした上で契約書を作成することが多いわけですが、作品展やコンクールで作品を募集する場合には、入選作品等の応募者と個々に契約を交わすよりも、あらかじめ募集要項に利用方法や条件等を明示しておく方が合理的であり、これによって事後の紛争が避けられる場合もあります。
 つまり、主催者が予定している利用方法をあらかじめ募集要項等に示しておき、それを了解した上で応募してもらうようにしておくと、後日の利用の都度契約書を取り交わす必要がなくなり、「著作権を譲り受けなければ利用しにくい」というような問題も生じにくくなります。このように、募集要項は厳密には契約書とはいえませんが、契約書と同様の効果があるものと考えてよいと思われます。